この記事は2022年02月04日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「原油・ガソリン価格の高騰は続くのか?~高騰の背景整理と見通し」を一部編集し、転載したものです。
要旨
足元のWTI先物は高騰し90ドルを突破している。背景には「オミクロン株への懸念の後退」、「投資縮小による生産障害・生産余力縮小」、「原油在庫の落ち込み」等による需給の逼迫懸念がある。年明け以降は、ウクライナ情勢緊迫化が上昇に拍車をかけている。
原油価格は、当面さらに上昇するリスクの高い状況が続きそうだ。メインシナリオではないが、仮にロシアがウクライナへ侵攻した場合には、一旦5~10ドルほど上昇し、ロシアからの原油・ガス供給が長期間滞るリスクが現実味を帯びれば、さらに上昇するだろう。メインシナリオとしては侵攻には至らず鎮静化に向かうと見ているが、その場合でも、当面は緊迫感が高まる場面が想定され、上振れ余地がある。その後、事態が鎮静化しても、生産余力の縮小や低い在庫水準といった需給の逼迫懸念は残るため。原油価格の高止まりが予想される。ウクライナ情勢鎮静化を受けて一旦水準を切り下げるとしても、年内はWTIベースで70ドル台~90ドル前後での推移が続くと見ている。
国内では、原油高騰や円安によってガソリン小売価格が170円を突破したことを受けて、政府がガソリン補助金制度を発動する事態となった。当面は補助金によって小売価格の上昇が一定程度は抑制されるだろう。しかし、小売価格を決めるのは小売業者であるため、業者の状況次第でガソリン価格が上振れる可能性は残る。また、原油価格の上昇が続いているため、5円としている補助金の上限では足りなくなる恐れも高まっている。さらに、現在の仕組みでは、予算を使い果たした場合や4月以降もガソリンの高騰が続いた場合には、制度の拡充をしない限り、補助金の支給が出来なくなる。
既述のとおり、原油価格は高止まりが続くとみられる。ある程度幅をもって見る必要があるが、仮に原油価格が80ドルに下がっても、筆者の試算では、ガソリン小売価格は167円前後と相当高い水準が続くことになる。円安が進めばさらに上振れることになる。