PERの計算式

PERには2つの計算式があり、分析の目的によって使い分けられている。

【1】PER(倍)=株価÷1株あたりの当期純利益
【2】PER(倍)=1÷(株式資本コスト-利益成長率)

上記【1】の式は、主に株式の投資判断をする際に用いられる。1株あたりの当期純利益は「当期純利益÷発行済み株式総数」で算出でき、一会計期間における1株あたりの成果を表している。なお、株式投資は将来性を見込んで行われるため、当期純利益は予想数値(企業が公表するもの)を用いることが多い。

例として株価が1,000円、当期純利益が1億円、発行済み株式総数が100万株のPERを計算してみよう。

<PERの計算例(株価と当期純利益から計算)>
当期純利益÷発行済み株式総数=1株あたりの当期純利益
1億円÷100万株=100円
株価÷1株あたりの当期純利益=PER
1,000円÷100円=10倍

一方で、上記【2】の式は経営分析で使われることが多い。株主資本コストとは、株式発行によって資金調達をする際にかかるコストであり、例としては株主に支払う配当金などが挙げられる。

仮に株主資本コストを20%、利益成長率を12%として、同じようにPERを計算してみよう。

<PERの計算例(株主資本コストと利益成長率から計算)>
1÷(株式資本コスト-利益成長率)=PER
1÷(20%-12%)=12.5倍

このように目的に応じて計算式を使い分けると、PERを押し上げている(押し下げている)要因を把握しやすくなる。特に経営分析で活用する場合は、計算式に用いる各要素まで深堀りして、改善したい数値を特定することが重要だ。

PERは成長中の企業ほど高くなる傾向

前述のプライム市場・グロース市場のデータから分かるように、PERは成長中の企業ほど高くなる傾向がある。成長企業の株式は、収益が増える前に投資家から購入されるケースが多いためだ。

例えば、当期純利益の予想値が発表される前に買い注文が殺到すると、1株あたりの当期純利益よりも株価の上昇率のほうが高くなる。結果として「株価÷1株あたりの当期純利益」の分母が大きくなるため、タイミング次第ではPERが50倍を超えることもある。

また、成長企業のPERは14~16倍が目安にならないので、銘柄によっては20倍を超えても「割安」と判断される。こう考えると、PERの数値が高いから買い控え、PERの数値が低いから買うべき、とは一概にいえない。企業の業績の推移などを見ながら、総合的に判断することも必要である。