「週休3日制」……。企業に勤める会社員にとっては、とても甘美な響きがする言葉だろう。自分の勤め先では到底実現しないと感じている人も多いかもしれないが、政府はすでに週休3日制を推進することについて閣議決定し、導入に乗り出す大手企業も増えてきた印象だ。
日本政府が週休3日制の普及について閣議決定
日本政府は2021年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2021」を閣議決定しており、この基本方針の中で週休3日制の推進について触れている。
この基本方針の副題は「日本の未来を拓く4つの原動力 〜グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策〜」だ。この4つの原動力を支える基盤づくりの一環として、「選択的週休3日制度」※の普及を図るとしている。
(※「選択的週休3日制度」とは、希望する労働者に対して1週間で休日を3日間与える制度のことを指す)
閣議決定された文書の中では、23ページ目で次のように記載されている。「選択的週休3日制度について、育児・介護・ボランティアでの活用、地方兼業での活用などが考えられることから、好事例の収集・提供等により企業における導入を促し、普及を図る」
つまり、日本政府はいま、民間企業における週休3日制の導入を後押しする立場にあるわけだ。今後、導入推進に向けた具体的なアクションも検討されるはずで、例えば導入した企業に対する税制優遇策などが発表されれば、週休3日制に移行する企業が増えるかもしれない。
導入企業は現状少ないが、徐々に大手企業が導入
現状、週休3日制を導入している企業はまだ多くない。デジタルマーケティング事業を展開するPLAN-Bの運営メディアが正社員1,000人を対象に2021年に実施した調査によれば、現在の勤務形態が「週休3日制」と答えた人はわずか2.9%にとどまった。
しかし、大企業の中にもすでに週休3日制を導入している企業がある。例えば、みずほフィナンシャルグループだ。2020年から選択式週休3日制度を導入している。希望すれば、週休4日も可能だという。
今後、導入することをすでに発表している大手企業もある。塩野義製薬だ。導入時期は2022年4月とされている。パナソニックの楠見雄規社長は1月6日のオンライン説明会で、選択的週休3日制の導入を検討していくことを明らかにしている。
大手企業で週休3日制が普及していけば、その後、中小企業にもこの流れが波及していく可能性は大きい。
企業側にとっての導入のメリットとデメリットは?
ちなみに、先ほどの紹介した調査では、週休3日制の導入に「賛成」と回答した正社員は51.8%、「どちらかと言えば賛成」と回答した正社員は28.3%に上っており、合わせると実に8割ほどの正社員が週休3日制を望んでいると言える。
もちろん雇用される正社員側の視点に立てば、給料が減らなければではあるが、休日が増えて嬉しいことはうなずける。では一方、企業側の視点に立った場合、週休3日制を導入するメリットとデメリットとは何であろうか。
導入のメリットは?
もし従業員が、増えた休日に自分磨きをしてスキルアップしてくれれば、企業としてはありがたい。また、休みが増えることでワークライフバランスが整えば、会社への不満や体調不良などで退職する人が減る。つまり、人材不足の解消につながる。
生産性が上がる可能性もある。週休3日制が導入されるということは、1ヵ月の実働時間が短くなるということだが、週休3日制の導入をきっかけにDX(デジタル・トランスフォーメーション)などで業務の効率化などを促していけば、生産性の向上につながっていく。
新型コロナウイルス感染症の拡大下においては、出社する人が少ない分、職場内における感染リスクも小さくなる。このような点を意識して、週休3日制の導入を検討し始める企業もあるようだ。
導入のデメリットは?
一方、企業が週休3日制を導入する際、デメリットやリスクとなり得る点もある。
業種や職種によっては、業務をいくら効率化したとしても、ある程度多くの人手が必ず必要になる作業もあるはずだ。そのような場合、週休3日制を導入すると、出勤人数が減る分、新規採用での穴埋めが必要となる。
また、給与水準を変えずに週休2日制から週休3日制へ移行する場合は従業員に歓迎されるものの、逆に週休3日制から週休2日制に戻る場合は反感を買うことになり、場合によっては従業員の離職が増えるかもしれない。そのため、週休3日制への移行は慎重さが求められる。
普及に向けた日本政府のアクションに注目
この記事では週休3日制に関するさまざまなトピックスをまとめて解説してきた。日本政府は導入を後押ししており、大手企業がまずその方針に追随し始めている印象だ。
ただし前述の通り、週休3日制の導入は企業にとってデメリットもある。そのため、導入に二の足を踏む企業もなかなか減らないことが予想される。
これらの状況を打開するために、日本政府は今後どのようなアクションをするのか。注目だ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)