本記事は、鉄羅敦士氏の著書『副業としての不動産投資』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています

コロナ禍は不動産価値をどう変えたか?

不動産投資
(画像=PIXTA)

都市部から出る人が増えていくのか……
それとも来る人が増えていくのか……

今後はいったい、どうなる? 本当のところは???

●働き方の変化は不動産の価値に悪い影響を及ぼしたわけではない

新型コロナウイルス流行による非常事態宣言の発出は人々の生活に大きな影響を与えました。特に大都市の企業ではテレワークが積極的に導入されています。企業にとっては、働き方改革の推進も相まって都心に大規模オフィスを持つ意義を問い直すきっかけとなりました。働く個人の側ではリモートワークが重視されるようになり、2拠点生活を検討する人が増えるなど、ワークスタイル、ライフスタイルを変化させる動きが活発化しています。

こうした背景から、都心の不動産価値が下落するのではないか? そう懸念される方もいるかと思いますが、実際はどうでしょうか。

結論から述べると、本書のテーマである居住用の物件については、初回の緊急事態宣言発出時だけは落ち込んだものの、2020年後半からは回復基調が続いています。また、実は2020年の不動産投資額は世界で東京が1位です。なかでも中古区分マンション販売仲介件数などは、2019年より2020年のほうが増加しているほどです。

●機関投資家の視点から見た不動産の価値

不動産投資の動向に影響を及ぼす機関投資家の見解を見てみましょう。財団法人日本不動産研究所「第44回 不動産投資家調査」(2020年10月、図1-1)によると、不動産投資家の今後1年間に対する考え方として、「新規投資を積極的に行う」という回答が92%となり、前回調査(2020年4月)よりも6ポイント上昇。また、「当面、新規投資を控える」という回答は11%で前回より7ポイント低下。これはつまり、投資家がコロナ禍の影響を受けてなお、投資に積極的に動こうとしている表れです。前回調査で、緊急事態宣言の前後でいったん逆方向に推移したものが元に戻っている動きからも、今回の事象は一時的なものと言えます(図1-1)。

3-1
(画像=『副業としての不動産投資』より)

実際の売れ行きの動向について、次頁の図1-2は同研究所が示す、ここ22年間の期待利回りの推移です。東京丸の内、大手町のオフィスビルを見ると、一旦上昇した前回調査と変わらず3.5%で底を打っていることがわかります。ここで、利回りが下がるというのは、言い換えると、価格が上がっていることを表します。したがって、物件の売れ行きは鈍っていないということを意味します。

3-2
(画像=『副業としての不動産投資』より)

図1-3の賃貸のワンルームタイプ(東京 城南地区)の場合でも同様です。グラフのとおり、オフィスビルと同じく利回りは低下傾向であることから、物件の価値は下がっていない、と言えます。

3-3
(画像=『副業としての不動産投資』より)

住宅以外の施設を見ると、宿泊施設やホテル、商業施設など、直接的な打撃を受けた産業に関する不動産については、利回りが上昇、つまり価値が下がっています。一方で、物流施設・倉庫などは明確に利回りが低下、すなわち価値が上がっています

さらに、調査対象の方々に向けた「新型コロナは、御社の不動産投資スタンスをどのように変化させましたか」という問いに対しては、77.8%もの人が、「投資姿勢に特段の変化はない」と答えており、2.2%の人が「新型コロナによって、積極的に投資を行う姿勢が強まった」と答えています。このうち、「投資姿勢に特段の変化はない」と答えた理由として最も多かったのが、「経済活動の停滞は一時的に過ぎず、景気の変動は限定的であると見込まれるから」という回答でした。

ちなみに、近年起こった「突発的な危機」に対する反応ということで比較すると、先程の図1-1で、リーマンショック(2008年9月)の時には、投資家はかなり機敏に動いた傾向が見られます。機関投資家は資産を運用するのが仕事ですから、社会の事象には即座に反応するはずです。裏を返せば、彼らがどう考えているかを知ることが一般投資家の判断でも参考になります。

結論としては、機関投資家たちはリーマンショックに対しては敏感に反応した一方、コロナショックはむしろ「買い」のタイミングだと考えているようにも見えます。

●一般の住宅需要

一般の需要動向はどうでしょうか。ニッセイ研究所が発行している「不動産投資レポート」によると、2020年10〜12月期の新設住宅着工戸数は前年同期比で7.0%減少、首都圏のマンション新規発売戸数は1.9%増加、中古マンションの成約件数は11.8%増加しています。

つまり、商業用不動産と宿泊関連施設以外は、2020年の最初の緊急事態宣言後は下がったものの、2020年後半には回復したということがわかります。

また、「首都圏のマンション市場動向 2020年のまとめ」(不動産経済研究所)の調査によると、「地区別価格動向」首都圏のマンション供給戸数は減っています。ただ、価格は1.7%上昇、平米単価の平均価格も5.2%上昇しています。内訳の中で東京都下と千葉はわずかに下落しているものの、都区部を見ると価格は5.8%上昇し、同じく神奈川、埼玉でも価格が上がっています。

契約戸数・契約率のデータでも、結局、一番落ちこんでいたのが、2020年の4〜6月くらいまでで、7月以降は前年比ではプラス傾向に転じています。

つまり状況としては、第1回目の緊急事態宣言解除のあと、元通りになったか、あるいはこの期間に動けなかった分の揺り戻しで動いたことが想像できます。

アンケートの結果からもわかるように、今後、機関投資家たちは投資を積極的にしていくでしょうし、同時に住宅需要も底堅く、賃料も下がってない状況から、影響は一時的だろう、と見ているのが専門家の見解だと言えます。

●収束と共に、元に戻ることが 高い確率で予想できる

ここまでに述べてきたように、業界内では今回の新型コロナウイルスの影響は「一過性の災害」のようなものと捉えられており、ワクチンや特効薬の効果を期待しつつ、収束すれば以前と同じような状況に戻るだろうと多くの人が考えていると言えます。

もちろん、冒頭に述べたように、リモートワークが増えたことでオフィス需要が減少し、都心のオフィスに空きが出たり、賃料が少し下がることはあるかもしれません。しかし過去の動向との比較や、現在の投資家のスタンスから考えれば、コロナ渦の影響は一時的なものという視点が業界内での見立てです。

【結論】

コロナ禍は不動産価値をどう変えたか?

コロナショックの影響は一時的なもの。

都市部の地価は今後も上がっていく可能性が高い!

副業としての不動産投資
鉄羅敦士(てつら・あつし)
中央大学法学部出身。幼い頃から実家の賃貸経営を見て育つ。地域活性・経営コンサルティング会社、訪問鍼灸院の経営、投資用不動産専門会社を経て、2017年にPLAC株式会社設立。同社設立以前より、投資用の新築マンション等の不動産投資を行なう。不動産のプロになって以降は、自らアパート・マンションを3棟経営している経験も生かし、将来を見据えた投資全般のコンサルティングを行なっている。

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