2021年11月15日、ゆうちょ銀行 <7182> の株価が前日比で一時7.9%高の934円と急伸した。後段で述べる通り、2022年3月期(通期)の純利益見通しが前期比25.0%増の3,500億円に上方修正されたことが買い手掛かりとなった。今回の上方修正は、アナリスト予想のQUICKコンセンサスの2,923億円(11月6日時点)を19.7%も上回ったことから、ポジティブサプライズとなったようだ。

ちなみに、ゆうちょ銀行は「10万円以下で買える高配当株」としても知られている。同社は今回の上方修正とともに年間配当予想を40円から47円(前期は50円)へ増額修正すると発表。配当利回り(会社予想)は11月17日現在で5.11%となっている。

ゆうちょ銀行は好業績、高配当と魅力的な側面もあるが、一方で親会社の日本郵政の保有株売り出しや東京証券取引所(東証)の市場改革への対応など注意すべき点もある。

今回はゆうちょ銀行の話題をお届けしよう。

ゆうちょ銀行、中間決算で純利益89.4%増

ゆうちょ銀行,株価
(画像=flyingv / pixta, ZUU online)

11月12日、ゆうちょ銀行は2022年3月期中間決算(4〜9月)を発表した。経常収益は前年同期に比べて38.9%増の1兆1,540億円、純利益は同89.4%増の2,353億円と大幅な増収増益となった。ゆうちょ銀行が投資している外債投資信託、プライベートエクイティファンドがともに好調で運用収益である「資金利益」が前年同期に比べ58.3%増の6,665億円となったことが寄与した。

冒頭で述べた通り、ゆうちょ銀行は2022年3月期(通期)の見通しについて、純利益で前期比25.0%増の3500億円になるとしている。従来予想の2600億円から34.6%(900億円)の上方修正である。あわせて、通期の配当予想を40円から47円に増額修正したほか、新たに株主優待の導入を発表した。株主優待は2022年3月31日時点で500株(5単元)以上を保有する株主を対象に、オリジナルカタログギフト(3,000円相当)を贈呈する。

週明け11月15日のゆうちょ銀行株は前日比で一時7.9%高の934円と急伸、人気のバロメーターである出来高は1,039万5,700株で12日の403万7,400株から2.6倍に急増した。

ゆうちょ銀行は口座数、預貯金残高、店舗数で日本一

ゆうちょ銀行は日本郵政 <6178> の子会社である。日本郵政は、国の郵便事業を担っていた日本郵政公社が2007年に民営化、子会社として現在の日本郵便(未上場)の前身となる郵便事業ならびに郵便局を設立、さらに金融子会社としてゆうちょ銀行とかんぽ生命保険 <7181> に分割した。そして、2015年に日本郵政とともにゆうちょ銀行、かんぽ生命保険が東証1部に上場している。ちなみに、日本郵政の筆頭株主は財務大臣で56.9%を保有している。

10月12日にゆうちょ銀行が公表した『個人投資家向け会社説明会』によると、ゆうちょ銀行の口座数は1億2,000万口座で、預貯金残高は189兆円に達する。これは日本の家計部門の預貯金の約2割に相当する規模だ。2021年3月末時点の総店舗数は2万3,815店で、口座数・預貯金残高・店舗数で日本一の銀行である。

ゆうちょ銀行は金融市場の「クジラ」でもある

ところで、読者のみなさんは「5頭のクジラ」をご存知だろうか? 巨額の資金を運用する機関投資家のことで、金融市場では、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険 <7181> 、日本銀行 <8301> 、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、共済を「5頭のクジラ」と呼んでいる。ゆうちょ銀行は日本一の銀行であると同時に機関投資家でもある。

ゆうちょ銀行の2020年度末の運用資産は220兆5,000億円で、全体の32.2%を外国証券等(71兆1,000億円)、22.8%を国債(50兆4,000億円)、7.4%を地方債・社債等(16兆5,000億円)が占めている。公的年金を運用しているGPIFの運用資産は186兆1,624億円(2020年度末時点)なので、ゆうちょ銀行の運用規模の大きさが理解できるだろう。文字通り、金融市場の「クジラ」のような存在だ。

ちなみに、2007年の民営化時のゆうちょ銀行の運用は88.0%が国債であり、外国証券等はわずか0.1%という保守的なものだった。その後は歴史的な低金利環境を受けて国際分散投資を推進、2020年度末は国債が22.8%まで低下する一方で、外国証券等は32.2%に拡大している。プライベートエクイティファンドや不動産ファンドといったオルタナティブ投資も手がけており、前述の通り2022年3月期中間決算ではプライベートエクイティファンドの運用収益が業績に寄与した。

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