PERを投資判断・経営分析に使う際の注意点
PERは経営実態を表す指標のひとつだが、特性を見誤ると有効な判断材料にならないこともある。ここからは、PERを投資判断や経営分析に使う際の注意点を紹介する。
PERには何倍なら妥当という水準はない
PERは絶対値としてその時点だけの数値を見ても、高いか低いかは判断できない。PERが何倍であれば高くなり、何倍だと低くなるのかは、比較を通して判断する必要がある。まず重要なのは時系列分析だ。PERの計算式で用いる「1株あたり当期純利益」は、あくまで今期予想の利益ベースの数値である。
つまり将来的な安定性や成長性、さらには過去の利益の推移を表しているわけではないのだ。一方株価は、将来的な成長期待感や失望感が瞬時に反映するものである。株価の動きに対してPERも変動するが、PERの算出ベースとなる二者の動き方は一致していない。つまり必ずしも「PERが何倍だから良い」とはいえないことが分かるだろう。
PERはあくまで直近の利益予想値に対して、株価が何倍買われているのかを計算するものであり、株価の割安感や割高感は、その企業の「これまで」と「これから」を踏まえて判断することが重要になってくる。
赤字企業では計算結果がマイナスになる
当期純利益からPERを算出する場合、赤字企業では計算結果がマイナスになる。しかし、いくらPERが低いからといって、赤字企業の株価を割安と判断することは危険だ。
当期純利益がプラスにならない企業は、次第に資金力や競争力を失うことが予想される。最終的には上場廃止となり、市場で株式が取引されなくなる可能性も考えられるだろう。
PERが経営実態を表さないケースもある
ここまで解説したように、PERは計算するタイミングによって数値が変わる。もし前期と当期の純利益に差がある場合は、決算前・決算後のどちらで算出するかによって、数十倍の差が出ることもあるだろう。
つまり、PERは必ずしも経営実態を表すものではなく、指標として活用できる時期は限られてくる。特に株式の流動性が高い成長企業は、短期間でPERが大きく変動するかもしれない。
PERはあくまで指標のひとつなので、ほかのデータや指標と組み合わせて総合的に判断しよう。
PERとPBRを理解して適切に評価
PERとは株価収益率のことで、株価の割高感、割安感を判断するうえで用いられる指標である。「株価÷1株あたり利益」で算出され、PERの値が高いと企業の利益に対して株価は割高であり、PERの値が低いと企業の利益に対して株価は割安であることを意味する。
実際にPER値をもとに株価の分析を行う場合は、対象企業の過去のPER値や同業他社・業界平均値などと比較分析を行うことが大切だ。
また、PERの数値が高めであるとき、低めであるときは、「なぜそのような数値が導き出されたのか」を株価の動き・企業の将来性などを踏まえて検討する必要がある。さらにPERと同じく株価の割高・割安を分析できるPBR(株価純資産倍率)も指標として利用すると、より適切な評価ができるだろう。