本記事は、鉄羅敦士氏の著書『副業としての不動産投資』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています

「空室」のリスクをコントロールする

リスク
(画像=PIXTA)

シミュレーションで試算したキャッシュフローのことを考えても長期的に空室は出ないようにしたいところだけど……?

さて、次は「空室のリスクについて触れていきます。これはその名の通り、空室が生まれてしまうリスクで、皆さんも真っ先に思いつくリスクの一つではないでしょうか。

2018年の統計局の情報によれば、全国平均の空室率は18.5%です(図3-10)。

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(画像=『副業としての不動産投資』より)
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(画像=『副業としての不動産投資』より)

全国平均は18.5%ですが、これは築50年の物件だったり、駅から徒歩1時間の物件だったり、そもそも賃貸募集を真面目にやっていないような現実的に選ばれにくくなっている底辺の物件までも含めた平均の数字です。

裏を返せば、現実的に賃貸需要のあるエリアの物件を購入し、一般的なレベルの賃貸管理を行なえば、悪くても18.5%以上の空室率にはならないと考えてよいでしょう。

また、2021年7月15日時点でのHOME’Sの全国賃貸用住宅の空室率一覧によると、一番低い沖縄県で11.7%、一番高い福井県で30.1%となっています。保有する物件の空室率を下げたい場合は、単純に言えば空室率の低い都道府県で購入しましょう。

なお、これは都道府県単位の指標のため、当然ながら、その都道府県の中でも空室率の高いエリア/低いエリアがあります。実際には、その都道府県の中で、さらにどこで買えばよいかを見ていく必要があるでしょう。

その上で、駅の大きさ、駅からの距離、間取り、築年数などの観点で工夫することで空室率を5%以下にすることは、現実的には可能です。参考までに、実際に私たちが管理している物件の空室率は、そのほとんどが2%以下をキープしています。

空室数や空室期間が増えれば、利益が減ってしまうだけではなく、融資の返済に困り、破綻する可能性もあります。ただし、実際のところ、不動産賃貸業は特別なことをする必要はなく、セオリー通りの行動をとることで空室リスクを少なくすることができます。

●空室のリスクを分解する

空室が発生する原因を細かく見ていくと、物件のハード面ソフト面に分けられます。

ハード面は人がいないエリア、立地が悪い、設備が古い、間取りが良くないなど「形のあるもの」が理由となって入居者が入らないというものを指します。一方、ソフト面は賃料が割高、募集が広い範囲でかけられていないなどといった「無形の要素」を指します。

この2つの観点から、どうすれば空室を減らし、満室経営ができるのかを解説していきます。

●ハード面の対策

ハード面で一番注意すべきことは、購入後に変えられない部分、すなわち人がいなかったり減っていたりするエリアでは物件を絶対に買わない、ということです。

例えば、それは駅から徒歩30分で駐車場のないワンルームアパートや、都道府県全体では人口が多かったとしても実際には需要がない物件などのことです。

また、すでに土地を持っていてアパートを建築しようとしている場合、本当にそのエリアに賃貸需要があるのかどうかはしっかりと確認しておきましょう。

なお、購入後でも変更可能な設備は、場合によっては変更してもよいかもしれません。例えば、最近ではインターネット無料で募集している賃貸が多いため、現状、インターネット設備がない物件で入居がつかないというケースがある場合、導入を検討してみるとよいでしょう。

一例としてインターネットの設備を取り上げましたが、そのほかに関しても考え方は同じです。マーケットを見渡して、必須の間取りや設備が自分の物件にはない、という場合は可能な限り充実させることで空室のリスクを減らすことができるでしょう。

また、こうした改善によって物件価値が上がるのであれば、賃料の値上げを検討することもできます。ちなみに、故障を直すなど、付加価値にあたらない部分の改善は、基本的には賃料の値上げに結びつきません。

このあたりは時代やトレンドによっても変わってくる部分ですので、その時々に合わせて費用対効果まで含め、しっかり確認した上で進めることをおすすめします。

●ソフト面の対策

ソフト面では「賃料設定」と「募集の仕方」が重要です。とりわけ、賃料設定はかなり重要です。

古参のオーナーさんに多いのですが、立場が強かった昔の時代を忘れられず、賃料の値下げや敷金礼金のゼロ設定に強い抵抗を覚える人がいます。これではほかの物件と比較された結果、入居者がつかなくなるというのも当然です。いまはインターネットで一般の人が賃貸の相場が分かる時代ですから、そうした意味でもなおさら顕著な傾向が出ます。

想定した賃料で入居がつかず、賃料を下げれば収支が悪化し、こうした悪循環によって下手をすれば返済に困る事態が起こる可能性があります。

この対策として、本当に売主側が想定している賃料で入居者がつくのかを賃料査定しましょう。実は賃料査定は自分でできるのです。SUUMOなどの賃貸ポータルサイトで、その物件と似た条件で検索して比較しましょう。

ここで気をつけたいのは、相場は平均値ではなく一番安い賃料帯ということです。相場と言われると平均値を基準に考えがちですが、実際に賃貸を探す時には似た条件の中で一番安い物件から見ていくことになるのは、立場を置き換えて考えればわかると思います。

なお、プロの賃料査定を受けたい場合はPLACでも行なっています。あるいは近隣の賃貸仲介会社に問いあわせて相談してみるのもよいでしょう。

このように間取り・駅距離等の条件から相場の家賃を算出し、相場の家賃で募集することで空室リスクを最小限にすることができます。

なお、人がいるエリアであれば、相場賃料にしても入らないということは基本的には考えられません。その場合は、募集の仕方に問題のある可能性があります。

例えば、物件の最寄り駅にある老舗の不動産会社に、「地元に強そうだから」というような理由で募集を任せる場合は特に危険です。

不動産会社は、オーナーさんと入居者の両方から手数料をとりたいため、自社のお客様にしか物件を紹介していない可能性もありますから、広く募集してくれる賃貸仲介会社を見つけ、依頼することが重要です。

【結論】

「空室」のリスクをコントロールする

●日本全国の空室平均率は18.5%なので、都市部のような優位性のあるエリアで、一般的なレベルの賃貸管理をすれば、基本的には18.5%以上の空室率にはならない。

●PLACのオーナーさんは、ほとんどが空室率2%以下。

ハードとソフトの2つの側面から対策を立てて、空室リスクを回避しよう。

副業としての不動産投資
鉄羅敦士(てつら・あつし)
中央大学法学部出身。幼い頃から実家の賃貸経営を見て育つ。地域活性・経営コンサルティング会社、訪問鍼灸院の経営、投資用不動産専門会社を経て、2017年にPLAC株式会社設立。同社設立以前より、投資用の新築マンション等の不動産投資を行なう。不動産のプロになって以降は、自らアパート・マンションを3棟経営している経験も生かし、将来を見据えた投資全般のコンサルティングを行なっている。

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