この記事は2022年6月29日に「The Finance」で公開された「BNPLとは?メリット・リスク・国内外事例を解説」を一部編集し、転載したものです。
国内外で急拡大している後払い決済BNPL(Buy Now, Pay Later)について、いまさら聞けないBNPLの概要や日本と海外の企業を紹介していきます。
目次
BNPLとは
BNPLとは、「Buy Now Pay Later」の頭文字を取った略称で、日本語訳では「今買って、後で払う」という意味になります。
「後払いシステム」として欧米を中心に世界に展開されており、日本でもPaidyやGMOペイメントゲートウェイ、楽天サービスなどがBNPLのサービスを提供しています。
BNPLでは利用者が商品を購入した際、店舗に対して代金を支払う必要がありません。代金の支払いは、BNPL事業者が店舗に対して立て替えを行う仕組みです。その後、商品を購入した利用者に対してBNPL事業者から商品購入の請求書が届き、コンビニなどで支払いを行うことになります。こうした買い物などを行う際に、現金を用意していなくても商品の購入が可能になるのが、BNPLです。
BNPLとクレジットカードの違い
「後払いシステム」と聞いて、クレジットカードと同じではないかと感じた方も多いかもしれません。しかし、BNPLとクレジットカードには明確な違いがあります。具体的には下記のような違いです。
<BNPLとクレジットカードの違い>
BNPL | クレジットカード | |
---|---|---|
与信審査 | 原則不要 | クレジットスコアで審査 |
利用開始 | 登録後すぐ | カードが届くまで 2~4週間程かかる |
利用者手数料 | 原則不要 | 必要 |
加盟店舗側の手数料 | 高めに設定 | 低めに設定 |
利用枠(限度枠) | 少額スタート 返済実績に基づき増額 | 審査時に限度額が設定 |
BNPLでは与信審査が原則不要です。メールアドレスや電話番号などを登録すれば、すぐにアカウントが作成され、利用が開始できます。
またBNPLでは利用者の手数料も原則不要です。クレジットカードの利用時には、3回以上の分割払いを選択すれば、基本的に手数料が発生します。現在、主な手数料はカード会社によって異なりますが、最大で14~15%程かかってきます。しかしBNPLでは手数料が原則不要です。そのため、高額な商品を購入する際でも手数料を気にせずに利用ができます。
加えてBNPLを利用できる加盟店舗側の手数料にも違いがあります。クレジットカードの場合、手数料は低めに設定されていますが、BNPLは高めの設定です。そのため店舗側では利用者の購入金額などによっては、手数料が高くなってしまう可能性もあります。
BNPLの市場規模と動向
BNPL市場は日本および世界で、拡大傾向にあります。
BNPLの国内市場は、矢野経済研究所の調査によれば堅調に拡大しています。2020年度の国内のBNPL市場は8,800億円を突破しており、市場規模は2017年度と比較して2倍です。さらに今後も市場規模は拡大していくとされており、2024年度には1.8兆円まで伸びる予測がされています。
一方で、日本ではまだサービスを利用したことがないユーザーも多く、今後BNPLが浸透していくことが期待されています。
海外市場に目を移すと、BNPLの市場規模はさらに拡大傾向です。2021年の世界のBNPL市場規模は510億米ドル(約5兆8981億円)だったものが、2030年までには4190億米ドルに成長するとされています。
さらに日本総研のレポートによれば、欧州でのEC市場における決済手段が2024年には銀行送金を超え、クレジットカードのシェアに迫るとしています。こうした市場拡大の背景には、若年層のクレジットカード離れや、コロナ禍におけるオンラインショッピングの利用促進が挙げられます。
アメリカでは若年層のクレジットカード保有率が高年齢層よりも低く、さらにクレジットスコアからクレジットカードをそもそも持てないケースが増えてきています。そのため若年層は銀行口座からの即時決済が可能なデビットカードを選択することが増えており、BNPLの利用も増えていくと予想されています。
またオンラインショッピングの利用促進もBNPL市場拡大の後押しになっています。EC市場で高額な商品購入を行うケースも増えてきており、デビットカードのような即時決済の場合、支払いが困難となってしまうからです。そのため分割払いの手数料がかからない、BNPLサービスの利用が増えていくと考えられています。
参照:拡大する Buy Now, Pay Later(BNPL)市場の動向と今後の展望
BNPLのメリット
BNPLのメリットは、利用者側、店舗側の両者にあります。
利用者側のメリットは以下のようなものが挙げられます。
<利用者側のメリット>
- 与信審査がなく、メールアドレスや電話番号の登録だけですぐに利用できる
- 分割払いの手数料なしで利用できる
- 高額商品でもクレジットカードの利用なしに購入できる
- 商品を先に受け取れるため、マイナーのサイトでも安心して購入できる
BNPLの最大のメリットは「与信審査がほとんどなく、簡単な登録だけですぐに利用できること」です。
たとえばショッピングをしていて、手もとにクレジットカードや現金を所持していなくても、その場でBNPLへの登録を行い、すぐに利用可能です。
また分割払いの手数料もかからないため、高額商品の購入でも積極的に分割払いで購入が行えます。加えてBNPLは即時決済ではなく、事業者が一時的に立て替え、商品を先に受け取れます。そのため料金を支払ったのに、手元に商品が届かないなどがありません。
<店舗側のメリット>
- 客層が広がる
- 客単価アップが期待できる
店舗側のメリットは上記の2つが挙げられます。
まずBNPLの決済手段を用意することで、幅広い客層をターゲットにできます。なぜならクレジットカードを所持していない層や、クレジットカードを持っていても積極的に利用していない層も購入機会を用意できるからです。
またBNPLでは分割手数料がかからないため、高額商品にも利用しやすいメリットがあります。そのため手数料の観点から二の足を踏んでいた利用者も購入できるため、客単価アップも期待が持てます。
BNPLのデメリット・リスク
BNPLのデメリット・リスクも利用者側、店舗側にそれぞれあります。
利用者側のデメリット・リスクは以下のようなものが挙げられます。
<利用者側のデメリット・リスク>
- 分割払いができないものもある
- 手数料が発生するサービスもある
- 決済手段として浸透していない
BNPLのサービスの中には分割払いができないものや、クレジットカードと同じように手数料が発生してしまうものもあります。そのためBNPLサービスを利用する際には、登録時に内容の確認を行うことが大切です。
また日本においては、決済手段として浸透していないこともネックになります。BNPLを利用しようとしても、対応している店舗がまだ少ないため、実用性が低いことも少なくありません。
<店舗側のデメリット>
- 手数料の負担が大きい
- 日本市場で浸透しきっていない
店舗側のデメリットは手数料の負担が大きいことが挙げられます。クレジットカードと異なり、決済手数料が高めに設定されているため、負担に感じてしまう店舗も多いでしょう。
決済手数料の相場は、海外では4%~6%とされています。日本でも同様の手数料が必要な場合も出てくるでしょう。加えて現在の日本市場ではBNPLサービスが浸透しているとは言えません。そのためサービスとして設置を行なっても、利用者がほとんどいないケースも考えられます。
海外のBNPL企業
Affirm(アメリカ)
Affirmはペイパルの創業者でもあるマックス・レブチン氏が創業したフィンテック企業です。
Affirmでは利用者の信用度を「商品を購入する現在の支払い能力」として、AIを活用して判断しているのが特徴です。これにより、従来の与信審査では過去の支払い実績から、信用度が低いとされていた層にも、サービスの提供が可能になっています。
Affirmでは無利息での分割払いサービスの他に、アファームと提携していない店舗ではクレジットカードのように利用できる「バーチャル・クレジットカード」や、利用者の購入履歴に応じて、オススメの商品をお得に購入できる「マーケットプレイス」などのサービスを展開しています。
Klarna(スウェーデン)
Klarnaは1年半で企業価値が5.5倍に成長したフィンテックサービス企業です。
同社は2019年8月に時価評価額が55億ドルでしたが、2021年3月には310億ドルまでに成長し、欧州でのフィンテック企業でトップに立っています。
Klarnaのサービスでは4回までの分割払いが無利子になるサービスや、商品到着から30日以内の購入であれば無利子となる「30日以内・後払いプラン」などを提供しています。さまざまなサービスの中でも、最も注目したいのが「即時ファイナンス(貸付)サービス」です。
このサービスは利用者が商品を購入時に、Klarnaが購入代金を貸し付けて、6カ月から36カ月の分割返済を求めるサービスです。利用者側は即時に商品の購入ができ、店舗側は即日入金がされます。そのため利用者はリスクの少ない返済プランが立てられ、店舗側は現金不足の不安が解消されるのが特徴です。
Afterpay (オーストラリア)
Afterpayは2015年にオーストラリアのメルボルンに本拠を置く決済サービス企業です。
BNPLサービスを、オーストラリアをはじめ、ニュージーランドやアメリカなど5カ国で提供しています。利用者は1,600万人以上にまで上っており、他のBNPLサービスと同様に、無利子での分割払いサービスなどを登録するだけで利用が可能です。
このAfterpayは2021年8月、アメリカのモバイル決済企業であるSquareによって290億ドル(3兆円越)で買収されることが合意されました。今後はAfterpayをSquareが提供している「Cash App」に統合することで、利便性を高めていきたい考えです。
国内のBNPL企業
GMOペイメントゲートウェイ「GMO後払い決済」
「GMO後払い決済」は、GMOペイメントサービス株式会社が提供している後払い決済サービスです。
上限金額55,000円(税込)を限度額に利用が可能で、商品の購入からおよそ1週間程で請求書が届き、請求書発行から14日以内にコンビニなどで支払うものです。加えてGMO後払い決済では、従来では5分ほどかかっていた与信審査をリアルタイムで行える、リアルタイム与信サービスを導入し、スムーズな決済を実現しています。
Paidy「後払いPaidy」
「後払いPaidy」は株式会社Paidyが提供する、ネットショッピングで利用できる決済サービスです。Paidyへの加盟店舗は70万を超えており、AmazonやApple、ビックカメラなどでも利用が可能です。
利用者は電話番号とメールアドレスを登録するだけで利用が開始でき、支払い方法も分割払いから翌月まとめて払いなども選択ができます。またアプリで利用状況が管理できる利便性や、クレジットカードのような年会費がないことで人気を集め、利用者数は2021年6月時点で550万以上となっています。
ネットプロテクションズホールディングス「atone」
「atone」は、株式会社ネットプロテクションズホールディングスが運営している後払い決済サービスです。
atoneの最大の特徴は利用金額に応じてポイントが貯まることです。具体的には200円の利用で1ポイント(1円相当)が貯まり、請求金額への割当てやNPポイントクラブでの商品交換などに利用ができます。
最短1分で登録ができ、登録すれば誰でもすぐに50,000円分の後払い枠が利用できるため、その場で買い物を行いたい場合などに向いています。
ネットプロテクションズホールディングス「NP後払い」
「NP後払い」は日本で初めて、未回収リスク保証型の後払い決済サービスをスタートさせた、株式会社ネットプロテクションズが提供するサービスです。
NP後払いは2002年にサービスをスタートしており、20年の歴史を誇るサービスです。加えて、導入店舗は69,000店舗に上っており、累計取引数は2.8億件までになっています。
またNP後払いでもNPポイントが貯まり、商品交換や懸賞応募などに利用ができます。
まとめ
BNPLは、世界はもちろんのこと、日本でも現代のニーズに即したサービスとして広まっていくことが予想されています。スマホを持っていれば、誰でも簡単にその場で登録から利用できるBNPLはキャッシュレス社会の促進を、さらに加速させるかもしれません。