老後のマネープランを立てる上で、「年金をいくらもらえるか」は最低限必要な知識といえる。ねんきんネットを使えば、将来の受給額を予測できる。ところで、老後の年金にも税金や社会保険料がかかることをご存じだろうか。今回は、年金にかかる税金について解説する。

年金にかかる税金

年金にも税金がかかる ? 老後のマネープランが狂わないためのポイント
(画像=takasu / stock.adobe.com)

国民年金、厚生年金、公務員の共済年金など、一定の年齢を迎えてから受け取れる年金には所得税 (復興特別所得税を含む) と住民税がかかる。所得税や住民税を計算する際の所得区分は雑所得 (公的年金等) で、その金額は年金の収入金額から「公的年金控除」を差し引いて計算する。

【雑所得 (公的年金等) の計算式】
年金の収入金額-公的年金控除額

「収入金額」は、税金などが差し引かれる前の1年分の年金額だ。所得税や住民税は、上記の計算式で算出した雑所得 (公的年金等) から所得控除 (社会保険料控除、基礎控除など) を差し引いた額に、それぞれの税率をかけて計算する。この他に給与や不動産賃貸収入などの所得があれば、それらと年金の雑所得を合算してから所得控除を差し引く。

公的年金控除とは

公的年金控除は、年金の税負担が大きくなりすぎないように設けられた控除である。
控除額は年金を受け取る人が65歳以上かどうか、また雑所得 (公的年金) 以外の合計所得の金額によって変わる。
以下の表は、雑所得 (公的年金) 以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合の公的年金控除額だ (令和2年分以降) 。

 年金の収入金額公的年金控除額
65歳未満130万円未満60万円
130万円~410万円未満収入金額✕25%+27万5,000円
410万円~770万円未満収入金額✕15%+68万5,000円
770万円~1,000万円未満収入金額✕5%+145万5,000円
1,000万円~195万円
65歳以上330万円未満110万円
330万円~410万円収入金額✕25%+27万5,000円
410万円~770万円未満収入金額✕15%+68万5,000円
770万円~1,000万円未満収入金額✕5%+145万5,000円
1,000万円~195万円

65歳以上になると、330万円未満の年金額に対する税負担が大幅に軽減される。
例えば、年金240万円の人は65歳になるまでは152万5,000円 (=240万円-240万円×25%+27万5,000円) の雑所得をもとに税金を計算するが、65歳以上はそれが130万円になる。
所得金額が低いほど、年金にかかる税負担は小さくなる。65歳以上かどうかは、その年の12月31日時点の年齢で判定される。ちなみに、そもそも「65歳以上でしか年金を受け取れない人」は少なくない。65歳になる前にもらえる公的年金といえば「特別支給の老齢厚生年金」だが、これは受給開始年齢が段階的に引き上げられている。ある時点 (※) より後に生まれた人は、これを受け取ることはない。
(※) 男性:昭和36年4月1日、女性:昭和41年4月1日

年金の税金は年金から天引きされる

1年間の年金の収入金額が下記の方は、年金にかかる所得税・住民税が年金支給額から源泉徴収・特別徴収 (天引き) される。

・65歳未満…108万円以上
・65歳以上…158万円以上

源泉徴収とは、年金等にかかる所得税を一定のルールで計算し、それを支給時に天引きする制度のことだ。市町村が住民税を天引きする制度もあるが、これは特別徴収という。これらの制度によって、年金の収入金額が年400万円以下で、他に20万円を超える所得がなければ、年金の確定申告は不要だ。

源泉徴収税額の計算式

年金に対する所得税の源泉徴収税額は、以下のように計算される。

源泉徴収税額 = (年金支給額-社会保険料-各種控除) ×5.105%

「社会保険料」は年金から天引きされている社会保険料の額で、「各種控除」とは公的年金控除と所得控除のことだ。所得控除のうち、年金の源泉徴収に反映できるのは以下である。

・基礎控除
・扶養控除
・配偶者 (特別) 控除
・寡婦・ひとり親控除
・障害者控除

基礎控除以外の4つの控除を適用するためには、控除を受けたい年に年金事務所に「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出する必要がある。
公的年金控除、社会保険料控除、基礎控除の3つは、特に手続きをしなくても所得税の源泉徴収の計算に反映される。

扶養親族等申告書の提出方法と提出を忘れたときの対応

毎年9月頃、年金事務所から該当者に「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」が送られる。その用紙に受けられる控除について記載し、指定された期限までに返送する。年金事務所に申告書を提出し忘れたとしても、確定申告をすれば控除を適用した後の税額と、それまでに源泉徴収された税額を精算できる。年金事務所に申告できる控除は人的控除に限られるが、それ以外の所得控除 (医療費控除など) がある場合は確定申告を行うことで受けられる。

控除額の見直しなどをチェック

令和2年には基礎控除だけでなく、公的年金控除の額も見直された。所得控除の金額や要件も変更されることが多いため、税制改正時にはしっかりチェックしたい。

(提供:大和ネクスト銀行


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