本記事は、鉄羅敦士氏の著書『副業としての不動産投資』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています
不動産投資で失敗しやすい人
成功している人の特徴とは反対に、不動産投資で失敗しやすい人はどのような人なのだろう?
反面教師として気をつけたほうがよいことは?
不動産投資で失敗しやすい人には傾向があります。いくつかのケースを紹介しますので、反面教師として参考にしてください。
●自分で考えて決められない人
営業パーソンの言いなりで購入してしまう人が一定数います。「みんなやっていますよ」「これが普通です」のように根拠のない安心感のある言葉を鵜呑みにしてしまうのです。
また、大家さんが自分が成功した方法を話していることもありますが、成功した人と私たちの属性が同じであることは少なく、さらに始めるタイミングも異なります。目標や目的、ライフプラン、始める時期や場所などの条件が違えば、進め方もまったく異なるため、同じことをやったところで成功する保証はどこにもないのです。
先日、十年ほど前に区分マンションを買った医師の方から、「持っている物件を売りたい」という相談がありました。「節税になるから」と聞いて購入したものの、結局は節税効果もなく、物件も全然儲からないので売却したいと考えたのです。これは事前にシミュレーションをして検討し、誰か詳しい人に相談しておけば見抜けたはずなのです。
うまい話を聞いても鵜呑みにはせず、しっかり根拠を確認すること。わからなければ、納得できるまで質問すること。そして、それは本当だろうかと、自分の基準で考えることが大切です。
●勉強しすぎて進めない人(知りすぎて動けなくなる、リスクへの意識が先行してしまう人)
先述のようにまったく勉強しないのはよくありませんが、かといって過度に勉強しすぎても弊害があります。自分で騙されないようにあらゆる情報を調べ尽くし、完璧な理論武装をしたいがためにリスクばかりにフォーカスしてしまい、百点満点を目指そうとしてしまうのです。ですが、百点満点の物件、条件、状況を探し始めると、買えるものも買えなくなってしまいます。
例えば、理想の物件が見つけられないまま決断できず、5年前なら通ったはずの融資が通らなくなり、状況が悪化するということは実際に起こり得ます。これは仮に、月に10万円弱のキャッシュフロー=年間約100万円の利益を生む物件を5年前に買っておけば約500万円儲かったはずが、理想とする年間キャッシュフロー200万円の案件を探し続けたため、気づかないうちに機会損失が発生していた、という失敗を犯す可能性があるということです。
未来のことは誰にもわかりませんが、「もっと安くなるかもしれない」「もっといい物件が出るかもしれない」といつまでも待っていては前に進めません。また、百点満点の物件に固執するあまり、大事な部分を見落とすこともありえることは頭の片隅に置いておきましょう。
●自分だけが得をしたいと思う
人はみな、自分だけは得をしたい、掘り出し物が欲しいと思うものです。
不動産市場はクローズドな世界なので、耳寄り情報があるのではと思っている方も多いのですが、実際には一般の人のところに掘り出し物の案件が回ってくることはごくごく稀です。なぜなら、そういう物件はまず、現金一括で買える人に押さえられてしまうか、あるいは不動産会社が購入してしまうからです。つまり、「掘り出し物」は市場の上流の部分でなくなってしまうのが現実です。
●安いから、という理由で購入する人
前述の通り、高い安いで判断して購入するのは得策ではありません。特に、手をつけやすそうな値ごろ感を理由に区分マンションを購入した場合、結局は買った時と同じ値段で売れないなどの理由から損をするケースが散見されます。
やはりここでも、3つのリスクを念頭に物件をしっかり見極め、収益性、流動性なども踏まえて購入を決めるべきです。
確かに安い物件であればローンを組みやすく、20代でも買えるでしょう。しかし仕組み上、利益を出すのは難しいと言えます。
●表面利回りだけで判断する人
中古市場は利回りが高いから儲かる、新築は利回りが低いから儲からないという謳い文句がありますが、この考え方は失敗のもとです。
投資利回りと借り入れの金利の差をイールドギャップと言います。これは投資の旨みを判断するための指標の1つで、例えば、中古の利回り10%の物件を金利3%で借りた場合と、新築の利回り8%の物件を金利1%で借りた場合を比較すると、イールドギャップはどちらも同じく7%であるにもかかわらず、なぜか「新築より中古の利回りの方が高いから儲かる」と考える人が意外に多いようです(図2-11)。
さらに、新築と中古は同じイールドギャップであれば修繕費などのコストの関係上、中古のほうが絶対的に損をします。このように、表面利回りだけで判断するのは失敗する可能性が高いと言えます。
先ほど述べた「掘り出し物はない」という話にも通じますが、利回りが高く見えるということは、結局そのように設定しないと売れないからそうなっている、ということを意味します。ですから、「表面利回りがよい」ということは、何かそこに様々なリスクが内包されていると想像した方がよいでしょう。物件が古ければ売るチャンスが減ることはもちろん、修繕コストもいくらかかるかわかりません。当然、新築と比べると入居の競争力も低いため、こうしたリスクも内包して新築よりも利回りが高くなっていると言えます。
そのため、「利回りが高い=儲かる」ではなく、「とても手がかかる」と思っていただいたほうが理解しやすいでしょう。
●不動産投資は「不労所得」だと思っている人
少しシビアな言い方に聞こえるかもしれませんが、「お金だけ出せば、あとは放っておけばいいんだよね」と、不動産投資を完全な不労所得だと考えている人はうまくいかない可能性が高いと言えます。「何もしないでうまくいく」ということはなく、すべてを管理会社に任せてしまえば都合よく進められてしまうこともあります。管理会社にとっては入居者が入ればよいわけですから、必要以上に入居を優先した賃料の値下げや、やらなくてもよいリフォームを提案してくるかもしれません。
ただ、プロの管理会社が提案してくる施策について、いちいち「ちょっと待って」と言うことは前述の「勉強しすぎて進めない人」で指摘した問題と同じように感じる方もいるかもしれません。このあたりはバランスの話でもありますから、丸投げにはせず、同時に神経質になりすぎないように確認を行なう、という落としどころを見つける術を体得する必要があるでしょう。
結局、どこまで自分でやるのかは、その方次第という結論は変わらないのですが、ここでお伝えしたいのは、完全に丸投げするような姿勢はやめましょうということです。 例えば、管理会社の判断については、最初の頃は密にコミュニケーションを取ることで根拠や内容をチェックしていく。そして、このプロセスを通じて、どういう考えでやっているのかという感触を自分でつかむ。次第に管理会社の判断の方法や基準がある程度わかるようになったら、「その方針で任せる」というやり方にしてもいいでしょう。
【結論】
不動産投資で失敗しやすい人
●自分で考え、決められない人 ⇒うまい話を聞いたら、自分でしっかり根拠を確認する。
●勉強しすぎて進めない人 ⇒100点満点に固執してチャンスを逃さないようにする。
●自分だけが得をしたい人 ⇒掘り出し物は市場の上流でなくなってしまう。
●値ごろ感で購入する人 ⇒3大リスクを念頭に、収益性や流動性を踏まえて判断する。
●利回りだけで判断する人 ⇒ほかと比べて表面利回りがよい=それなりの理由がある。
●不動産投資は「不労所得」だと思っている人 ⇒管理会社で手間は省けるが、丸投げをすれば失敗する。
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