本記事は、菅谷信雄氏の著書『あなたの経営力10倍アップの極意 大激変の時代を勝ち抜く最強の経営の羅針盤』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「人生とは『今日1日』の積み重ね、『いま』の連続」
プレジデント誌9月18日号(2020年)に京セラの稲盛和夫名誉会長特集として、ラストメッセージが掲載されていました。
京セラ、第二電電DDIを上場企業に育て上げ、JALの経営再建で経営手腕を振るわれた稲森語録には学ぶことが多いです。
プレジデント誌読者から稲森語録でダントツ1位は「人生とはその『今日1日』の積み重ね、『いま』の連続にほかなりません」でした。
私にもこのメッセージはずしりと重みがあります。
総合商社三井物産に25年勤務した私の場合は、10か所の職場を経験させていただいたので、いつ何をやっていたのかを明確に思い出せます。各職場で貴重な経験をさせていただきました。この25年間の全力が自分の力になっています。
三井物産を退職してから早23年半経ちます。既に三井物産在籍中とほぼ等しい年月を過ごしたことになります。こちらも全力で駆け抜けてきました。
三井物産時代の総合的な力、基礎的な力の上に、今大きな花を咲こうとしている息吹を感じています。
「リーダーは自己犠牲を払う勇気を持っていなければなりません」
これは私が2番目に響いた言葉です。
私自身中学生の頃からリーダーを務めてきました。
社会人の今でもリーダーをしています。
現在は、月に10回以上ズームを中心にセミナーの講師、ミーティング、勉強会のホスト役を務めています。参加者は数人から多いときは100名以上になります。そこには責任が伴います。
これらのセミナーはすべて無料です。そこには自己犠牲が伴います。
自分自身そうは思っていませんでしたが、稲盛語録からはっと気づかされました。
ズームのホスト役を始めたのはまだゴールデンウィーク開けでした。
最初は1人から始め、現在では100名以上の大人数をこなすことができるようになりました。知らないうちに力がついていていることに気づきました。
「利他という徳は困難を打ち破り、成功を呼ぶ強い原動力となる」
これは3番目に響いた言葉です。
稲盛和夫さんが創業した第二電電は、私が三井物産在職中に創業したテレマーケティングの新会社「株式会社もしもしホットライン」が一番お世話になった企業です。
稲盛和夫さんの直弟子だった千本倖生専務には大変お世話になりました。今回のプレジデント誌にも千本さんの記事が掲載されていました。
私は、「もしもしホットライン」創業時に「使命感と4つの誓い」を作成しました。
4つの誓いの1番目に、「私たちはお客様を大切にし、お客様から信頼されるよう絶えず心がけます」を掲げました。これを毎朝始業時に社員全員が唱和しています。
その精神は利他です。
当時のテレマーケティング業界はコスト競争でした。いかにクライアントに低コストでカスタマーセンターを受注するかでしのぎを削っていました。
そのために、マルチクライアント制といって、1人のオペレーターが複数の企業を担当してコストダウンを計っていました。
これに対抗して、「もしもしホットライン」ではシングル・クライアント・シングルルーム制をとりました。コストより質を重視したカスタマーセンターづくりでした。当然業務委託料は高くなります。
具体的には、1人のマーケッターが1企業の専任となります。時間の経過と共に、学習効果が働き、お客様企業のかゆいところまで手が届くようになります。
また、「もしもしホットライン」では、エンドユーザーの声を直接聴けるので、毎月マーケット情報としてまとめ、お客様企業にレポートしています。エンドユーザーの生の声として高く評価されました。
このほか、「もしもしホットライン」ではクライアントとか顧客という用語の代わりにお客様企業という呼び方をしています。この用語は、現在でも株主短信等引き継がれて使用されています。
もう1つ、そのお客様企業専用の部屋で専用のマーケッターが担当するので、お客様企業の機密保持が守られます。
当時は、顧客の機密保持は今ほど厳しくありませんでした。それを時代に先駆けて導入しました。
「もしもしホットライン」創業時には、幾多の困難と出逢いました。しかし、利他の精神がお客様企業との信頼関係を構築し、「もしもしホットライン」を業界大手へと成長させていった原動力の1つになったと確信しています。
使命感と4つの誓いは現在も始業時に社員全員が唱和し、私の精神的遺産として受け継がれているようです。
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