AI(人工知能)や最新テクノロジーのサポートを受けた資産運用ができるとして、ロボアドバイザーを利用する人が増えている。ロボアドバイザーを活用すれば投資家の負担を抑えた投資ができる一方、使い方などを間違えると運用がうまくいかないケースもある。ロボアドバイザーでの投資における失敗例や、上手に利用するポイントをあらかじめ知ることで、将来に向けた資産形成を成功させる第一歩となるだろう。
1. ロボアドバイザー投資で失敗する人、4つの傾向
ロボアドバイザーは、AIや最新テクノロジーを活用した資産運用サポートサービスだ。金融工学に基づいたポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)の提案や、金融商品の売買、リバランス(投資資産配分の調整)を行ってくれる。略して「ロボアド」と呼ばれることもある。
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ロボアドバイザーは、運用アドバイスを得られることと、投資にかかる手間を抑えられる点が魅力だ。しかし中には、ロボアドバイザーを利用しても運用を失敗してしまう人もいる。ここではまず、ロボアドバイザー投資で失敗しやすい4つの傾向を確認しよう。
1.1. ロボアドで失敗する人の傾向1:自分の投資経験からロボアドの提案を変更してしまう
1つめは、投資経験が豊富でロボアドバイザーの提案を自己流に変更してしまうケースだ。ロボアドバイザーのアドバイスは、金融アルゴリズムに基づいて論理的に行われる。しかし、投資経験が豊富な投資家にとっては、納得がいかない提案だと感じることもあるだろう。そのようなときに、アドバイス通りではない自己流の投資をしてしまうと、投資の失敗につながる可能性がある。
・【失敗例1】コストを重視してロボアドの提案を変更したら、かえって損失を出した
具体的な失敗例としては、コストを重視しロボアドバイザーの提案を変えてしまうケースが挙げられる。確かに、コスト管理をしっかり行うことは運用を成功させるうえで重要だ。高すぎるコストは、利益を相殺する原因になるからである。
ロボアドバイザーが一見高コストな提案を行った場合、コストの重要性を知っている経験豊富な投資家ほど疑問を持つだろう。そのため、アドバイスとは異なる運用を行ってしまうのだ。
・【対策1】ロボアドの分析を信頼して、提案の通りに運用する
このような失敗をしないためには、ロボアドバイザーの提案通りの運用を徹底することが重要だ。コスト管理は重要であるが、そのコストが本当に割高であるかは、数字だけでは判断できない。
ロボアドバイザーの提案は、AIがさまざまな角度から情報を分析して行われる。一見高コストな提案も、投資家が気づいていない情報をしっかりと分析し、出されたものである可能性は十分ある。ロボアドバイザーでの運用を成功させるには、ロボアドバイザーの提案を信じて投資することがポイントだ。
1.2. ロボアドで失敗する人の傾向2:ロボアドの特徴を理解せず、なんとなく使っている
2つめは、利用するロボアドバイザーの特徴を理解せず、なんとなく運用してしまっているケースだ。この場合の失敗とは、投資家の投資スタイルや投資方針に合わない運用が行われたことで、納得がいかない運用結果を招くことである。
・【失敗例2】自分の運用方針に合わないロボアドを使い、損失を出した
具体例としては、投資家の運用方針に合わないロボアドバイザーを利用したことが損失の原因となるケースが挙げられる。
ロボアドバイザーは運用開始前にまず、利用者の投資経験やリスク許容度に応じたポートフォリオの提案を行う。では、同じ投資家が複数のロボアドバイザーで診断を受けた場合にすべて同じ結果が出るかというと、そうではない。ロボアドバイザーによって投資対象とするファンドが異なったり、運用方針が異なったりするため、提案されるポートフォリオに違いが出るのだ。
投資家のリスク許容度が低いにもかかわらず新興国を含む資産に投資するロボアドバイザーを選んだり、ハイリスクハイリターンを望むのに安定重視のロボアドバイザーを選んだりすると、望まない運用結果となる可能性がある。場合によっては、納得がいかない損失が発生するケースもあるため注意が必要だ。
・【対策2】ロボアドバイザーの運用方針やスペックをしっかり把握する
納得した運用結果を得るには、ロボアドバイザーのタイプや運用方針、スペックなどを把握し、投資家の投資方針に合ったものを選ぶことが重要だ。運用を一任できるロボアドバイザーだからこそ、内容をしっかりと理解したうえで契約するべきだろう。
1.3. ロボアドで失敗する人の傾向3:ロボアドバイザーを信用しすぎる
3つめは、ロボアドバイザーを信用しすぎるケースだ。ロボアドバイザーはAIが世界中の相場状況などを分析し投資判断を行うため、1.1で解説した通り、信頼して運用を任せることが望ましい。
しかし、提案内容や運用状況を確認することなく、運用を丸投げするのは避けるべきだ。ロボアドバイザーなら間違いないと過信すると、損失を招く可能性がある。
・【失敗例3】ロボアドは間違えないと過信しリスク分散を怠った結果、損失を出した
具体例としては、ロボアドバイザーを過信しすべての資産を投入したことで、投資資産のすべてで損失を被ってしまうことが考えられる。
資産を1つの投資先に投資した場合、利益が出る局面なら大きな利益を得られるだろう。しかし損失となる相場では、資産のすべてが減少する事態に陥ってしまう。ロボアドバイザーがいくら信頼できるからといって、資産のすべてを投資するのは、リスク管理の点から見てもやめるべきだ。
・【対策3】ロボアドも負けるときは負ける。リスク分散は鉄則
ロボアドバイザーを有効活用するには、あくまでも資産運用戦略の一手段として取り入れることが重要である。運用資産の一部をロボアド、その他を別の投資先、と振り分けるのだ。よりリスクを抑えた運用を目指すなら、ロボアドが運用対象としていないJ-REITや金投資を組み合わせてもよいだろう。また、積極的な運用を狙うなら、個別株投資を組み合わせるのも1つの方法だ。
1.4. ロボアドで失敗する人の傾向4:短期運用で利益を得たいのにロボアドを利用している
4つめは、短期での利益を目指す投資方針にもかかわらず、ロボアドバイザーを利用しているケースだ。ロボアドバイザーは基本的に、長期での安定運用による資産形成を目指す。そのため、短期で大きな利益をあげたい投資家には向かない運用方法なのである。これもロボアドバイザーの特徴を理解せず、なんとなく使っている例の1つといえるだろう。
・【失敗例】短期運用でハイリターンを狙いたいところ、機会損失してしまった
具体的には、ロボアドバイザーを利用したために機会損失してしまうケースだ。ロボアドバイザーで失敗したと感じるのは、損失を出した場合だけでなく、狙っただけの利益が出ないケースも考えられる。「すべての資金を個別株に投資していたら、もっと増えていたのに」とか、「利益を得る機会を逃した」と感じるなら投資家にとっては失敗ということになるだろう。
・【対策】ロボアドは長期運用を念頭に利用する
ロボアドでの運用を失敗としないためには、あくまでも長期運用のツールであることを理解したうえで利用することが重要だ。
短期で売買を繰り返すのは、ハイリスクハイリターンの投資手法である。そのため短期売買の投資スタイルをとる投資家であっても、資産の一部はリスクを抑えた運用に分散するべきだ。リスクを抑えた運用を行う資産にロボアドバイザーを活用すれば、利益損失といったストレスを感じることはないだろう。
2. ロボアドバイザー利用で失敗しないための5つの対策
ロボアドバイザーを利用した資産運用で失敗しないためには、5つの有効な対策がある。対策方法をあらかじめ確認し、ロボアドバイザーでの資産運用を成功させよう。
2.1. ロボアドで失敗しない対策1:長期保有を前提に運用方針や銘柄を決める
対策の1つめは、長期保有を前提に運用方針や銘柄を決めることだ。あわせて、仮に損失が出たとしても、あわてて解約せず、しばらく保有することも重要になる。
長期保有を前提にするべき理由は2つある。1つは、ロボアドバイザーでの資産運用が、複数の資産への分散投資で行われるからだ。
投資資産を分散すると、資産が減少するリスクを軽減できる一方で、リターンも小さくなる。そのため、まとまった運用成果をあげるためには、長期で保有し利益を積み上げることが必要となる。
もう1つは、長期運用により複利効果が大きくなるからだ。複利効果とは、利息や分配金を元本に組み込むことで、利息に対しても利息が生まれ、雪だるま式に利益が積み上がっていくことをいう。ロボアドバイザーは複利での運用を取り入れているため、長期で持つほど運用効率が上がり大きな利益を目指せるのだ。
目先の損失からあわてて解約すると、これらロボアドバイザーの資産運用の特徴と合わず、手数料のみかかってしまうことになりかねない。
2.2. ロボアドで失敗しない対策2:自分に合ったロボアドバイザーを選択する
対策の2つめは、自分に合ったロボアドバイザーを選ぶことだ。ロボアドバイザーには「アドバイス型」と「投資一任型」の2つのタイプがある。それぞれの特徴を知り、投資家に合った方を選ぼう。
・ロボアドバイザーのタイプその1「アドバイス型」に向いている人
アドバイス型では、ロボアドバイザーからポートフォリオの提案やリバランスの通知を受け、投資家自身が実際の運用(金融商品の売買)を行う。ほとんどが手数料無料のため、誰でも利用しやすい。そのため、アドバイス型には、以下の人が向いている。
・投資経験がある人
・ロボアドバイザーで運用しながら、自分の投資経験を積みたい人
・手数料を抑えたい人
投資経験がある人にとってアドバイス型は、専門知識に基づく提案として投資判断の参考にすることができる。また、投資家が自ら売買をする必要があるため、実際に投資経験を積み、投資を学びたい人に向いているロボアドバイザーだといえる。
・ロボアドバイザーのタイプその2「投資一任型」に向いている人
投資一任型では、提案されたポートフォリオやリバランスをもとに、実際の売買などの運用まで自動で行ってくれる。投資一任型に向いているのは、以下の人だ。
・はじめて資産運用を行う人、もしくは投資初心者
・できるだけ投資の手間を抑えた運用をしたい人
資産運用ははじめて、または知識も経験にも自信がない方には、すぐに投資を始めるにあたり、ロボアドバイザーは選択肢の1つとなる。投資は投資対象の選定だけでなく、その投資のタイミングも重要となる。投資一任型なら運用を自動的に行ってくれるので、売買のタイミングに悩む必要もない。ロボアドが提案する運用内容を確認しながら、投資の考え方や具体的な運用方法を学ぶこともできるだろう。
投資一任型は、手数料として投資資産の1%程度必要な場合が多い。これは、銘柄選定のための研究や運用を代行してくれると考えることもできる。投資の手間をできるだけ軽減したい投資家にとって魅力的なタイプだといえるだろう。
2.3. ロボアドで失敗しない対策3:リスク分散は必ず計画する
対策の3つめは、リスク分散を必ず計画することだ。1.3でも解説した通り、ロボアドバイザーでも運用に失敗するときはある。リスクを抑えた資産運用を目指すなら、リスク分散はしっかりと行うべきだ。
リスク分散には、大きく分けて2つの方法がある。1つは、資産分散だ。資産分散とは、投資先を1つに限定せず複数の資産に分けて投資することで、特定銘柄の値下がりなどにより資産が減るリスクを分散することである。
具体的には、好景気時に価格が上昇する株や不動産と、好景気で価格が下がり景気が低迷すると価格が上昇する債券を組み合わせて保有する、などである。値動きの性質が異なる2種類の資産を保有することで、どのような相場状況でも資産を大きく減らすことなく運用できるのだ。
もう1つは、時間分散である。時間分散とは、1つの銘柄を一定期間ごとに一定額ずつ買い増していく方法をいう。この方法では価格が高いときの購入口数は減り、価格が低いときの購入口数は増える。そのため、結果的に平均取得価格を安く抑えられる。
ロボアドバイザーはおおよそ、投資家の許容リスクに応じて資産分散し、また積立投資機能ももつ。そのため一定程度のリスク分散はロボアドバイザーにより完結できているともいえる。ただし、ロボアドバイザーも万能ではないことから、ご自身の資産のすべてをロボアドバイザーに投資するのではなく、他の投資との組み合わせも行うほうが、リスクはより低くできるだろう。組み合わせる投資においても時間分散を行い、よりリスク分散を計画するとよいだろう。
2.4. ロボアドで失敗しない対策4:ロボアドバイザーについて情報収集し、継続的に学ぶ
対策の4つめは、情報収集と学びを継続することだ。ロボアドバイザーを活用すれば、資産運用のサポートを受けられる。特に投資一任型では運用のすべてを任せられるため、資産状況や運用成果の確認をほとんどしない人もいるだろう。
しかし1.3で解説した通り、ロボアドバイザーのみで将来の資産形成が完結するわけではない。将来的により積極的な資産形成を目指すためにも、投資に関する情報を収集し学び続けることが重要だ。投資しているファンドの運用状況や、経済ニュースなどについて定期的にチェックするだけでも、投資家の金融リテラシーの向上につながる。これは、今後の資産運用に必ず役立つはずだ。
また、ロボアドバイザーのサービス内容やシステムに変更がないかも、運用中に併せてチェックしたい。金融とテクノロジーを合わせたサービスは、日々進化している。運用スタート後にも新たなサービスや取扱ファンドが加わることもあるため、定期的な情報収集はぜひ続けて欲しい。
2.5. ロボアドで失敗しない対策5:少額からスタートし、ロボアドバイザーへの理解を深める
対策の5つめは、少額から投資をスタートすることだ。ロボアドバイザーの仕組みやシステムの詳細は、実際に利用してみないとわからないこともある。利用に不安があるなら、少額からスタートし納得したうえで買い増していこう。
なお、最低投資金額はロボアドバイザーによって異なるが、一括投資なら10万円程度から投資が可能だ。自動積立なら、100円や1万円から投資できるものもある。
投資初心者にメリットの大きいロボアドバイザー。投資の学びの機会としての活用も
ロボアドバイザーは、AIと最新テクノロジーを活用した資産運用サポートを受けられるサービスだ。ポートフォリオの提案から実際の運用まで一任できるため、投資初心者や投資にかける時間がない人でも簡単に資産運用をスタートすることができる。
ロボアドバイザーでは金融工学に基づいた論理的な運用が行われる。しかし、絶対に失敗しないわけではない。ロボアドバイザーでの運用を成功させるには、ロボアドバイザーの特徴を知り、投資家に合ったものを選ぶ必要がある。あわせて、ロボアドバイザーを利用した投資であっても、資産分散や時間分散といったリスク管理の意識を投資家自身が持っておくことも重要だ。
ロボアドバイザーは、少額からでも運用可能である。個人ではなかなか得にくい金融工学の理論やAIによる分析も利用できる商品も多く、資産運用の味方になってくれる可能性は高い。リスクは投資家としてしっかり理解し、将来に向けた資産運用をスタートしてみてはいかがだろうか。