この記事は2022年2月24日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「成約事例で見る東京都心部のオフィス市場動向(2021年下期) ―― 「オフィス拡張移転DI」の動向」を一部編集し、転載したものです。

要旨

区分所有オフィス
(画像=picture-cells/stock.adobe.com)

本稿では、三幸エステートとニッセイ基礎研究所の共同研究の一部であるオフィス拡張移転DIを中心に、2021年下期の企業のオフィス移転動向を概観した。

東京のオフィス拡張移転DIを業種別・ビルクラス別・エリア別に分析することで、以下4点がわかった。

(1)オフィス拡張移転DIは、2021年第4四半期に上昇し、企業の拡張意欲が高まるとともに、空室率の上昇に頭打ち感がみられる

(2)コロナ禍を起点とした企業のオフィス再構築の動きが継続するなか、情報通信業では縮小移転する企業と拡張移転する企業の二極化が進行している

(3)Aクラスビルのオフィス拡張移転DIが大幅に上昇し、グレードの高いビルが拡張移転ニーズの受け皿となっている

(4)上記の結果、IT企業が集積する「渋谷」や大規模ビルが多い「丸の内」、「西新宿」で企業の拡張意欲が高い


三幸エステート株式会社(本社:東京都中央区、取締役社長:武井重夫)と株式会社ニッセイ基礎研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:手島恒明)は、賃貸オフィスの成約事例の各種データを活用し、オフィス市場における企業の移転動向などに関する共同研究を行っている。

本稿では、共同研究の一環として算出した「オフィス拡張移転DI」を中心に、2021年下期の東京オフィス市場の動向を概観する。オフィス拡張移転DIは、0%から100%の間で変動し、基準となる50%を上回ると企業の拡張意欲が強いことを表し、50%を下回ると縮小意欲が強いことを示す(*1)。

オフィス市況が調整局面を迎えるなか、オフィス拡張移転DIは低下基調で推移し、2021年第3四半期は51%となった。しかし、第4四半期は57%へと上昇に転じ、底打ちの兆しを見せている。以下では、2021年下期のオフィス成約面積の動向を振り返ったのち、オフィス拡張移転DIを業種別・ビルクラス別・エリア別に分析し、企業のオフィス移転動向を確認する。

東京都心部のオフィス市場動向
(画像=ニッセイ基礎研究所)

本稿は三幸エステート「オフィス ユーザー レポート」を加筆・修正の上、転載したものである。


(*1) 算出方法については、末尾の【参考資料1】「オフィス拡張移転DIについて」を参照。