本記事は、大西みつる氏の著書『はじめて部下を持った人のための 超リーダー力』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
×ミーイズムで物事を捉える ○ユーイズムで物事を捉える
ミーイズムとは、身近な興味や関心を最優位に置き、直接利害関係の及ばないものや社会的な事柄には目を向けないという、自己中心の考え方を言います。対して、ユーイズムとは、相手の立場で物事を考える、ということです。
自分の考え方に軸を持つことはもちろん大切ですが、聴く耳を持つ、相手の立場で物事を考えるということも非常に大切です。
リーダーシップを学んでいくと必ずと言ってよいほど、サーバントリーダーシップ(奉仕型リーダーシップ)が良いだの、オーセンティックリーダーシップ(自分らしいリーダーシップ)が良いだのと、リーダーシップ研究における「タイプ」で語られることが多いと感じています。
私は大学院でリーダーシップを研究し、現在も立命館大学経営学部の客員教授として大学生にリーダーシップを理論としてお伝えしています。実務家であるビジネスパーソンにとって大事なことは、リーダーシップの本質は何かということをしっかり押さえておくという一語に尽きます。本質とは、「哲学」でもあります。
リーダーシップとは、一言で言うと、「影響力」のことです。
リーダーシップの研究論文はたくさんありますし、リーダーシップの定義は研究者の数だけ、実務家の数だけあると言えますが、どの定義においても共通していることは、「人から人への影響力」ということです。
影響力ですので、リーダーの言動で相手に伝わりますし、言動を支えている根っこの部分である自分自身の魂レベルが、ミーイズムで物事を捉えるのか、ユーイズムで物事を捉えるのかで、影響力の源である魂レベルのエネルギーが全く違うものになります。
私がホンダで教えていただいた哲学の中に、次の言葉があります。
私は若い社員に、相手の人の心を理解する人間になってくれと話す。 それが哲学だ。
本田宗一郎
独りよがりにならないためにもユーイズムで物事を捉えることが大切です。
私自身も独りよがりになるときはもちろんありますし、頑固な性格から自分の意見を曲げたくないと行動してしまうことがあります。自分を客観視するために、中立的にメンバーの意見や感情にそっと寄り添い、共感し、部下からのフィードバックをもらうことで、独りよがりにならずにすみます。他人の意見は耳の痛いものですが、ユーイズムで耳の痛いことを言ってくれる部下の存在は頼もしいものです。
私は、自分の意見や考えは絶対だと考え、それを貫こうとするリーダーをたくさん見てきました。正しい判断をするとき、ミーイズムなのか、ユーイズムなのか、違う言い方をすると、利己の心か、利他の心かで、ビジネスが成功するかどうかが分かれます。私自身、ミーイズムで取り組んだとき、上手くいかない経験をたくさんしてきました。
名経営者である、京セラ・稲盛和夫氏は、次のように言っています。
私たちの心には「自分だけがよければいい」と考える利己の心と、「自分を犠牲にしても他の人を助けよう」とする利他の心があります。利己の心で判断すると、自分のことしか考えていないので、誰の協力も得られません。自分中心ですから視野も狭くなり、間違った判断をしてしまいます。 一方、利他の心で判断すると「人によかれ」という心ですから、まわりの人みんなが協力してくれます。また視野も広くなるので、正しい判断ができるのです。 より良い仕事をしていくためには、自分だけのことを考えて判断するのではなく、まわりの人のことを考え、思いやりに満ちた「利他の心」に立って判断をすべきです。
(出所:稲盛和夫オフィシャルサイト)
実務家である(あった)本田宗一郎氏と稲盛和夫氏の共通点は、「哲学」を持っているということです。リーダーシップには、理論以上に「哲学」が大切と言えます。
POINT 本質的な部分である「哲学」を先人のリーダーは大切にしている。誰のために、何のために自分のリーダーシップを使うか考えよう。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます