アンカリング効果の活用には知識や検証が必要

アンカリング効果はさまざまな業界で活用されており、その効果性も多方面で実証されている。ただし、同じ効果を長続きさせることは難しく、そもそもアンカリング効果が発生しないケースもあるので、マーケティングに活用するのであれば十分な知識や検証が必要だ。

また、二重価格表示などのリスクも潜んでいるため、マーケティングに初めてとり入れる経営者は細心の注意を払うようにしよう。

アンカリング効果に関するQ&A

Q.アンカリング効果のメリットは?

A.相手に対して先に情報を提供し、相手の行動に影響を与えることができる点がメリットだ。特に相手が行動判断の基準を明確に持ち合わせていない場合、こちらから判断基準となる情報を示すことで相手はその情報を頼りにする傾向が強くなる。

例えば値引き前と値引き後の価格を同時に表示し、消費者にお得感を与えて購入に結び付けたり、納期を長めに設定しておいて実際は設定よりも短い期間で納品したりするといった具合だ。企業は、アンカリング効果を上手に活用することで自社の売上や信頼度をアップさせることができる。

アンカリング効果によって、企業側は自社の商品や状況そのものを大きく変えずに印象操作で現状よりも良い結果を得られる可能性があるのだ。ただし状況によっては、アンカリング効果が発揮されない場合もある。

例えば相手が購買などの行動に関して判断基準や知識があったり、アンカーとなる情報の設定が適切でなかったりする場合などである。アンカリング効果を活用するシーンは、アンカーとなる情報の設定について十分留意しなければならない。

Q.アンカリング効果の使い方は?

A.アンカリング効果をマーケティングに活用する場合、重要なのは「最初に提示する情報=アンカーの設定」である。アンカリング効果を商品の値引きに活用するとき、以下のようなプロセスでアンカーや値引き後価格の設定を行う。

(1)競合他社の類似商品の価格を集める
(2)ポジショニングマップなどを活用して自社商品と他社製品を分析し、自社の値引き価格やアンカーとなる価格を決める
(3)自社商品のこれまでの購入プロセスを分析し、値引き商品の提供方法やアピール方法を検討する

アンカリング効果を利用し、値引き商品を販売したあとは、以下のような検証を行うことが重要だ。

  • アンカリング効果の活用前後の売上比較
  • アンカリング効果を活用しなかった自社商品との売上比較
  • アンカリング効果による購入プロセスの変化の分析

分析の結果、期待した成果が上がらなければアンカーや値引き価格、アピール方法などを再検討する。

文・片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。

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