本記事は、大西みつる氏の著書『はじめて部下を持った人のための 超リーダー力』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

×リーダーシップは先天的な才能 ○リーダーシップは後天的に開発できる

リーダー
(画像=PIXTA)

自分自身のリーダーシップを育みたい――。

私はこれまで数多くのリーダーの能力開発に携わってきました。多くのリーダーが今よりも「もっとリーダーシップを発揮したい」「リーダーシップを学びたい」と願っています。にもかかわらず、人は大きく変われません。

リーダーシップを学習していくためには、次の4つのポイントを押さえていることが大切です。

(1)リーダーシップについて知る、理解する(基本を押さえる)
(2)自分のことをよりよく理解する(自己理解と他者理解)
(3)組織運営上好ましくない自分の行動を修正する、自己表現を変える
(4)経験で学習する

リーダーシップを体得していくためには、継続的に行う必要があります。現状と比べて、やみくもに大きく変わろうとしすぎたり、学ぶ意欲が高すぎると、今までのやり方をガラッと変えすぎてしまい、上手くいきません。あれもこれもとやりすぎて、自分で自分のことを見失ってしまう方をたくさん見てきました。

例えば、ダイエットを効果的、効率的にやろうと、腹筋マシーンを購入してみたものの、3日坊主で終わってしまい、ダイエットが成功しなかったような経験は、誰もがお持ちなのではないでしょうか。「継続は力なり」。シックスパックの腹筋は簡単には手に入りません。

リーダーシップは、日々の経験の積み重ねでジワーっと、じっくり鍛えられていくものです。それだけに、リーダーシップについての基本とその育み方をきちんと理解しておくことが近道なのです。

「大きく変えようとせず、小さくコツコツ」と取り組むことで、ムリもムダもない

今よりも上手くやるためには、「やり方」を変えることが必要です。はじめて部下を持ったリーダーは、リーダーシップの発揮の仕方がわからず、今まで一緒に働いた上司のリーダーシップを真似ることから始めている方が大半です。

私自身もはじめて部下を持ったとき、具体的にどうしてよいのかわからずにいました。本記事を読んでくださっている方も、私と同じ経験をされているのではないでしょうか。基本は万人に共通します。リーダーシップの基本理論を理解することは、リーダーシップを発揮していく上で効果的です。

ビジネスにおけるリーダーシップの研究は、業績に繋がったり、イノベーションを起こして新たな価値の提供を可能にしたりするなど、ビジネスパフォーマンスの向上という点からも、盛んに行われています。

元々は、生まれ持った特性や才能の1つだと考えられてきましたが、研究が進むにつれ、リーダーシップは開発できるものという考え方が主流となり、今に至ります。

リーダーシップは、後天的に開発できるもの

私は、「基本を見直す」、「小さく変える」、「できることからやる」の3つの視点で小さな修正を重ねることで、自分自身のリーダーシップが育まれていくことを、企業研修の参加者に声を大きくして伝えています。

私自身、今でこそ、多くのビジネスパーソンにリーダーシップとその行動について指導したり、コーチングしたりしていますが、はじめてリーダーになった30代の頃を振り返ってみると、ひどいリーダーシップで、たくさんの部下に迷惑をかけてきたと思います。小さな修正の繰り返しで辿り着いた今となっては、「相当やり方を変えて、今に至る」というのが本音のところです。

はじめて部下を持ったリーダーは、大きく理想を掲げすぎてそのギャップに苦しむのではなく、まずは小さく、小さく自分を変化させていくことから始めてください。

POINT
リーダーシップは、後天的に開発できる。「基本を見直す」、「小さく変える」、「できることからやる」で始めよう。

1-1
(画像=『はじめて部下を持った人のための 超リーダー力』より)

×グイグイと引っ張ることがリーダーシップ ○人の強みを認め、活かすことがリーダーシップ

私は、年間150日、約4,500人以上のビジネスリーダーと向き合う日々を送っています。はじめてリーダーになった方々は、チームメンバーを自分がグイグイと引っ張っていかねばならないと思い込んでいる様子が窺えます。また、部長職、経営者の方々も同様に、リーダーシップを「引っ張る・まとめる」という「強さ」で表現される方が多いと感じています。

リーダーシップの定義は、研究者の数だけ、実務家の数だけありますが、どの定義においても共通しているのは、「影響力を及ぼす」ということです。影響力を及ぼすには、「人と人との関係性が最も大切」であり、信頼関係がなければ、部下はリーダーの影響力を素直に受け入れてくれません。もちろん、「指示命令と恫喝」という強制的なやり方はありますが。

リーダーとは、「人の強みを認め、活かせる人」のこと

私は、はじめてリーダーになった方に指導するとき、リーダーシップは目標達成や業績向上など、単に結果を指すものではないことを伝えています。日本においては、カリスマ型リーダーのリーダーシップを取り上げすぎる傾向が強く、リーダーシップに対する誤解を生んでいるのではないかと、私は強く感じています。

「リーダーシップ」の本来の定義とはどのようなものでしょうか。

・リーダーシップとは、1人ひとりが発揮すべきもの
・リーダーシップは、自分らしさの発揮そのもの。自分軸が大切
・リーダーシップとは、今置かれている立場や役割でベストを尽くすこと
・リーダーシップとは、人を「引っ張る・まとめる」というよりも、メンバーの良いところをチョイスして、それを活かすこと
・働く仲間を本気にさせる言動すべてがリーダーシップに通じる

はじめて部下を持ったリーダーたちに、きちんとリーダーシップの意味を腹落ちさせていくと、「引っ張る・まとめる」という固定観念と呪縛から解放されて、「気分が楽になりました」という気づきの言葉が出てきます。

変化のスピードが速い今の時代、指示されたことだけを行うに留まらず、メンバーそれぞれが自分で考え、自分の判断で行動することが求められています。仕事課題の解決にしても、能力の向上にしても、将来のキャリアにしても、働く仲間との協働にしても、単にリーダーからの指示を受け、リーダーの言うとおりに仕事を行うだけでは、時代の変化に対応できません。

リーダーシップとは、人の個性や強みを認め、引き出し、その人の強みを活かすことに他なりません。

部下からの提案、働きかけ、積極的な言動を引き出すなど、職場メンバー全員がリーダーシップを発揮し、チームワークが形成できれば、最高のチームを作ることができます。

POINT
カリスマ型リーダーのスタイルを真似る必要はない。メンバーのどんな行動を引き出せれば仕事がはかどるのかに着目しよう。

はじめて部下を持った人のための 超リーダー力
大西みつる(おおにし・みつる)
株式会社デザインリーダーシップ代表取締役CEO、立命館大学経営学部客員教授。1961年大阪府生まれ。立命館大学経済学部に入学し、硬式野球部に所属。卒業後、本田技研工業(株)に入社。ホンダ鈴鹿硬式野球部でプレーした後、戦略マネージャーとして都市対抗野球大会優勝に導く。その後監督を経験しチーム作りに大苦戦。社業に専念してからは、日米双方で人材開発や管理職のリーダーシップ開発に取り組む。自らの体験からリーダーシップ開発の重要性を強く感じ、働きながら筑波大学大学院ビジネス科学研究科で経営とリーダーシップを学ぶ(経営学修士)。2009年、企業のリーダー育成トレーニングと企業変革を支援する株式会社ヒューマンクエストを設立。大手民間企業を中心に年間延べ4,500人以上のリーダーと向き合う日々を送っている。2022年、副業メンバーと共に自分価値の拡充を図るサードプレイスラーニングを行う株式会社デザインリーダーシップを立ち上げ、「自分にリーダーシップを!」のビジョンに向けて活動中。著書に『ビジネス×アスリート・トレーニング式 最高の自分のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『結果を出す人は「修正力」がすごい!』(三笠書房)等。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)