これから2回にわたって「投資を信じて託すのが投資信託」という考え方とは少々異なる視点で論じてみようと思う。筆者は元々投資信託のファンドマネージャーであり、自分が運用する投資信託を自分自身で商品開発してきたという経験に基づき、そしてまた、自社の投資信託の総残高を増やすという経営課題に取り組んできた投信会社の社長時代に感じていたジレンマをも踏まえて、本音トークをしてみたいと思う。

前回、資産形成に適した「バランス型投資信託」は既存商品の中からはお薦めチョイスが出来なかったと断じた。ならば当然どうしたら良いのか提案しないと、単なる偏屈親父になってしまう。結論的には自分自身で既存の金融商品を使ってポートフォリオを組み立てるしかないのだが、実はいくつかの点を押さえておけば、そんなに難しくはない。重要なことのひとつは「何を目指して、何を得るのか」という本質をきちんと理解することだ。すると自ずと方策は見えてくる。

資産形成は「長い時間」こそが大切な味方になる

投資信託,選び方
(画像= Rhetorica / pixta, ZUU online)

資産形成と資産運用とは似た響きだが違うものだ。これから纏まったお金を作りましょうというのが資産形成であり、既にある程度纏まったものをどうにかしようとするのが資産運用だ。そこでここからは議論がブレないように、資産形成を「老後(およそ65歳以降)のための資産形成」と定義させて頂く。こう定義することで資産形成の時間軸が明確になるからだ。投資の時間軸を明確にしない議論は、往々にして言葉遊びの空中戦となり易い。

資産形成においては与えられた長い時間こそが大切な味方となる。だからこそいたずらに(2桁超の)高い期待リターンを求める必要もなくなる。そして、この目的に適した運用が「国際分散投資」ということになる。そこで始めに「国際分散投資」にとって、何が合理的な期待リターンの指標となるのか確認しておきたい。

答えは「地球規模(全体)の経済成長率」だ。なぜ「地球規模(全体)」とするのかと言えば、前回も論じた通り、30年先、40年先と言った資産形成の長い時間軸の中で、はっきり言えば「どこの国が結果的に一番経済成長するか」など誰にも予測が不可能だからだ。そこで地球全体で見れば、人口動態から見ても30年先も40年先も経済成長は続くとする仮説を利用する。恐らくこの仮説を否定する経済学者は特別な悲観論者を除き殆ど居ないだろう。勿論、もし「米国が一番」という仮説が確実ならば米国株に、「日本が一番」が確実ならば日本株に集中投資をすれば良い。そんなダーツの矢を投げるような仮説は不確実だからこそ、資産を分散して不確実性を出来るだけ小さくしようというのが分散投資の真実だ。