アンカリング効果が活用されている場面
実際のビジネスシーンにおいて、アンカリング効果はどのように活用されているのだろうか。以下では、分かりやすい例を紹介する。
食品や日用品の割引シール
スーパーマーケットなどの小売店では、売れ残りを防ぐために割引シールが用いられている。新たな値札をつけるのではなく、多くの店舗はもとの価格をあえて残すことで、消費者に割安感を植え付けている。
また、「本来の価格」と「本日限りの割引価格」の両方が記載された値札も、アンカリング効果を狙ったものと考えられる。
「先着順」や「期間限定」の表示
数値以外のアンカリング効果としては、「先着順」や「期間限定」のようなプレミア感を演出する表示が挙げられる。
仮に特別な希少価値がなくても、「この機を逃すと購入できないかもしれない」と感じた消費者は、焦って商品を購入することがある。”衝動買い”という言葉が存在している事実は、まさにその根拠と言えるだろう。
スケジュールを遅めに伝えて、それよりも早く納品する
事前に伝えたスケジュールより早く納品する戦略も、アンカリング効果を狙った施策である。取引先に対して「この会社は仕事が早い」といった印象を与えることで、次の依頼につなげられる可能性があるためだ。
他にも「即日受け渡し」や「即日配達」のように時間に関する情報は、アンカーとして機能する場合がある。
アンカリング効果をマーケティングに活かす手順
アンカリング効果を最大限に発揮させるには、最初に提示する情報を慎重に決める必要がある。ここからは価格調整に活用すると仮定し、アンカリング効果をマーケティングに活かす手順を解説していく。
【STEP1】類似商品のデータ収集
多くの消費者は、自社商品の割引前・割引後の価格を比較するだけではなく、他社商品の価格も購入の判断材料にしている。つまり、他社商品の価格を大きく上回るようでは、アンカリング効果による恩恵を受けることはできない。
したがって、まずは類似商品の価格をできるだけチェックし、多くのデータを収集する必要がある。特にライバル商品のデータは必須となるため、調査には十分な時間をかけるようにしたい。
【STEP2】収集したデータの整理
次のステップでは、収集したデータを整理・分析していく。データの整理については、表計算ソフトやポジショニングマップなどを活用し、価格が高い順に並べ替えると分かりやすい。
価格データの整理が終わったら、次は自社商品の適正価格を考える。この金額をもとに「最初に提示する金額」や「割引後の金額」を決めることになるので、適正価格は慎重に設定しよう。
【STEP3】購入プロセスの分析
アンカリング効果を活用したマーケティングでは、「顧客への見せ方」もポイントになる。価格調整によって割安感をアピールできたとしても、商品の提供方法が悪いと気づいてもらえない恐れがあるためだ。
例えば、インターネット上で商品を販売する場合は、アクセス解析などによって目につきやすいページやスペースなどを確認する。
【STEP4】割安感をアピールする方法の検討
商品の割安感をアピールする方法は、前述で紹介したものだけではない。例えば、超高額商品を隣に陳列したり、他商品と組み合わせてお得なパックを作ったりなど、割安感をアピールする方法は多く存在する。
大きな売上へとつなげたいのであれば、その中から最適な方法を選ばなくてはならない。販売したい商品の特徴をしっかりと把握し、より魅力的に映るアピール方法を考えていこう。
【STEP5】計画の実行と検証
ここまで慎重に作業を進めたとしても、そのマーケティング手法が必ず成功するとは限らない。特に市場環境が変化しやすい業界では、頻繁に価格設定などを見直す必要がある。
したがって、マーケティング手法がある程度固まったら、計画を実行しながら以下のような検証を行うことが重要だ。
- アンカリング効果を活用する前と後の比較
- ほかの商品との売上比較
- 変化した購入プロセスの分析
これらの検証を行った結果、もし期待していた成果を上げられていない場合は、価格やアピールの方法を調整する必要がある。