雄牛の画像
(Zenzen / PIXTA(ピクスタ))

少し前までは、「日経平均株価年内3万2000円」といったレポートも出るなど、株式投資家が浮足立っていた今年の日本株相場。誰もが2021年も年末高を期待していただけに、クリスマスを目前にしたマーケットの急落に投資家が慌てている。この押し目は急落の始まりなのか、それとも“天与の買い場”なのか? マーケットの現状を考えてみた。

追証を入れて耐えてきた投資家もそろそろ限界か

米国のFOMC(連邦公開市場委員会)通過をきっかけに2021年12月16日には、2万9,000円台(前日比606円高の2万9,066円)を奪回した日経平均株価。チャート的にも75日移動平均線が目前となり、マーケット関係者からは年末高や“掉尾(とうび)の一振”という声が上がり始めた。しかし、翌日の17日には、前日比520円安の2万8,545円に下落、さらに週明けの20日には607円安となり、心理的節目であった2万8,000円台(2万7937円)をついに割り込んでしまった。

ここ最近、日本の個人投資家たちは、信用取引などを利用してレバレッジ(てこの原理)をかけた取引を活発に行ってきた。度重なる相場の急落にも、追証を振り込むことで含み損を抱えている持ち株の売却を回避してきたのだ。新型コロナによる給付金や助成金が株式市場に流れ込み、それを元手に投資を行っている“にわかトレーダー”たちに、その傾向は顕著だったといえよう。過去の常識では、「潔い撤退(損切り)」が株式投資で勝つための最大のポイントとされてきた。それが今年の11月までの相場に限っては、追証を入れて耐える投資が成功してきたのである。

証券会社の営業マンに話を聞くと、「追証を入れて耐える投資手法にもそろそろ限界がきているのかもしれません。というのも、12月20日時点で信用取引の評価損益率は限りなくマイナス30%に近づいており、個人投資家主体のマザーズ銘柄においてはすでにマイナス30%を超えているのです」とのこと。

信用取引の評価損益率が異常値に達している

信用取引の評価損益率は、信用取引を行っている投資家がどの程度の含み損を抱えているかを示す指標で、通常の相場では「0%~マイナス20%程度」で推移している。これがマイナス20%を超えると、追証が発生する水準になり、相場は底入れが近いとされている。

「さすがにマイナス20%を超えたあたりから、やむを得ず損切りを行う投資家が出てきましたが、それでもまだ一部に過ぎません。多くの投資家は、相変わらず追証を入れて耐えているのです。しかし、信用の評価損益率がマイナス30%まで行ってしまうと、そろそろ限界が近づいていると考えることができます。ですので、相場がこれ以上下げるようだと、これまで耐えてきた投資家たちの損失覚悟の売りがナイアガラの滝のように降ってくる可能性があります。その結果、売りが売りを呼び、さらに相場は下落し、その売り物が枯れてきてはじめて相場は底入れを果すのではないでしょうか」(前出の証券マン)

暴落相場で投資家の投げ売りが一巡することを「セリング・クライマックス」と呼び、その後は需給が好転して上昇に向かうことが多い。ただ、信用取引の評価損益率を見る限り、まだセリング・クライマックスにはほど遠いのかもしれない。