本記事は、滝岡幸子氏の著書『すきま時間を味方につける 10分仕事術』(同文舘出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
原因1 「名もなき仕事」が思った以上に多い
「名もなき家事」ならぬ「名もなき仕事」って、思った以上に多いものです。どのような業種でも、「収入に直結しない仕事」が、仕事時間やプライベートの40%は占めているのではないでしょうか。「名もなき仕事」とは、たとえば、マッサージ業における「サロンの加湿器の掃除」とか「顧客情報の書き込み」、「レジ横の雑誌をきちんと並べる」、「盆栽が趣味の常連客と会話ができるように盆栽をはじめて水やりをする」といったものです。どれも地味に時間がかかるものばかり。
私は経営コンサルティング業をしていますが、「これから流行りそうなもののリサーチ」のための街歩きや「クライアント企業の競合調査」には、大変多くの時間を割いています。私にとって、それは趣味ともいえるものなので、仕事なのかプライベートなのか境目のない活動です。
話が横にそれてしまいました。アイドルや俳優さんは、よくおしゃれな私服姿をSNSにアップしていますが、「明日につなげる活動」として、おしゃれの勉強をしたり、写真を何枚も撮影したりするのは「名もなき仕事」なのかもしれません。
「名もなき仕事」には、価値を生み出すものとそうでないものの2種類があります。
前述の例でいえば、マッサージ師が顧客との話題づくりをしたり、経営コンサルタントの市場調査、自己ブランディングを必要とする人の写真やSNSの研究は、「明日の自分を生み出す」価値のある活動といえるでしょう。その一方、「加湿器の掃除」はできれば効率化したい作業ですね。
一度、ご自分がされている「名もなき仕事」を書き出してみるといいと思います。書き出しながら、「将来のための活動」なのか、「やりたくない、効率化したい作業」なのかを自分に問うてみましょう。「やりたくない」場合は、「名もなき仕事」に「加湿器の掃除を毎日」等と名前をつけて、他の人にお願いしてみてはいかがでしょうか。
解決策の例
- ちょっとした作業でも、「名もなき仕事」を自分の言葉でやることリストに書き出す
- やらなくてもどうにかなる「名もなき仕事」を探して、思い切ってやめてみる。または、得意そうな人を探してお願いしてみる
原因2 予定が決まるのが直前であたふたする
「予定が決まらない」タイプの仕事は、一番時間がかかりますし、直前にあたふたします。あたふたしている時は、一番「忙しく」感じるものです。
天候によって売上が上下するお店では、「雨」「雪」や「台風」によって、臨機応変な対応が求められます。直前まで天気予報や空の様子を心配し続けるでしょう。
小さい子どもの育児中は、子どもの突然の病気等で予定が明確に決められないという状況もあります。小さいお子さんがいて「予定通り準備をしていたけれど、出かける直前に子どものおむつを代えていて遅刻しました」という方もいました。私も幼稚園や保育園に登園する朝は、「はたして、仕事に間に合うだろうか」とハラハラした朝がありました。「お弁当」や「トイレットペーパーの芯を明日持ってきてください」等の持ち物について、前日に知った時には慌てます。
また、決まっていた日程が突然変更になることもありますね。「自分が日にちを間違えて覚えていた」という、あちゃーという事態もあります。
解決策の例
- 「予定通りに進まない」可能性について、相手に詫びつつ、伝えておく
- 自分以外で、ピンチヒッターをはたしてくれる人を確保しておく(育児中であれば、自分が仕事に行けない場合を見越して2人チームで活動する)
原因3 仕事の範囲が明確でないため、重複して作業している
「仕事の範囲が曖昧」な職場は、結構あります。たとえば、ひとつの仕事に関して2つの部署が同時に管轄となり、両部署で同じ仕事を担当している。この場合は、当然、同じような作業を2つの部署が行なっている、ということが頻発します。
同様のことは、同じ部署内であれば、頻繁に発生しています。以前、あるクライアント先で同じ部署にいる数名の従業員の方に、ひとりずつ「どのような業務を毎日していますか?」とヒアリングした時のこと。細かく業務内容を伺っていると、同じファイルの名前が2名の方から出てきました。「あれっ、このファイル名は以前にも聞いたことがあるな」と思って確認してみると、やはり同じファイルでした。なんと、同じ部署の2名が同じ作業を重複して行なっていたのです。そのおふたりに詳しく聞くと、「自分でもなぜこの作業をしなければならないのか、と思いながらやっていた」とのこと。前任者から引き継いで、その作業を続けていたのです。なお、その2名の方は同じことを少しずつ違うやり方で行なっていました。
本来はひとりがやればいい仕事ですが、重複して2名分の時間が発生していた例です。その後、やり方を改善して、1名だけで行なう体制となりました。
仕事の効率化が進むドイツでは、仕事の範囲が「きっちり」決まっているのだそうです。「自分の仕事の範囲」が明確なので、「残業をしないために、効率よく作業をしよう」と心がける人が多く、結果的にさらに効率化が進みます。また、「他の人の仕事が終わっていないから、同じ部署の人が(自分の範囲外の仕事でも)手伝う」という感覚が少ないと、終業時刻にしっかり帰ることができますね。
日本では割と「何でも明確に決めない」傾向があると思います。テレビドラマのように「私の仕事はここまでですから、範囲外の仕事はできません」と、きっぱりとはいいにくい雰囲気もあります。すると結果的に、前述の例のように、「ひとつの仕事を何人かで重複して行なっている」という状況になります。
解決策の例
- 業務を細かい単位(パーツ)に分けた表などを作成し、担当者を書き込んで、各人の仕事の範囲を見える化する
原因4 いつも同じ誰かが止めている
仕事が順調に進まないパターンのひとつに、作業途中に「誰か」のところで止まってしまう、または遅くなるということがあります。
「誰か(仮に、Dさんとしましょう)」のところで仕事が止まってしまうのは、次のような理由からです。
- 理由1 Dさんが忙しくて、作業ができない(=優先順位が低い)
- 理由2 Dさんがその作業について「わからない」ことがあり、作業が進まない
- 理由3 Dさんの休日、または仕事時間外で、作業をしていない
今回は、理由3の「Dさんの仕事時間外だ」という点について考えてみたいと思います。
私たちには、それぞれの「休日」と「仕事をしないと決めている時間帯」があります。仕事日を「月曜から金曜」としている会社が多いでしょうが、土曜日や日曜日もサービスを提供している会社は、「月曜日」が休みだったり、シフト制で休みの日がマチマチだったりします。
今回のケースの場合、Dさんの「休日」と「絶賛、仕事中」の時間帯を把握した上で、仕事のパスを投げることができれば、「あれっ、まだ返事が来ない」というようなことは防げるのではないでしょうか。
ちなみに「絶賛、ただいま仕事中」という時間帯は、業界やその人によって結構違う、というのが、複業(パラレルワーク)でさまざまな業界の方に接している私の実感です。
たとえば、こんな方がいます。
- 夜型の人 机に向かう仕事は午後からで、夕方から夜中にかけて一番集中して作業をしている人。
- 朝型の人 早朝5時くらいから稼働していて、午前中は連絡が取りやすいけれど、夕方以降は仕事をしない人。
- ランチは必ず外出する人 ランチ時間に外出するかどうかは、人によってそれぞれです。お弁当を持参している人はずっと机の前に座っていたり、12時前にはいつも席を立っている人もいます。
- 午後4時に帰る人 今は早い時間に帰宅する人もいます。時短勤務などで午後3~4時くらいに会社を出る人は、その1時間前には「その日の仕事」について締めているのではないでしょうか。そんな人への「〇〇して欲しい」というような連絡は、午前中のほうが対応してもらいやすいかもしれません。
解決策の例
- 一緒に仕事をすることになった人には、「休日としている曜日」や「仕事をしていない時間帯」を聞いておく。自分からも同様に、「休日としている曜日」や「仕事をしている時間帯」をそれとなく伝えておく
- 「子育て」「介護」「趣味」等、プライベートについて伝えておき、「〇時には保育園のお迎えに行かなくてはならない」というような事情を伝えておくと、相手も納得しやすい
原因5 直接関わる人が3人以上いる
ひとつの仕事に関わる人が増えるほど、作業をする工程が人数分増えるので、人から人への伝達や待ち時間が長くかかります。できるだけ最少限度の人数で仕事をまわしたほうが速く進みます。
2人チームで仕事をまわすと、2人の間だけで情報共有すればいいわけですから、理解が速く、スピードも速くなります。
3人以上いると、「情報を共有するためのミーティング」のために時間を調整したり、誰かの作業終了を全員で待たなければならないこともあります。結果的に、チーム全員が「待つ」時間は長くなるでしょう。
多くの人数でコミュニケーションを取りながら時間をかけて仕事をするのは、人間らしくていいことだと思いますが、「かかる時間」だけを見ると、できる限り少数精鋭のチームにするほうが効率的だと思います。
解決策の例
- ひとつの仕事をするチームの人数を最少限にする(少数精鋭)
- ひとつの仕事を「2人チームでできるレベル」まで細かく分解する(それぞれのレベルの作業スピードを上げることができ、結果的に全体のスピードが上がる)
外資系コンサルティング会社・プライスウォーターハウスコンサルタント(PwC、現IBM)で、多くの企業の戦略立案、業務改善プロジェクトに従事後、2002年に有限会社ポテンシャルを設立。会社員時代から20年超にわたり、ノマド、ワーケーション、在宅ワーク、複業(パラレルワーク)を含めた“どこでもオフィス"な働き方を実践。中小企業の経営コンサルティングや起業支援などを主な領域とし、企業研修、非常勤講師、各種メディアでの執筆、講演、ワークショップ・セミナー開催などに邁進。“転んだら宝石をつかんで起きよう"をモットーに、自分らしい働き方とライフスタイルを模索。少資金、低リスクで身軽な「ひとり起業」や副業、女性の働き方に関する講演や執筆を担当する機会が多いため、仕事の効率化や在宅ワークをからめた時短家事、子育てと仕事をミックスしたライフスタイルを研究中。
著書に『ど素人がはじめる起業の本』『図解 ひとりではじめる起業・独立』(翔泳社)、『マイペースで働く! 女子のひとり起業』『マイペースでずっと働く! 女子のひとり起業 2年目の教科書』『マイペースで働く! 自宅でひとり起業 仕事図鑑』『クルマ1台で起業する はじめよう! 移動販売』(同文舘出版)、『女子の副業 夢もお金もあきらめない。』(青春出版社)などがある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます