本記事は、滝岡幸子氏の著書『すきま時間を味方につける 10分仕事術』(同文舘出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

職場,オフィス
(画像=PIXTA)

感情コミュニケーションを減らして適度な距離感に

他人との「距離感」の取り方は、かなり個人差があると思います。兄弟が多く大家族で育った人は、他人とも長時間一緒に過ごせる傾向があるのではないでしょうか。

一方、ひとりっ子や大人に囲まれてひとり遊びをして育った人は、四六時中、大人数で過ごすことに慣れていないかもしれません。また、繊細な精神を持つHSP(Highly Sensitive Person)の人は、ごく限られた少人数のチームや、ひとりで仕事ができる体制が合っています。他人の顔色を読んでしまう人は、他人と接する時間を限定するほうが心穏やかに過ごすことができます。

私も「ひとり起業」をして、20年以上が経過しました。独立前はコンサルティング会社に勤めていたので、いつも数名のチーム体制でクライアント先に出向いていました。その頃を思い返せば、お昼ご飯はひとりでひっそり食べられるように時間を見計らったり(笑)、新幹線に乗る時間を他のチームの人とずらしたりしていました。チームで仕事をするのはとても刺激的で楽しかったのですが、「ひとりの時間」も確保しようとしていたような気がします。

その後、独立して会社を設立した時は、多くの人を雇うベンチャー企業をつくり上げることに憧れていました。しかし、うつ病になってしまいました。もしかしたら、「マイペースでいたい」自分と、「多くの人と四六時中過ごす理想」の狭間で疲れてしまったのかもしれません。結果的に、2003年11月に「ひとり起業」という言葉を生み出し、「自分はひとりで働きたかったのだ」と実感したものです。

そして、「ひとり起業塾」という、「ひとり起業」をしたい方に向けたメールマガジンの配信、セミナーや個別アドバイス事業をはじめてみると、私のように「マイペースに、ひとりで仕事をしたい人」は結構いるのだとわかりました。それから20年近く、ミーティングや懇親会の時には仕事仲間と一緒に楽しく過ごすけれど、それ以外の時間はひとりでマイペースに仕事をさせていただいています。

人との感情コミュニケーションを減らす仕事上の工夫に、次のようなものが挙げられます。

ひとりで作業できる専門性を探す

会社に勤務していても、「ひとりで作業をする仕事」を探したり、つくり上げたりすることは可能です。「研究職」や「職人」のように、「ひとりで担当する時間が長い」仕事がいいのではないでしょうか。実際に、社内で実績を積んだ後に、自分が中心となる「研究所」みたいな部署をつくり上げている人もいます。自分がリーダーになれば、仕事時間やチームメンバーの裁量がしやすくなります。

リモートでできる職種につく

パソコン1台でできる仕事は、リモートワークが可能です。ライター、ウェブデザイナー、プログラマー等の職種は、パソコンに向かい合う仕事なので、在宅ワークが認められる会社に勤めれば、自宅に居ながら仕事ができます。

電話が「かかってくる」ことを減らす

「電話を減らす」のは、コミュニケーションを減らすひとつの方法です

周囲の声を遮断する「イヤホン」で音楽を聴く

スポーツ選手の中には、大事な試合前にイヤホンで好きな音楽を聴いている人がいます。音楽を聴いてモチベーションを上げるのと同時に、周囲の人の声に惑わされない工夫だと思います。「イヤホンをつけて音楽を聴く」ことが許される職場なら、集中したい時や「今は話しかけないでくださいね」という意思表示にもなります。

ひとり部屋を確保する

コミュニケーションにほどよい距離感をつくり出すのは、文字通り「物理的な距離」と「壁」をつくることです。ひとりの空間で仕事ができるように、自分の部屋を確保できればベスト。物理的に遮断されます。また、何人かいる部屋でも、「壁に机をくっつけて、壁に向かって仕事をする」のもいいでしょう。

「ミーティング」や「懇親会」には参加するけれど、それ以外の時間はひとりで黙々と作業をすることにすると、他人の感情に揺さぶられることなく、精神的にもラクだと感じます。ただし経験上、1日のうち数時間は誰かと一緒に過ごしたり、話したりしないと、孤独感が募って精神的によくないと感じます。部屋にこもらずに、1日のうち数時間は外出したり、誰かに会うことをおススメします。

ノートパソコンは持ち歩かない

スマートフォンやタブレットが一般化し、これからもっと軽量で小さな機器が発売されていくと思うので、必要のない話かもしれませんが、「ノートパソコンは持ち歩かない」ことについて私の経験をお話しします。

外資系コンサルティング会社のプライスウォーターハウスコンサルタント(後にPwCに社名変更、現IBM)に勤めはじめた1990年代後半、同社は「オフィスのフリーアドレス制」「どこでもオフィス」「ノートパソコンひとり1台」を実践していました。今では当たり前になりましたが、当時はそのような会社はなく、先進的なフリーアドレスオフィスやIT活用でした。その環境に影響され、2002年に独立した際には、発売されていた中で一番薄くて軽いノートパソコンを購入してひとり起業しました。

仕事をする時はいつもノートパソコンを持ち歩いて、カフェでもパソコンを開く「ノマド」生活をはじめたところ、「あれっ?」と感じることがありました。コンサル会社時代とは違って、ひとり起業の私の場合、受け取るメールの数も限られていました。また、どうしてもすぐに返事をしないといけない緊急性のあるメールはごく稀だったのです(それでも、すぐに返事を返していましたが)。

また、外出先でインターネットを閲覧していましたが、「今すぐ調べなくてはいけないことって少ないな」とぼんやり思っていました。今ではスマホがあるので、パソコンでわざわざ検索しなくてもいいのですが。

その後、ノートパソコンを持ち歩くノマドライフが一般に広がっていく中で、逆に、私はノートパソコンを持ち歩く機会が減りました。そもそも、どれほど軽いパソコンでも1キロ近くあって重たいので、肩や腰に響くからです。同時に、スマートフォンの普及もあったと思います。

ノートパソコンを持ち歩いてよかったと思うのは、出張先など遠距離でのワーケーションの場合です。

今では、気分を変えて原稿や資料を作成するためにカフェに行くときだけ、ノートパソコンを持ち歩いています。

すきま時間を味方につける 10分仕事術
滝岡 幸子
中小企業診断士、経営コンサルタント、「ひとり起業塾」主宰、渋谷ポテンシャルビジネス研究所代表
外資系コンサルティング会社・プライスウォーターハウスコンサルタント(PwC、現IBM)で、多くの企業の戦略立案、業務改善プロジェクトに従事後、2002年に有限会社ポテンシャルを設立。会社員時代から20年超にわたり、ノマド、ワーケーション、在宅ワーク、複業(パラレルワーク)を含めた“どこでもオフィス"な働き方を実践。中小企業の経営コンサルティングや起業支援などを主な領域とし、企業研修、非常勤講師、各種メディアでの執筆、講演、ワークショップ・セミナー開催などに邁進。“転んだら宝石をつかんで起きよう"をモットーに、自分らしい働き方とライフスタイルを模索。少資金、低リスクで身軽な「ひとり起業」や副業、女性の働き方に関する講演や執筆を担当する機会が多いため、仕事の効率化や在宅ワークをからめた時短家事、子育てと仕事をミックスしたライフスタイルを研究中。
著書に『ど素人がはじめる起業の本』『図解 ひとりではじめる起業・独立』(翔泳社)、『マイペースで働く! 女子のひとり起業』『マイペースでずっと働く! 女子のひとり起業 2年目の教科書』『マイペースで働く! 自宅でひとり起業 仕事図鑑』『クルマ1台で起業する はじめよう! 移動販売』(同文舘出版)、『女子の副業 夢もお金もあきらめない。』(青春出版社)などがある。

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