本記事は、大西みつる氏の著書『はじめて部下を持った人のための 超リーダー力』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

×チームはリーダーが指示をすれば動く ○チームは「対話」を通じて成長し動き始める

業績アップに欠かせない チームの団結力向上講座 融資増強編【第19回】
(画像=PIXTA)

私は組織開発の専門家です。「組織開発(Organization Development)」とは、人と人との関係性に働きかけ、組織の成長と発達を促す手法です。個人が持っている能力やスキルが上手く発揮されなければ、いくら優秀なメンバーがそろっていても、組織の生産性向上を実現することは難しいものです。

はじめてリーダーになった方向けの企業研修やワークショップでは、必ずと言ってよいほど、チーム作りに苦労しているリーダーの姿があります。「以前はそんなやり方をしていなかった」「リーダーが変わると言うことが変わる」など、チームメンバーが反発的な態度を取るので、仕事が上手くいかないという悩みです。

新しくリーダーになった人は、前任のリーダーと比較されていることを知る

私がこのことをお話しすると、はじめてのリーダーは、大きな気づきを得られます。

当たり前と言えば当たり前のことですが、あなたは前任のリーダーから引き継ぎを受けて、新たにリーダーという仕事を任されています。しかし、はじめてのリーダーは、チームを「点」で眺めており、「線」で眺めていないのです。

ここで言う「線」とは、新規に立ち上がったチーム以外のチームや部署は以前から存在していて、流れの中であなたがリーダーになったということです。前任のリーダーが長年にわたり仕事の采配を振るってきたのですから、前任のリーダーの手垢がついています。チームの志向やメンバーの行動はリーダーの影響を受けていますので、組織風土として根づいています。

新しくリーダーになった人は、やる気満々でチェンジとばかり、今までのやり方ではなく、自分好みの新しいやり方をチームメンバーに要求します。メンバーに要求すること自体は悪くないのですが、チームメンバーが今までのやり方や考え方とは違うリーダーの言動をすぐに受け入れらないのです。人はそんなに簡単に変われません。

はじめてリーダーになった人の多くは、自分が指示を出せば、メンバーは自分が意図しているように動くと思い込んでいる様子が窺えます。そして、リーダーとしての自分の理想と上手くいかない現状とのギャップで戸惑っています。

ここで必要なリーダーの行動は、チームを作り直すことです。

組織開発の理論の1つに「チーム・ビルディングの法則」というものがあります。

チーム・ビルディングとは、「メンバーが思いを1つにして、1つのゴールに向かって進んでいける組織作り」のことです。

もう少し言葉を補うと、「メンバーが主体的に自分らしさ、多様性を発揮しつつ、相互に関わりながら一丸となって共通のゴールを達成しようとチャレンジする、そうした組織を作るための取り組み全般」と言えます。

では、リーダーは、どのようなことを意識して、行動していくべきでしょうか。

チーム・ビルディングに関する分析や理論は数多くありますが、心理学者であるB・W・タックマンが考案した「タックマンモデル」はとても参考になります。これは、チーム・ビルディングによるチームの状態を4段階で表現したもので、はじめてリーダーになった方にご紹介しています。

タックマンモデルでは、チームは図の通り、4つのプロセスをたどって成長していくことを示唆しています。チームは形成期、混乱期を経て、統一期、機能期と進化していくと表現しています。

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(画像=『はじめて部下を持った人のための 超リーダー力』より)

はじめてリーダーになった人には、他の部署から異動してきた人や、同じ職場で昇格し、リーダーの役割を与えられた人がいます。他の部署から異動してきた場合は、今までいるチームにメンバーにとってはリーダーが「新参者」となりますし、同じ職場で昇格した場合は、チームメンバーから「いきなりリーダーになって、何を張り切っているの……」と妬み、嫉みを感じられている場合もあります。職場にはメンバーの様々な感情が入り乱れているのです。

はじめてのリーダーはぜひ、チーム・ビルディングの法則を基に、チームを作り直すことから始めてください。

このモデルにおけるチームリーダーが果たすべき役割は、各プロセスをスピーディに進行させ、Performing(機能期)の成果を最大化するよう導くことです。

新しいリーダーがチームに参入したタイミングからチームは「形成期」を迎え、メンバーとの関係性を高めていく必要があります。

まずは、1人ひとりに声かけし、仕事を進める上で苦労していることや将来に向けてのなりたい自分、自分の得意なことなどについて、双方向のコミュニケーションを行い、メンバーのことをよりよく知ることから始めてください。

混乱期は必ず起こります。リーダーは目標達成と成果創出のために仕事のやり方を改善し、改革することも求められていますので、どうしても何かを変えなくてはなりません。変化することは成長に繋がるからです。

しかし、リーダーがよかれと思って変化を求めても、今までの考え方ややり方が習慣となっているメンバーの言動は、なかなか変わりません。リーダーはそのことを知り、丁寧に意識や行動を修正していくことが大切です。

混乱期に最も大切なことは、圧倒的なコミュニケーションの量です。ここで肝心なのは、一方的なトップダウンの指示よりも、リーダーとメンバーとの話し合いから得られる共感です。

時間がないと言わず、対話の時間を設けて繰り返し対話することで、混乱期から統一期、機能期に進化していくことが可能となります。

チームは段階を経て、成長していく(成長させていく)必要があるということです。

スポーツチームでよく言われるワンチームの状態を作り、チームとして成果を創出するためには「上司、部下の垣根を超えた本音と本質のガチンココミュニケーション」が大切なのです。

POINT
チーム・ビルディングの法則でワンチームを作ろう

はじめて部下を持った人のための 超リーダー力
大西みつる(おおにし・みつる)
株式会社デザインリーダーシップ代表取締役CEO、立命館大学経営学部客員教授。1961年大阪府生まれ。立命館大学経済学部に入学し、硬式野球部に所属。卒業後、本田技研工業(株)に入社。ホンダ鈴鹿硬式野球部でプレーした後、戦略マネージャーとして都市対抗野球大会優勝に導く。その後監督を経験しチーム作りに大苦戦。社業に専念してからは、日米双方で人材開発や管理職のリーダーシップ開発に取り組む。自らの体験からリーダーシップ開発の重要性を強く感じ、働きながら筑波大学大学院ビジネス科学研究科で経営とリーダーシップを学ぶ(経営学修士)。2009年、企業のリーダー育成トレーニングと企業変革を支援する株式会社ヒューマンクエストを設立。大手民間企業を中心に年間延べ4,500人以上のリーダーと向き合う日々を送っている。2022年、副業メンバーと共に自分価値の拡充を図るサードプレイスラーニングを行う株式会社デザインリーダーシップを立ち上げ、「自分にリーダーシップを!」のビジョンに向けて活動中。著書に『ビジネス×アスリート・トレーニング式 最高の自分のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『結果を出す人は「修正力」がすごい!』(三笠書房)等。

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