植木に水をあげる人
(taikichi / PIXTA(ピクスタ))

新興国は高い経済成長が見込まれることから、新興国株式をポートフォリオに加えるべきか、悩む方も多いはず。ただ、新興国に投資する上で、事前に知っておくべき注意点もあることはご存じだろうか? 新刊『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』の著者で元銀行員、資産運用YouTuberの小林亮平氏が「新興国株式投資の落とし穴」を解説する。

そもそも新興国株式とは?

全世界株式50カ国の表
MCSI:「MSCI ACWI Index」、「Market cap indexes」より引用)

まず、新興国とはそもそも何なのかが気になる方も多いと思うので、分かりやすい表を作ってみました。世界には約200の国がありますが、グループ分けすると先進国、新興国、フロンティア、それ以外の4つに分類できます。

米国の調査会社MSCIによると、経済発展が大きく進んだ国である先進国に定義されているのはアメリカや日本、イギリス、フランスなどの23カ国です。次いで新興国とは、先進国以外で高い経済成長が見られる国であり、中国や台湾、韓国、インドなど27カ国があります。新興国の次はフロンティアと呼ばれる国々もありますが、経済発展が初期段階にあり、新興国にまだ含まれない国となります。

つまり、新興国と聞くと発展途上国のイメージがあるかと思いますが、世界的に見ると2番目のグループでそれなりに地位は高く、株式市場もちゃんとある国なのです。これらのグループ分けは、1人当たりのGDPや市場環境の整備状況などを基準に、MSCI社が判断して分類しているため、定期的に別のグループに入れ替わる国もあることは知っておきましょう。

ちなみにMSCI社が算出している、新興国株式の指数であるMSCI Emerging Markets Indexには、人気商品だとeMAXIS Slim新興国株式インデックスファンドが連動しており、この投資信託1つで上記の新興国の株式に分散投資できます。また先進国株式23カ国と新興国株式27カ国を合わせると、人気の全世界株式50カ国となるので、こちらも覚えておくといいでしょう。

新興国株式の構成は?

円グラフ
MCSI:「MSCI Emerging Markets Index」より引用。2021年11月30日時点)

新興国株式における国別の投資割合を知るために、eMAXIS Slim新興国株式インデックスファンドが連動する、MSCI Emerging Markets Indexの構成を見てみましょう。

現状、中国がトップで34.02%、次いで台湾が15.64%、韓国が12.18%、インドが12.09%、ブラジルが4.05%、その他が22.01%となっています。

このように新興国株式においては、中国のウェイトが大きいため、それだけ中国の動向に左右されやすいことを知っておきましょう。もし中国の株価が下落した時には、当然ですが新興国株式も大きく値を下げることになります。

表
MSCI:「MSCI Emerging Markets Index」より引用。2021年11月30日時点)

MSCI Emerging Markets Indexの上位10銘柄も見ておくと、中国版LINEのWeChatを運用するテンセントが4.45%、中国のAmazonとも言われるアリババが3.25%と上位を占めているため、やはり新興国株式における中国の影響は大きいといえます。

ただ、この組入銘柄は随時入れ替わるので、今後、中国以外の国が伸びた時には、上位の銘柄は変わってくる可能性もあるでしょう。

新興国株式の過去のチャート

折れ線グラフ
ETFreplay.comより引用。対象期間は2003~2021年で、緑線がEEM、青線がVTI)

では、新興国株式の代表的なETFであるEEMと、米国株式のVTIにおける2003年から2021年のチャートを比較しますが、緑線である新興国株式のEEMはだいぶ値動きが激しいことが分かるでしょう。

新興国株式は2003年から2008年までの伸びが凄まじく、人口増加による経済発展を見込んだ人たちの投資が集中しました。

ただリーマンショックの際は大きく値下がりしたこともあり、また現在では米国株式が好調なため、青線である米国株式のVTIの方がパフォーマンスは高くなっています。

このデータからも、新興国株式は大きくプラスになる年もあれば、大きくマイナスになる年もあるため、リスク(値動きの幅)がかなり大きいと言えます。

なお、2003年から2021年のトータルリターンでは、VTIが+745.9%、EEMが+515.2%とだいぶ差が出ているので、米国株式が人気の理由が分かります。

知らないと怖い、新興国の2つの落とし穴

それでは、本記事の肝となる、新興国株式に投資をすべきかをお話しします。私の結論としては、サテライトとして多少ポートフォリオに入れるのはアリだと思いますが、新興国株式をメインの投資先するには、やや不安に感じます。

たとえばポートフォリオの中で、新興国を入れるなら、目安として10%程度にしておくのがいいでしょう。その理由として、新興国に投資するなら事前に知っておきたい、2つの落とし穴をお話しします。

折れ線グラフ
(Googleファイナンス「上海総合指数」より引用。対象期間は1995~2021年)

まず、1つ目の落とし穴は、「新興国は経済成長と共に、株価が伸びるとは限らない」点です。

新興国株式に投資すべきという意見の多くは、人口増加による経済成長の恩恵を狙っていると思いますが、たとえば中国の代表的な株価指数である上海総合指数を見てみましょう。

過去に人口が順調に増え、高い経済成長を誇ってきた中国の株価も、2010年頃からはあまり伸びていないことがわかります。

結局、株価というのは投資する人達の期待感に左右されるものであり、その国のカントリーリスクなども考えて判断されます。そのため、新興国は法整備が不十分なこともあり、人口が増えて経済が成長しても、株価が一緒に伸びるとは限らない傾向があるのです。

このことから、「新興国=人口増加と経済成長で株価が右肩上がりになる」とは安易に考えない方がいいでしょう。

曲線グラフ
(United Nations「2019 Revision of World Population Prospects」より筆者作成。対象期間は2020~2100 年で、オレンジ線が中国、青線がインド)

また、2つ目の落とし穴は、「中国の人口はまもなく減少傾向となる」点です。

現状、新興国株式の中身は中国が最も大きなウェートを占めていますが、国連のデータを基にしたオレンジ線の中国の人口推移予想を見てみましょう。

中国は「一人っ子政策」の後遺症もあり、2030年の約14億人がピークとなり、その後は減少傾向が予想されています。

先ほど見た新興国株式のEEMのチャートでは、新興国株式が盛り上がった2003年頃は、人口増加による経済成長への期待感が背景にありました。

しかし、中国の人口はまもなく減っていくことを考慮すると、投資対象としては悩ましいものがあるでしょう。

ちなみに中国の代わりに世界一の人口大国となるのはインドであり、約17億人でピークとなる2060年まで人口が増え続けるといわれています。

ただそうはいっても、現状、新興国株式の30%以上と大きな部分を占めているのは中国なので、先述したように新興国株式の株価は中国の動向に左右されてしまいます。

棒線グラフ
(United Nations「2019 Revision of World Population Prospects」より筆者作成。対象期間は2020~2100 年で、青線がアメリカ、赤線が日本)

人口に関していうと、注目したいのが上記のグラフにおける青線のアメリカで、移民の受け入れによって2100年までは人口が増えていくことが予想されています。

赤線の日本を含め、欧州などの先進国は人口減少が大きな問題となっていますが、アメリカは今後も人口増加が続く貴重な先進国なので、米国株が投資対象として人気なのも頷けます。

もちろん時期によっては、新興国株式が米国株式より伸びている期間もありますし、未来の相場は誰にも分からないので、新興国株式が他を圧倒するリターンとなる可能性もあるでしょう。

そのため、本記事でお伝えしたいのは、新興国に投資してはいけないということではありません。

新興国は将来性が見込めるからという理由で、深く考えずに投資をしている方も多いはずなので、この機会に新興国をよく知り、投資対象として株価の上昇が本当に期待できるのか。

その視点を忘れずに、新興国に投資すべきかを自分で判断していきましょう。

小林亮平

小林亮平
1989年生まれ。横浜国立大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。退職後、ブログやSNSで資産形成(つみたてNISAやiDeCo、楽天経済圏など)の入門知識を発信。現在はYouTube「BANK ACADEMY」を運営し、チャンネル登録者は37万人を超える。著書に『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』がある。