本記事は、林恭弘氏の著書『自分の気持ちを伝えるコツ50』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています

がまんする人の心理

がまん
(画像=aijiro/stock.adobe.com)

身近な人に不満を感じることは、あると思います。

たとえば職場で、同僚や後輩がテキパキと仕事をしないのでイライラする。恋人が、いつも約束の時間に遅れてくる。趣味のサークルで、仲間が面倒なことを何かと押し付けてくる、など。

このように相手の言葉や行動に不満を感じたとき、あなたは不満を伝えますか?それともがまんしますか?

不満の内容にもよりますが、たいていの人は、「言わないでがまんする」ようです。不満をすぐに伝えない人には、2つのタイプがあります。

1つは、最終的に攻撃的な言葉で怒りを爆発させてしまうタイプ。もう1つが、イライラを募らせて、相手を見切ってしまうタイプです。

まず、「最終的に攻撃的な言葉で怒りを爆発させてしまうタイプ」から説明します。

不満をすぐに伝えない理由は、「『不満だ!』なんて言うと関係がギクシャクする」「言うと相手に嫌われてしまうかもしれない」と考えるからです。つまり、人間関係がうまくいかなくなることを心配しているのです。

しかし、不満を「がまん」しても、「消えてなくなる」わけではありません。いつまでたってもスッキリしませんし、ストレスが溜まります。

カウンセリングの世界では、人が相手に不満を伝えるということは、「最後通告(最後の要求をし、相手が受け入れなければ、平和的な交渉を打ち切る宣言)」に近いといわれています。

不満をがまんして、がまんして、それでもまだがまんして……、ついに限界がきたときにぶちまけるので、「怒りの感情」として、一気に相手へ飛んでいきます。

溜めに溜めた不満ですから、その時の不満だけでなく、過去のうっぷんも一気に出てきます。「それを言っちゃおしまいよ」という「最後通告」とは、このことです。

表面的には穏やかで、何事もないように見えるのですが、がまんして抑え込むたびに、心の中で相手に対する怒りや攻撃性が蓄積されていくのです(受動的攻撃性)。

もう一つは、「イライラを募らせ相手を見切ってしまうタイプ」です。

親子や夫婦、恋人などの、より甘えられる人間関係では、他の人に対してよりも、不満を言いやすいかもしれません。すると、いつも「売り言葉に買い言葉」となり、相手との「勝負」になりがちです。言えば言うほど嫌な感情を抱え、疲れ果ててしまうでしょう。

そして、「もう、言ってもムダ!」とレッテルを貼り、あきらめる人が多いのです。

しかしそこで完全にあきらめきれるわけはなく、いつもイライラしています(心理学でいう現実からの逃避)。これでは、当面のストレスから逃げているだけなので、完全に満たされることはありません。

いかがでしょうか?

あなたはこのどちらかに当てはまりませんか?

ポイント
不満をすぐに伝えない人には二つのタイプがある。また、不満を伝えたときは「最後通告」となっている場合もある

相手をやっつけてしまう人の心理

不満を感じると、すぐにその不満を相手に伝える人がいます。

不満の気持ちは、伝えれば伝えるほど、相手との関係がギクシャクしてしまいます。

ある男性が部屋で本を読んでいます。その本は、男性の友人がずいぶん前に貸してくれたものです。明日、その友人と会う約束をしたことで、男性は本を借りていたことをふと思い出しました。

「今日中にこの本を読んで、明日会ったときに返そう。せめて感想ぐらい言えないと、せっかく貸してくれた友達に悪いしなぁ」

しかし、同じ部屋で彼の弟が、大きなボリュームで音楽を聴いているため、気持ちよく読書ができません。男性はしばらくがまんしていたのですが、ついイライラしてしまいます。さあ、あなたならこの不満をどう相手に伝えますか?

「うるさい!」
「ボリュームを下げろよ」
「あっちで聴けよ」
「ヘッドホンぐらいつけろよ」

あなたは、どう伝えますか? それとも、自分が部屋から出ていきますか?

「自分が部屋から出ていく」のも一つの方法ですが、「仕方なしに自分が動く」のでは、がまんしていることと同じになり、不満解消にはなりませんよね。

ポイント
不満の気持ちは、伝えれば伝えるほど、相手との関係がギクシャクするもの

やっつけられてしまった人の心理

先ほどの男性は、弟を「非難する」ような言い方をしました。

こういった場合、言われた相手はどんな反応をして、どんな感情を持つでしょうか?

筑波大学で行われた実験結果では、ほとんどの場合、言われた相手は「嫌な感じがした」「自分勝手だ」「腹が立った」という感想とともに「反発心」を持ち、不愉快になることがわかりました。

では、相手がなぜ不愉快になったのか、その理由を考えてみましょう。

理由1 兄が「本を読みたい」のと同じように、弟も「音楽を聴きたい」

理由2 「困っている」のは兄だけで、弟は困っていない

理由3 弟は兄を「困らせよう」とわざとやっているわけではなく、兄が困っていることすら「知らずに」音楽を聴いている

理由4 兄は、ほぼ一方的に、責めるような言い方をしている

理由5 兄はどうして音楽を消してほしいのか、あるいはボリュームを下げてほしいのかを話してもいない

これら5つの理由を合わせて考えてみると、弟は、兄が「伝えた言葉(内容)」に「納得」していないことがわかります。

人は納得すれば快く動けるものですが、納得しないまま「動かされる」と、反発します。

どうでしょうか? これらの言い方では、弟は納得しそうにありませんよね。

もちろん、兄の言い分もわかります。

「そのくらい、いちいち言わなくても、わかって当然だ!」という気持ちでしょう。しかし、兄の考え方のベースとなっているのは、「私は正しい。相手は間違っている」ではないでしょうか?

男性と同じように、相手(弟)にも「やりたいことがある」わけです。弟の邪魔をしていることに、気づかないことだってあるでしょう。それさえも責めるとしたら、「何も言わなくても、すべてわかるべきだ!」ということになってしまいます。当然、こちら(男性)に配慮してほしいものですが、それと同じように、ついつい気づかないこともあるのではないでしょうか?

ポイント
人は納得すれば快く動くもの。納得しないままだと反発する

自分の気持ちを伝えるコツ50
林恭弘(はやし・やすひろ)
ビジネス心理コンサルティング代表。心理コンサルタント。 1964年生まれ。兵庫県宝塚市出身。日本メンタルヘルス協会心理カウンセラー・講師。幼児教育から企業を対象とする人事・教育コンサルタントまでたずさわった後、現日本メンタルヘルス協会代表・衛藤信之氏に師事。カウンセリング活動の他、東京・名古屋・大阪・福岡での同協会主催の心理学ゼミナール講師、企業・学校・各種団体を対象とした講演会・ 研修会講師として活動。「活力ある社会と、優しい家庭を創造する」をテーマに、日常生活に実践的ですぐに役立つ心理学を紹介する。

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