本記事は、林恭弘氏の著書『自分の気持ちを伝えるコツ50』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています

必ず好かれる「聴き方」のテクニック(1)

好意
(画像=fidaolga/stock.adobe.com)

安心感・信頼感のある人間関係をつくるには、「相手の話をどのような姿勢で聴くのか」が重要です。

ここでは、具体的な聴き方を身につけていきましょう。

まず1つ目のテクニックとして「受け身の聴き方」をご紹介します。

これは、カウンセラーが相談者と温かい関係をつくるのに欠かせないテクニックです。あなたの身近な人間関係でも、必ず同じように効果をあげることができます。

(1)沈黙する

これは文字どおり「黙って聴く」ことです。

「なぁんだ。そんな単純なことがテクニック?」と思う人もいるかもしれません。でも実は、これが「聴く」ことの基本なのです。

実際のところ、相手の話を「黙って聴く」ことは、私たちにとって至難の技です。もちろん、相手によっては、黙って聴くことが簡単な場合もあります。それは自分と同じような感じ方・考え方・価値観・経験の持ち主の場合です。

こういう人の話は「そうそう、おっしゃる通り」と、黙って聴くことができます。

しかし、自分とは違う感じ方・考え方・価値観・経験の持ち主の場合は、「一体感を感じていたいという欲求(一体願望)」がはたらきます。

ですから、「おかしい! 間違っている!」と感じ、「黙って聴く」ことができなくなるのです。

ここで思い出してみましょう。

相手がたとえ恋人でも、夫・妻でも、親子でも、同じ仕事をする仲間でも、残念ながら、あなたとは「違っている」のです。

あなたが相手の話を黙って聴くことができなければ、相手だってあなたの言い分を聴くことはありえません。

(2)うなずきつつ、あいづちを入れる

話をしているときに、「うんうん」「そうだったの」「なるほど」など、相手があいづちを打ってくれると、たいへん気持ちがいいものです。

あいづちが呼び水となり、さらに話が引き出されます。

このあいづちを打つときに、ぜひ取り入れてほしいのが、「うなずく」という動作です。

人が受け取る情報の大部分は、視覚から得ています。人は、相手が見た目にも「聴いている」と感じられれば、さらに気持ちよく話せるのです。

あなたがカラオケに行ったときのことを思い出してみてください。

仲間が見た目にも「聴いている」と感じられたとき、あなたは気持ちよく歌えていたのではないでしょうか。それは、仲間たちが視線を落として、次の曲を選んでいるときではないはずです。

(3)思いを引き出す言葉をかける

「もう少しくわしく教えて」
「大切なことなんだね」
「あなたの気持ちを知りたいな」

など、相手の話を大切に思っていることを、短い言葉で構わないので伝えてください。

自分を大切に扱ってもらって、うれしくない人はいません。あなたに自分の胸のうちを、もっと聴かせてくれること、間違いなしです。

そして、自分のことを大切に扱い、思いを聴いてくれたあなたに感謝することも確実です。

この「受け身の聴き方」を実践するだけで、あなたの人間関係は一変します。

(1)否定しないで、話す人のペースでじっくりと黙って聴く
(2)大きくうなずき、話しやすいようにあいづちを打つ
(3)興味をもって相手を大切に扱う

の3点は、事実、好かれる人たちが共通して実践しています。

ポイント
「受け身の聴き方」は相手と温かい関係をつくることができる

必ず好かれる「聴き方」のテクニック(2)

2つ目のテクニック「積極的な聴き方(アクティブリスニング)」を使えば、さらに深い信頼関係をつくることができます。

(1)言い方を少し変えてくり返す

恋人「同僚のAが許せないんだよね!」

あなた「職場で何かあったんだね」

恋人「そうなんだよ(聴いてくれている)」

後輩「私、すぐに方針が変わるところがこの会社の嫌なところなんです!」

あなた「方針変更について疑問があるんだね」

後輩「そうなんです!(理解してくれているな)」

先輩「明日の午後ちょっと時間をとってくれないか。新企画の件で話しておきたいことがあるんだ」

あなた「新企画についての確認ですね。では、午後は空けておくようにします」

先輩「頼んだよ(いつもきちんとしているな)」

このように、ほんの少し言い方を変えて「くり返す」ことで、理解していることが「実感」として相手に伝わります。聴いている、理解している、きちんと向き合っている「あなたの姿勢」は、必ず相手に安心感と心地よさを与えます。

(2)要点をまとめる

友人「付き合いはじめて3年になるんだけど、彼って一度も私を家に呼ぼうとしてくれないのよ。それに彼の親友にも会わせてもらったことがないの。私も、別にすぐに結婚しようなんていうつもりはないわよ。でもあんまりじゃない? そんな彼の態度を見てると、私たちまるでコソコソ付き合っているようで嫌なのよ!」

あなた「大切な人に会わせてくれない彼の態度に、不安を感じてるんだね」

上司「規則は、どんなときでも絶対に守らねばならない、というわけではないよ。でも、今回のようにお客様に提出する書類に関しては、ちょっとしたミスから信用を失ってしまう恐れがあるんだ。だから、複数の人でチェックして、規則どおりの書式になっているかを、慎重に確認する必要性があるんだよ」

あなた「お客様の信頼を第一に考えるべきなんですね」

このように少し長い会話になると、すべてをくり返すには限界があります。

その場合は、相手が一番伝えたい・わかってほしい部分だけを、ピックアップしてまとめます。これによって、相手は、より理解してくれたと感じることができます。

しかし、これには少し慣れる必要がありますね。

(3)気持ちをくむ

「つらかったんだよね」「寂しかったのね」「それは心配だったでしょう」「不安な気持ちがすごく伝わってきたよ」というように、気持ちが理解されることが、人にとって一番うれしいことです。

ですから、不満・愚痴・悩みなどを聞いても、その問題を解決してあげなくてもいいのです。それは、あなた自身に対する相手からのクレームや攻撃の内容でさえも、そうなのです。

ある程度時間をかけながらじっくりと聴き、最後は気持ちをわかろうとしてあげるだけでいいのです。

ポイント
アクティブ・リスニングは深い関係を構築できる

自分の気持ちを伝えるコツ50
林恭弘(はやし・やすひろ)
ビジネス心理コンサルティング代表。心理コンサルタント。 1964年生まれ。兵庫県宝塚市出身。日本メンタルヘルス協会心理カウンセラー・講師。幼児教育から企業を対象とする人事・教育コンサルタントまでたずさわった後、現日本メンタルヘルス協会代表・衛藤信之氏に師事。カウンセリング活動の他、東京・名古屋・大阪・福岡での同協会主催の心理学ゼミナール講師、企業・学校・各種団体を対象とした講演会・ 研修会講師として活動。「活力ある社会と、優しい家庭を創造する」をテーマに、日常生活に実践的ですぐに役立つ心理学を紹介する。

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