本記事は、大西みつる氏の著書『はじめて部下を持った人のための 超リーダー力』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

×クローズドクエスチョンで問いかける ○オープンクエスチョンで問いかける

質問
(画像=CORA/PIXTA)

結果を出すリーダーは、質問上手です。質問する力はビジネスにおいて、最大の武器となります。イノベーションを起こすリーダーほど、自問する力、他人に問いかける力が高く、本質的な問いを投げかけていきます。お客様に新しい価値を提供しようと考えるのであれば、日常の当たり前の仕事やサービスに対して、

(1)建設的、かつ批判的な目を持ちながら(常識を疑う)
(2)問いかけることで、既存の意味から新しい意味を考える
(3)(1)と(2)を通して、脳をフル回転させていく
(4)今度は仲間と問いかけ合いを繰り返して、さらに創造力を膨らませる

ことを実践してください。これにより人と組織の創造のスイッチが入り、新たな発想が広がり、ビジネス上の課題の本質的な原因が見つかります。質問する力は自分のキャリアや人生をも変化させることができます。

私は、コーチングの専門家です。企業の社長や経営陣、部長クラスの方とエグゼクティブコーチングを行っています。

私がコーチングを学んだのは、今から25年前、社会人野球のマネージャー、監督をしていた、はじめて部下を持ったタイミングです。それから、「問いかける」ということを探求してきました。多くのリーダーと接してきてわかったことは、結果を出すリーダーは、質問する力が高いということです。

コーチングとは、双方向の対話を通して、学習を支援し人を動機づけ、課題を解決していくための行動を引き出すことです。人の潜在能力や主体性を発揮させるためのリーダーシップ(影響力)の一技術と言えます。

良いリーダーは、良いコーチであり、双方向の対話を重ねるために、質問をします。

例えば、「仕事の生産性を上げる」ことを目的に問いを考えるならば、

・今、集中してやるべき仕事は何か?
・仕事を進める上で、障害になっていることはどんなことか?
・やらなくても良い仕事は何か?
・今週中に必ず仕上げる必要がある仕事は何か?
・その仕事は本当にやる必要があるのか?
・その仕事を放置していたら、どんな問題が起こるのか?

など、たくさんの質問レパートリーが出てきます。

これらの問いを重ねていくことで、今の状況が整理でき、やるべきことが何かに気づくことができます。気づけば、あとは実行あるのみです。仕事の生産性を高めるためには、今、最もやるべきことに集中し、余計なことはやらない。その選択と行動で結果が変わります。

数多くの会社から「仕事の生産性をどのようにしたら上げられるのか」と質問されます。その際、「なぜ、生産性を上げる必要があるのですか」と尋ねると、明確な答えが返ってこないことが多く、生産性を上げることの意味や目的が不明確なまま、行動に繋がっていないケースが散見されます。

閉塞感のある現代社会とビジネスの現場において、その状況を突破していくためには、問いかける力を強め、思考を強化していくことが求められています。

質問力を高め、現状を変え、突破する思考を身につける

◉オープンクエスチョン

オープンクエスチョンとは、「YES or NO」の2択で答えられない質問を指します。「自由回答型質問」と言えます。

6-1
(画像=『はじめて部下を持った人のための 超リーダー力』より)

例えば、「あなたが今困っていることは何?」などで、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」といった「5W1H」から始まる質問です。

(1)あなたが仕事を進める上で上手くいかないと思うことはどんなことですか?
(2)この問題の解決のためにどんな策がありますか? 3つ挙げてください。
(3)いつ、お客様にこの企画を提案しますか?
(4)経営会議でこの企画を通すために、さらに追加した方がよいと思う情報はどんなものですか?
(5)上手くいかなかったのはなぜですか?
(6)私たちがやり方を変えなくてはいけない理由はどこにありますか?
(7)お客様が求めている新しい価値とはどういうことですか?

(5)の質問は、「なぜ」という疑問詞を使っています。「なぜ」を使う場合、文の後ろに持ってきた方が、問い詰められているように感じにくいようです。「なぜ上手くいかないのか?」と「上手くいかない理由はなぜか?」。少しのニュアンスの違いですが、詰問にならないよう工夫することで、部下から上手くいかなかった原因を能動的に話してもらうことができます。すると、気づきが高まり、現状が整理され、解決行動に移りやすくなります。そのようなちょっとした部分に気を使えることは、センスだと私は考えています。

(7)の質問は、フィロソフィカル(本質的・哲学的)な質問です。物事の本質に気づくためのオープンクエスチョンとなります。

◉クローズドクエスチョン

オープンクエスチョンの逆の概念として、クローズドクエスチョンがあります。

「YES or NO」の2択で答えられる質問です。クローズドクエスチョンは、「YES or NO」の2択となるために、詰問と相手にとられやすい傾向があります

「何かありますか?」と部下に尋ねるリーダーがたくさんいます。この質問は、部下からしたら答えやすいでしょうか。日本語としても中途半端な文ではないでしょうか。

人は思考し、創造しています。その特性を最大限に引き出すカギは「質問する力」だと私は考えています。

POINT
はじめて部下を持つリーダーは問いかける力を身につけよう。

はじめて部下を持った人のための 超リーダー力
大西みつる(おおにし・みつる)
株式会社デザインリーダーシップ代表取締役CEO、立命館大学経営学部客員教授。1961年大阪府生まれ。立命館大学経済学部に入学し、硬式野球部に所属。卒業後、本田技研工業(株)に入社。ホンダ鈴鹿硬式野球部でプレーした後、戦略マネージャーとして都市対抗野球大会優勝に導く。その後監督を経験しチーム作りに大苦戦。社業に専念してからは、日米双方で人材開発や管理職のリーダーシップ開発に取り組む。自らの体験からリーダーシップ開発の重要性を強く感じ、働きながら筑波大学大学院ビジネス科学研究科で経営とリーダーシップを学ぶ(経営学修士)。2009年、企業のリーダー育成トレーニングと企業変革を支援する株式会社ヒューマンクエストを設立。大手民間企業を中心に年間延べ4,500人以上のリーダーと向き合う日々を送っている。2022年、副業メンバーと共に自分価値の拡充を図るサードプレイスラーニングを行う株式会社デザインリーダーシップを立ち上げ、「自分にリーダーシップを!」のビジョンに向けて活動中。著書に『ビジネス×アスリート・トレーニング式 最高の自分のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『結果を出す人は「修正力」がすごい!』(三笠書房)等。

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