本記事は、林恭弘氏の著書『自分の気持ちを伝えるコツ50』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています

相手のことなんてわからない!という人に

わからない
(画像=mapo/stock.adobe.com)

「相手をイメージするって言っても、難しいです!」

という声が聞こえてきそうです。

もちろん相手をイメージすることは、そんなに簡単ではないかもしれません。

たとえば、男性・女性で心理的傾向は違います。「男(女)心なんてわからない!」というものですね。その他、親と子どもでは立場や年齢が違います。上司と部下、先輩と後輩でも、やはり立場や置かれている状況、もちろん年齢の違いがあります。相手は自分と違いますからね。

では、その違い(ギャップ)をどう克服して相手をイメージすればいいのか、そのギャップをどう埋めればいいのでしょうか?

ここで1つご提案したいのが、相手の気持ちを知るために「勉強する」ということです。

女性が男性心理を学ぶと、やがて「2人の関係性」をコントロールできるようになるでしょう。つまり、「手のひらで転がす」ことが可能になるかもしれません。

男性が女性心理を学ぶことによって、女性から感謝され、自信が持てるようになり、気持ちのいいお付き合いができるようになるでしょう。このように、学ぶことによって自分を広げていけるわけです。

私が思うステキな人は、謙虚で学び好きな人です。

セミナーに参加したり本を読んだり、他人に教えてもらって常に学んでいます。私の研修や講演に積極的に参加される方も常に学びを大切にしている人たちです。みなさんとてもステキでいらっしゃいます。

親との関係で悩んでいる方が、ちょうど自分の親と同じぐらいのセミナー参加者に「親の心理」を教えてもらっていたり、上司との関係で悩んでいる人は、ずいぶん年下の参加者に「部下の心理」を教えてもらっていたりします。直接の利害関係のない人が周りにいた場合には、そんな人たちから学べることは大変便利だと思いますね。感情的にならず、冷静にそして素直に自分では気づかない情報を得ることもできるでしょう。

自己投資に手間暇を惜しまない人は必ず成長しますし、仕事でもプライベートでも豊かな人間関係をもっているものです。

ポイント
相手の気持ちを知るために「勉強」していきましょう

相手の気持ちを理解するための効果的なワーク

相手の気持ちを知るための方法として、「ゲシュタルト療法」というものがあります。これはカウンセリング技法の一つで、中でも「エンプティー・チェアー」と呼ばれるワーク(技法)がカウンセラーの中では知られています。直訳すると、「空っぽの(エンプティー)椅子(チェアー)」となります。

とりあえず、順にお伝えします。

(1)椅子を2つ用意し、向かい合わせに置く
(2)誰も座っていない椅子と向かい合って、もう一方の椅子に座る
(3)トラブルの起こった相手、あるいは、不満のある相手を「想像の中で」その空っぽの椅子に座らせる
(4)椅子に座らせた「相手のイメージ」に向かって、あなたの主張を話す

(4)のところで、

「先輩、仕事の進め方について、もう少し丁寧に教えてください。たしかにもう、入社して1年近く経ちましたけど、5年選手の先輩とは違うんですよ。昨日だって課長に呼ばれて、仕事のスピードが遅いことと、ミスの多さについて叱られたんですよ。後輩指導だって先輩の仕事のはずじゃないですか? 先輩はあまりにも冷たいです」

と、トラブルに対するあなたの主張、不満を話します。

感情も含めて、人は言いたいことを話すとスッキリし、意外と冷静になります。溜めていたものを一気に吐きだすことで心がスッキリとし、安定を取り戻すことができるのです(心理学ではカタルシス効果と言う)。

続いて、

(5)今度は逆に、相手のイメージを座らせていた空っぽの椅子に、あなた自身が座る
(6)空っぽになった目の前の椅子に「あなた自身のイメージ」を座らせる
(7)あなたが、不満のある相手の弁護人になったつもりで弁護してみる

(7)のところで、

「あなたが望むような指導が得られなくて、困っているようですね。先輩には冷たさを感じ、上司からは叱られて、孤独感でいっぱいなのかもしれませんね。でも、もしかすると、先輩も余裕がないのかもしれませんよ。あなたが思っている以上の業務を上司から依頼されて、いっぱいいっぱいの状態で、あなたに目を向けることさえできないのかもしれません。業務時間外に、先輩と少し話す時間をつくって、お互いの状況を確認してみてはいかがでしょうか?」

と、弁護します。

いかがでしょうか。

最初から、このようにはうまくいかないのが普通です。しかし、椅子を座り変えて何度も繰り返しているうちに、少しずつですが、相手の立場や気持ちが見えてくることがあります。

ばかばかしく感じる人もいるかもしれませんが、このエンプティー・チェアーのワークは、かなり効果があります。なんとなく相手のことをイメージするのと、実際に言葉に出してみて明確にするのとでは大違いなのです。

エンプティー・チェアーは、あなたに関係のあるさまざまな人を座らせることができますし、自分を苦しめている慢性病や疾患を座らせて、その病気や疾患が治らない理由を自分で探ることにも使われているようです。

ポイント
目の前に相手がいることをイメージして実際に言葉に出すと、相手が見えてくることがある

自分の気持ちを伝えるコツ50
林恭弘(はやし・やすひろ)
ビジネス心理コンサルティング代表。心理コンサルタント。 1964年生まれ。兵庫県宝塚市出身。日本メンタルヘルス協会心理カウンセラー・講師。幼児教育から企業を対象とする人事・教育コンサルタントまでたずさわった後、現日本メンタルヘルス協会代表・衛藤信之氏に師事。カウンセリング活動の他、東京・名古屋・大阪・福岡での同協会主催の心理学ゼミナール講師、企業・学校・各種団体を対象とした講演会・ 研修会講師として活動。「活力ある社会と、優しい家庭を創造する」をテーマに、日常生活に実践的ですぐに役立つ心理学を紹介する。

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