富裕層が金融商品でポートフォリオを組むときに、必ずといってよいほど組み込むのが債券だ。しかし、債券は株式と並ぶ2大金融商品であるにもかかわらず、株式に比べて、メディアで特集されたり、議論の的になったりすることは少ない。
そこで今回は、富裕層向けに資産配分コンサルティングを行なっているウェルスパートナー代表の世古口氏に登場してもらい、富裕層への営業現場ではどのような債券提案がされているのか、具体的に聞いていくことにしよう。
劣後債やハイイールド債が提案の中心
―― 2021年の債券市場はどのような1年だったとお感じでしょうか?
米国10年債利回りの推移を見ると、年初は1%前後で始まり、足元では1.5%前後です。多少の変動はありましたが、2020年に比べると穏やかな動きだったと言えるでしょう。債券に影響を与える要因には、長期金利の水準だけではなく、債券市場全体の信用リスク(クレジット)も挙げられますが、そちらもあまり動きはなかった印象です。
―― そんな2021年は、富裕層にはどんな債券提案をすることが多かったでしょうか?
昨年から引き続き、シニア債(高格付けの低リスク債券)ではあまり利回りが取れません。そのため、劣後債といったハイブリット証券やハイイールド債が提案の中心になりました。
―― 富裕層が債券運用する際は、個別銘柄で持つケースが多いのでしょうか? ETFで持つケースが多いのでしょうか?
圧倒的に個別銘柄で持つケースが多いですね。割合で言えば、全体の9割くらいだと思います。その理由はいくつかあります。まず挙げられるのは、満期まで保有すれば、基本的に元本が確保されるという点です。来年以降、利上げが進むと債券単価は下落しやすくなりますが、満期まで保有すれば、保有中の単価下落はあまり関係ありません。
インカムゲインがFIXされているので収入の計画が立てやすいこと、どの発行体の信用リスクを取っているか明確であること、信託報酬がかからないことなども挙げられます。ハイイールド系のETFですと、信託報酬が年0.5%くらいかかるものもありますので。
―― 劣後債は最低ロットが大きいと思います。個別銘柄だと分散がしづらくなる印象がありますが、どのような対応をしているのでしょうか?
最低ロットは債券によるのですが、おっしゃる通り、劣後債は20万米ドル(約2,200万円)以上のものが多いですね。ただし、5万米ドル(約560万円)から買えるものもあります。資産規模の大きい富裕層であれば、個別銘柄でも十分に分散が可能です。具体的には、1銘柄の金額を「資産全体の5%以内」にすることが多いですね。反対に、資産がまだ数千万円から1億円くらいの人であれば、ETFで分散してもよいと思います。
金融機関の劣後債で債券ポートフォリオを組むことが多い
―― 具体的に、どのような個別銘柄を提案することが多いのでしょうか?