PERを株価の指標として見る際のポイント
一企業の一時点におけるPERの数値だけを見て、その企業の株価の割高感や割安感を判断するのは早計である。PERを株式投資の指標とする際に心得ておくべきポイントを紹介しよう。
同じ企業の過去のPERと比較する
PERの数値から株価の割高感、割安感を判断するうえで一番簡単なのは、その企業の過去の数値と比較することである。
例えばPER値が2014年に95倍、2015年に90倍、2016年に60倍、2017年に55倍、2018年に60倍、2019年に55倍、2020年に80倍となったC企業について考えてみよう。
2016~2019年までの平均値に比べると、2020年のPER80倍は数値として大幅に上昇しており、そのまま見ると割高であると感じざるを得ない。
しかしこのとき、C企業の当期純利益が、2019~2020年にかけて、新型コロナウイルスの影響により3分の1程度に落ち込んでしまっていたとしよう。そうなると、今後ウイルスの拡大が落ち着いて再び事業活動が軌道にのれば、2014~2015年のPERは平均で90倍を超えていることも考えると、将来的にまた利益が増えて株価が上がる可能性もある。今後のことを踏まえると、80倍は必ずしも割高とはいえないとも考えられるだろう。
つまり、過去のPERの推移を踏まえ、今後の企業成長の可能性を考えると、その時点でのPER値だけでは割安、割高と明確に判断することは難しいのだ。過去と比較し、これから企業がどのように変化していくのか診断・分析することによって割高・割安を判定できるともいえる。
同業他社のPERと比較する
PERの計算式に用いられる当期純利益や利益成長率などは、事業の特性に左右されやすい。つまり、PERの平均値は業種によって異なるため、業界内の同業他社と比べることが重要だ。
参考として、以下では日本取引所グループが公開する資料から、2024年3月時点での平均値をまとめた。
上記はあくまで上場企業の平均値となるため、中小・中堅企業では参考にならない場合もある。非上場企業がPERで経営分析をする際には、経営データをもとに競合のPERを算出するといった工夫を考えたい。
PBRと合わせて分析する
PBRと合わせて分析することで実際に株価の割高・割安を評価の精度がより高まる。なぜなら前述したようにPERは、利益をもとに評価するがPBRは純資産をもとに評価され併用することで事業活動を複数の視点から分析できるからだ。株価の分析もより適切にできるだろう。