本記事は、滝岡幸子氏の著書『すきま時間を味方につける 10分仕事術』(同文舘出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=PIXTA)

「しない」引き算で、労働時間を短縮

中小企業の経営コンサルティングをしているので、組織の業務改善のために、従業員の方がどのような作業を毎日しているのか、ヒアリングをします。作業内容を細かく伺っていると、「あれっ? なぜそんな面倒なやり方をしているのだろう」と思う業務があります。そこで、従業員の方に「なぜ、そのような作業をしているのですか?」と問うと、「そう決まっている」とお答えになります。「それは必要なことですか?」と続けると、「実は、自分もこれをやる必要はないと思っていた」という答えが返ってくることがあります。「前任者から聞いた通りのやり方を変えていない」という場合も多くあります。

私たちは日常の中で、「しなくていいこと」を結構やっています。明確にいうと、「昔はそれが当たり前だったけれど、今はもうする必要はない」というムダな慣習や行動です。

経営コンサルティングの現場で、クライアント先の業務改善を行なう際には、「今一番必要なこと」にフォーカスして、業務のプロセス(流れ)を変えていきます。いわゆる変革です。

「しなくてよいこと」を「しない」ようにすることは、業務改善の第一歩です。

「しなくてよいこと」を探しましょう。探す際のヒントは、「面倒くさい」ことです。

自分の役に立つことなら、面倒に思わずやるでしょう。心のどこかに「この作業をする必要はあるのかな?」という疑問があるから、面倒に感じるのではないでしょうか。

家の中で例を挙げると、「敷マット」。キッチン、トイレ、玄関、お風呂……と各所にあって、掃除のたびに移動したり、干したり。「洗わなくちゃ」とか「新調したほうがいいのかな」と思うことが面倒だったので、ある時マットを敷くのをやめてみました。以来、敷マットを使わないまま数年経ちますが、困ることはありませんし、掃除でもやもやしないので楽チンです。

仕事でも同じように、「しない」で楽チンになることは多々あります。

「やらなくていいこと」を探そう

しなくても仕事がまわることは、思い切ってやめてみましょう。次のようなことはしなくても「まあまあOK」でしょう。あなたの身の回りでも探してみてください。

【メール】の毎度の丁寧な返事

「すぐに返事をする」のが、デキるビジネスパーソンの特徴だと長年感じています。それはたしかなのですが、LINEでメッセージを送った際に「既読」が表示されるのに慣れると、丁寧な返事がすぐに返ってこなくても気にしなくなりました。

【机の上】の整理整頓

どこでもきれいにするに越したことはありません。でも目的が「仕事や勉強をしやすく」ではなく、「整理整頓」になってしまったら本末転倒。

時間がないなら、「仕事ができればOK」くらいの整頓でもいいのかもしれません。

【紙資料】のファイリング

ファイリングして戸棚に並べると見やすいし、探しやすいことはたしかです。でも、並べたまま見ない資料って多くないでしょうか。再度見ることが予測できるもの以外は、整頓しなくてもいいのではないでしょうか。

【紙資料】のプリントアウト

部屋の中を見渡すと、プリントアウトされた資料が山積みになっています(または、ファイリングされています)。手元で読み込んで書き込みしたいものだけプリントアウトし、それ以外は電子データのままでOKです。

【たたむ】こと

洗濯物をたたんだり、コートをきれいに折りたたんだりは、しなくても生きていけます。

【静かな環境】をつくること

「テレビを消す」「音楽はかけないほうがいい」という論もありますが、私の場合、音があったほうがリラックスして仕事ができることが多いので、テレビや音楽はつけたまま作業することも。よい作業環境は人それぞれです。

「する」に越したことはないけれど、「しない」「できない」と諦めることも、あれこれ両立させなければならない時期には必要なのかもしれません。

不得意な作業は、思いきって「もうやらない!」

「不得意なことを得意にしよう」とか「苦手なことを人並みレベルにしよう」という努力ほど、ムダに時間を食うものはありません。大概、十分な素質や「好きになる要素」が足りないから、不得意になるのでしょう。

オリンピック選手は、赤ちゃんの頃から「関節に柔軟性があって、〇〇のスポーツに向いている」とか、すでに素質が見えているそうですね。そのような「向いている」分野は誰にでもあり、それぞれ違うものだと思います。

「好き」なことであれば、練習も楽しみながら積み重ねることができます。「好き」なことを不得意だと感じる人は少ないのではないでしょうか。

「不得意なこと」は、思いきって、他の人に任せたほうが数倍うまくいきます。大企業などは経験則からそれを仕組み化しています。外回りの営業職には書類を整える営業事務職を配置しています。または、簡単に操作できるシステムを開発しているでしょう。法務、経理、書類作成や細々とした事務作業には、専門の部署を設け、秘書的な人材を配置しています。

不得意なことを克服するためにがんばる時間は、「誰に任せるか」を探す時間に割いたほうが得策ではないでしょうか。

たとえば、こんなことが考えられます。

  • 「手書き」が面倒なら、すでに必要な文章が印刷されたものを購入したり、フォーマットを活用する
  • 「人前に立ってプレゼンする」ことが苦手なら、文書や資料をわかりやすくつくって回覧する(わかりやすい資料を作成する人として認められる)
  • 「書類を作成する」ことが不得意なら、上手な人が作成したフォーマットを活用する。または、直接会って説明する
  • 飲食店を営むオーナーで、料理は得意だが、スイーツづくりはそれほど得意でないなら、ケーキづくりが得意な人を雇ったり、近所のケーキ店に卸売りしてもらう
  • ある分野の経験が浅いなら、詳しい人に聞きまくる(仕事の達人がよくすること)
  • 料理の献立を考えることが苦手なら、いくつかのメニューだけルーティン化。または、週に何度かいろいろなお惣菜を加える

完璧をめざさない。60%できたら進む

仕事が進まない原因のひとつに、「完璧に仕上げたい」という望みはありませんか? 私も完璧主義なところがあり、仕事でも育児でも悩んで立ち止まってしまうことがあります。

でも、20代の頃、同世代の起業家たちが「60%できたら進む」「走りながら考える」という姿勢でベンチャー企業を成功に導いた姿を見て、自分にもその考え方をインストールしようと思いました。完璧な状態になるまで待っていると、ものすごく時間が経ってしまうんですね。また、自分の思う完璧な姿が、相手の望むものと違うかもしれません。

ひとり起業をしていると、ひとりで机の前で悶々としてしまうことが多くあります。だから、「完成度を高くしたい」という気持ちは持ちつつ、60%くらいできたら見せてみる。間違っていたら修正して、走りながら、直しながら進んでいく。そんな割り切りが必要なのでは、と思いました。

すきま時間を味方につける 10分仕事術
(画像=すきま時間を味方につける 10分仕事術)

たとえば、書類はフォーマットに文字や情報を半分埋めた段階で見せる。アイデアは少し形になったら話してみる。イラストは、色をつける前に見てもらう。料理はもうひと味足りないけれど、形になった段階でメニュー名を考える。そうこうしているうちに、もうひと味が見つかることでしょう。

複数のことを同時並行で進めるには、すべてを「60%のでき上がり」、時には「30%だけ」という状態で進めていくのはいかがでしょうか。

見直しや修正を重ねて、時間が経過すれば100%に近づいていく。

60%できたら、次に進む。走りながら考える。

これまでなかった道を新たにつくっていく、ベンチャー企業に学んだ知恵です。

すきま時間を味方につける 10分仕事術
滝岡 幸子
中小企業診断士、経営コンサルタント、「ひとり起業塾」主宰、渋谷ポテンシャルビジネス研究所代表
外資系コンサルティング会社・プライスウォーターハウスコンサルタント(PwC、現IBM)で、多くの企業の戦略立案、業務改善プロジェクトに従事後、2002年に有限会社ポテンシャルを設立。会社員時代から20年超にわたり、ノマド、ワーケーション、在宅ワーク、複業(パラレルワーク)を含めた“どこでもオフィス"な働き方を実践。中小企業の経営コンサルティングや起業支援などを主な領域とし、企業研修、非常勤講師、各種メディアでの執筆、講演、ワークショップ・セミナー開催などに邁進。“転んだら宝石をつかんで起きよう"をモットーに、自分らしい働き方とライフスタイルを模索。少資金、低リスクで身軽な「ひとり起業」や副業、女性の働き方に関する講演や執筆を担当する機会が多いため、仕事の効率化や在宅ワークをからめた時短家事、子育てと仕事をミックスしたライフスタイルを研究中。
著書に『ど素人がはじめる起業の本』『図解 ひとりではじめる起業・独立』(翔泳社)、『マイペースで働く! 女子のひとり起業』『マイペースでずっと働く! 女子のひとり起業 2年目の教科書』『マイペースで働く! 自宅でひとり起業 仕事図鑑』『クルマ1台で起業する はじめよう! 移動販売』(同文舘出版)、『女子の副業 夢もお金もあきらめない。』(青春出版社)などがある。

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