本記事は、樋口圭哉氏の著書『やりたいことを何でも叶える 目標達成のための手帳術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
唯一無二のパラレルキャリア
パラレルキャリアは、著名な経営学者P・F・ドラッカーが、著書『明日を支配するもの』のなかで提唱して広く知られるようになりました。
パラレルキャリアは「本業を持ちつつ第二の活動をすること」と定義されていますが、そんな定義はどうでもよいことで、最も大事なことは、パラレルキャリアとは、自分がやりたいことを叶えようとする中で積み上げられ、培われていくものだということです。
つまり、自分の人生を「豊かにしたい」「楽しくしたい」「何かの役に立ちたい」などの思いを実現しようとする中で得られる、誰にも真似できない唯一無二の経験です。
私の本業は、お伝えしているとおり研修講師です。
2年目社員や3年目社員のフォローアップ研修などのご依頼もいただく中で、とくに若い方々の研修で必ず行っていることがあります。
それは、およそ半年間の「キャリアの棚卸し」です。
やり方はこうです。
20分ほどの時間をかけて、これまでの半年間どんな経験をしてきて、そのときどんなスキルが身についたのか? 成功体験や失敗体験も含め、思い出しながら時系列で書き出してもらいます。
書き出し終えると、受講者の皆さんからこうした言葉が出てきます。
「毎日、同じようなことの繰り返しをしてきただけのように思っていたんですが、こうして書き出してみると、実はいろんな経験をしてきたことがわかりました」。
「こうして改めて見ると、入社当初はできなかったことができるようになっていて、自分の成長を確認することができました」。
「自分の歩んできた歴史みたいです」。
まさに皆さんの仰るとおりです。
自ら書き出しながら振り返ってみると、自分の歩んできた足跡が見えるようになります。そうすると自分の成長を確認することもできます。
これこそ、あなた自身の経験に基づいた唯一無二のキャリアです。
こうやって自分の引き出しにストックすることを、私は「キャリアの棚卸し」と言っています。
「キャリアの棚卸し」の効果は、それだけにとどまりません。
しっかりと棚卸ししておくことによって、応用可能なパターンが訪れたときに、引き出しを開けて使うことができるようになります。
これこそ、キャリアが生きる瞬間です。
私は、受講者の皆さんに、半年に一度で十分なので、時間を作って「キャリアの棚卸し」をするようにおすすめしています。
それと同時に、厳しい言葉かもしれませんが、こう言います。
「もし書き出そうとしても書けなくなったら、それはすでに、仕事から作業というルーチンワークに陥っている証拠です。そうなると、引き出しにストックできるようなキャリアなんてありません。ただ年数を重ねていくだけで、きっと仕事に対して楽しいという感覚もなくなっていることでしょう」。
さらに、続けて言います。
「仕事で獲得できるキャリアは限られています。それ以上に、プライベートの時間、やりたいことをやっている最中に経験したことで獲得できるキャリアの方が多彩で、それは、あなたの唯一無二のキャリアと言うことができます。これこそ、私はパラレルキャリアだと思います」。
皆さんにも是非、半年に一度、20分ほどの時間を設けて「キャリアの棚卸し」をすることをおすすめします。
書き出す内容は、このようなことです。
- 半年間で行動したこと
- その行動や経験によって得られたスキル
- その行動や経験によりプラスになったと感じる変化
- 成功体験と失敗体験
きっと、先ほどの受講者と同じように、様々な経験によって積み上げられたキャリアを実感することができるはずです。
究極の能力「やり抜く力」×「継続力」
正直なところ、私も若い頃は、何かを成し遂げられる人は「才能」があるからできるのだと思い込んでいた時期があります。
だからこそ、「どうせ無理」「できるはずがない」「だって、私にはそんな大した能力も才能もないし」なんて思ってしまうことは理解できます。
そんなとき、私の目に飛び込んできた文言があったのです。
やりたいことを何でも叶える究極の能力、それは「やり抜く力」×「継続力」。
さらに続けて、こうありました。
「才能」だけでは「達成」できない。
才能よりも大事なことは、やりたいと決めたことを「やり抜く力」と「継続力」であって、実現するための小さな行動を日々繰り返すことができるかどうかだというのです。
そんなとき、たまたま見ていたテレビ番組で「吸引力の変わらないただ1つの掃除機」で有名なダイソンの社長ジェームズ・ダイソン氏は、なんと5,000回も失敗して、あの掃除機を開発したという話を目にしたのです。
こうした情報が入ってきたことは、もはや「偶然」ではなく「必然」であると認識した私は、やりたいと思ったことを「やり抜く」ことを決意。そしてそれを実現するためには、コツコツ、淡々と続けるしかないと肚をくくりました。
そして、ダイソンの社長の話では「失敗」と表現していたことが、私の中では、成功する途中経過であって「通過点」という認識に変わった瞬間でした。
それこそ、私も「失敗」だと思い込んでいたような経験をたくさんしてきましたが、「通過点」という認識によって、何事もかけがえのない「キャリア」だという捉え方ができるようになったのです。
だからこそ「やり抜く」ことを決めました。
何だか、様々な物事に対する捉え方が、ゆるんだ瞬間でした。
私は、社会保険労務士の資格試験も2回落ちています。
美容室を立ち上げる3年前のことですが、代官山にエステサロンを出してかなりの借金を背負ったこともありました。
美容室も、オープン当初は、私の判断の甘さから集客が上手くいかなかったこともあり、スタッフに相当な苦労をかけてしまったこともあります。
学習塾も、当初の計画通りに立ち上げることができませんでした。
しかし、こうした「通過点」を経て、今、やりたいと思い描いていたことに近づきつつ、さらにその先の高みに上っていくような感覚が掴めています。
その理由は、やりたいことを「やり抜く」と決め、小さなことをコツコツ、淡々とやってきたから、そしてその中での「失敗」は「通過点」であって、すべてがかけがえのない「キャリア」だという捉え方ができるようになったからです。
私は、こうした「キャリア」が生きていることも、おかげさまで実感させていただいています。だからいっそう「やり抜く力」と「継続力」が大事であることを痛感し、「キャリア」を積み上げていく好循環が回っているのだと思います。
その好循環には、毎年多くの研修のご依頼をいただく中で、受講者の方々から嬉しい言葉をたくさんいただくこともプラスに働いています。
「先生の研修は、単なる知識ではなくて、経験に裏付けられたリアリティーがあるから、スッと入ってくるし、説得力が違う」。
「口コミ評価も高く、リピート率も高い美容室を実際に運営されているお話から、コツコツ丁寧をキーワードとして、当たり前のことを続けることの大切さについて、改めて考えさせられました」。
「先生は、研修中も変わらずOAKを続けている姿を直接見ているので、講義内容だけでなく、その姿勢から伝わってくる雰囲気があります」。
実は、このような嬉しい言葉も、私が欲しかった評価ですし、言ってもらいたかった言葉です。
評価も「やり抜く力」と「継続力」によってもたらされるという確証を得ました。
1974年茨城県鹿嶋市生まれ。成城大学経営学部卒。2001年株式会社西武に入社し、人材育成やチームビルディングによって業績を向上させ、7年間統括マネージャーを務める。2008年には独立起業し、研修・コンサルティング事業を開始。新入社員から管理職までを対象とした、人材育成と組織マネジメントを軸にした研修講師となる。2011年Dream Company株式会社設立。2012年には社会保険労務士試験に合格し、社会保険労務士事務所を開設。2017年には美容室「Hair Salon AMI」を開業。2018年には学習塾「松陰塾 綱島校」を開業。2020年一般社団法人ドリームマネージャーⓇ協会の顧問に就任。やりたいと願ったことは9割以上実現してきた体現者である。
著書に『やる気のないチームを劇的に変える3分の習慣』(秀和システム)、『リピート率9割を超える! 繁盛店スタッフの育て方』(アニモ出版)がある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます