この記事は2022年6月3日に三菱総合研究所で公開された「消費動向調査(2022年5月) ―― 消費者マインドの悪化は一服も、物価上昇が今後の懸念材料に」を一部編集し、転載したものです。


消費動向調査
(画像=PIXTA)

今回の結果

2022年5月の消費者態度指数(季節調整値)は、34.1ポイントと、前月から+1.1ポイント上昇した。本年入り後のオミクロン変異株の感染拡大を受けたマインド悪化に一服感がみられている状況(図表1)。

消費者態度指数(季節調整値)
(画像=出所:内閣府「消費動向調査」より三菱総合研究所作成)

消費者態度指数を構成する指標の動きをみると、防疫措置の緩和等を映じて、雇用環境についての見通しが改善。他方、物価上昇を背景に耐久消費財の買い時判断(半年後は今よりも良い買い時になるか)が前月に続いて低調となったほか、収入の増え方に対する見通しも伸び悩んだ(図表2)。

消費者意識指標(季節調整値)
(画像=出所:内閣府「消費動向調査」より三菱総合研究所作成)

収入の増え方に対する世代別の見通しを確認すると、50代以上の世代では改善している一方、20代の見通しが悪化。若年層の非正規雇用者の比率が前年比で上昇するなか、将来への不安を強めている可能性がある(図表3)。

収入の増え方に対する世代別の 見通し(季節調整値)
(画像=出所:内閣府「消費動向調査」より三菱総合研究所作成)

家計の一年後の物価見通しに関しては、前年比+2%以上との回答の割合が全体の84%に上った。回答を加重平均して算出した期待物価上昇率は同+3.8%と、月次調査を開始した2004年4月以降で最も高い水準(図表4)。

家計の期待物価上昇率
(画像=出所:内閣府「消費動向調査」より三菱総合研究所作成)

基調判断と今後の流れ

消費者マインドは、新型コロナの感染拡大が落ち着くなか、下げ止まりつつある。

先行きについては、経済活動の再開が一段と進むなかで、雇用環境の見通しの改善がマインドの下支えに寄与すると考えられる。

ただし、原材料・資源価格の高騰によるコストプッシュ型の物価上昇が進むなか、消費者の収入増に対する期待が高まらなければ、暮らし向きや耐久消費財の買い時判断も下振れする恐れがある。

前述の期待物価上昇率には上方バイアスが存在するが、消費者物価指数と概ね同一の方向で推移してきた。輸入物価指数と国内企業物価指数が歴史的な水準にまで高まり、今後は価格転嫁の動きも一層広がると見込まれるなか、物価上昇がマインドの腰折れに繋がる可能性にも注意が必要となる。

菊池 紘平(きくち こうへい)
政策・経済センター
メガバンクで国内外のマクロ経済動向や金融機関経営等に関する調査業務に従事した後、2022年より現職。国内研究機関への出向や米国駐在等の経験も活かし、分かりやすい情報発信・分析を行う。