2021年11月8日、スマホゲームなどを手掛けるグリー <3632> の株価が前日比で一時8.6%高の1,074円まで買われ、年初来高値を更新した。グリー株は11月2日に4年5カ月ぶりの1,000円大台に乗せていた。
ちなみに、グリー株は今年6月2日に年初来安値となる547円を付けている。つまり、この5カ月で2倍近くに上昇した計算だ。背景には、業績の好調や自社株買い、そして「メタバース関連」株としての期待があるようだ。
メタバースはネットワーク上に構築された仮想空間で、ビジネスやエンターテイメントなど多様な分野での活用が想定されている。グリーは今年8月に開催した決算説明会において、メタバース事業に積極投資し、グローバルで事業規模の拡大を目指す意向を示した。10月20日付の日経電子版では『グリー、一時6%高 仮想世界「メタバース」関連で思惑』の記事が配信されたほか、10月30日には東洋経済オンラインが『「メタバース」に巨額投資、グリーが描く青写真』とのタイトルで報じるなどメディアでも相次いで取り上げられた。
今回はグリーを中心とした「メタバース関連」の話題をお届けしたい。
グリー、2022年6月期は「メタバース事業」に注力
8月6日、グリーは2021年6月期決算を発表した。売上高は前年比9.4%減の567億6,600万円、本業の利益を示す営業利益は同70.1%増の53億7,800万円となった。営業利益が前年比でプラスになったのは2018年6月期以来のことだ。この日、グリーは子会社のREALITYを通じて「メタバース事業」に注力することも明らかにした。
REALITYは、自分好みのアバターを作成してバーチャルライブ配信や、チャット機能を使ってユーザー同士で交流できるアプリ「REALITY」や、法人向けに3D CGやVRテクノロジーを活用したバーチャルライブおよびバーチャルイベント等の制作プラットフォーム「REALITY XR cloud」を提供している。
グリーは今期(2022年6月期)の方針について、それまで「REALITY」などを統括していた「ライブエンターテイメント事業」を「メタバース事業」に改称し、先行投資を実施する意向を示している。また、プロモーション等についても年間20〜30億円ほど投入する可能性を示唆している。将来的にはゲーム事業や広告・メディア事業に次ぐ第3の柱に育てる計画だ。
なお、グリーは9月30日に株主還元の一環として、発行済み株式数の16.8%に相当する3,500万株、取得額で最大350億円を上限とする大規模な自社株買いを発表している。取得期間は2021年10月1日から2022年9月22日で、グリーの自社株買いとしては過去最大である。このニュースを受けて、翌10月1日のグリー株はストップ高(16.2%高)を記録する場面も観測されている。