この記事は2022年7月27日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「ステップ【9795・プライム】神奈川県特化の学習塾展開 業界高水準の営業利益率26・9%」を一部編集し、転載したものです。


ステップは1979年設立以来、一貫して神奈川県内に特化し、小中学生を中心とした学習塾を展開している。「いい授業が最大の営業」とし、広告宣伝に費用をかけず、教師の育成により力を入れ、高い合格実績を積むことで生徒数を増やしてきた。

2020年はコロナの影響により設立以来初の減収となったものの、2022年9月期には売上高、営業利益ともに過去最高を更新する見込み。中期経営方針では人口の多いエリアに校舎数を増やす戦略で県内シェア率を高めることに注力する。

▼遠藤 陽介社長

ステップ【9795・プライム】
(画像=株主手帳)

教師職の9割強が正社員
質の高い授業で生徒確保

ステップの2021年9月期業績は売上高が130億3,600万円、営業利益が35億900万円。同社の注目すべき点は営業利益率の高さだ。売上高業界トップクラスのベネッセホールディングス(9783)が4.7%、ナガセ(9733)が11.3%という中、同社は26.9%と高い水準にある。この要因の1つとして広告宣伝費をかけないという戦略がある。

業界の一般水準では、5~10%の広告宣伝費に対し、同社は2021年9月期で1.1%と大幅にコストを抑えている。もちろん集客に力を入れていないわけではない。2022年4月末現在では前期比5.3%増の3万1,069人の生徒が在籍するなど着実に生徒数は増やしている。

ではどのようにしてわずかな広告費で集客しているのか。

「質の高い授業をすることが一番の営業になるという考えがあります。通常、人件費を抑えるためにアルバイト採用などを行う塾が多い中、同社は718名(2022年4月末現在)在籍している教師職の90%強が正社員です」(遠藤陽介社長)

ここには、授業の質の高さを担保するための戦略が組み込まれている。教師を正社員雇用することで手厚く研修などを行い、教師のプロ化を図っている。例えば新卒社員であれば2年間、新人研修を2週間に1回ほど行い、教科ごとに授業の進め方や発問の仕方など細かく指導している。

また教師全員が一堂に会する地域別研修や集中研修、英語力アップに特化した英会話研修なども実施。キャリアに関係なく、教師としての腕を磨くため様々な研修制度を用意している。このような研修で授業の質を高水準で維持し、神奈川県に特化した対策を行うことで確かな合格実績をあげ、主にクチコミから毎年、生徒の数を増やしている。

「入り口は生徒が成績を伸ばしたり、ステップに楽しい授業をする先生がいると興味を持ってもらうこと。子供が親に話し、クチコミとして広がっていく横展開が一番重要だと考えています。また、最近では多くのスクールで、生徒の親もステップに通っていたりというような縦のつながりもあり、地域に根付いたサイクルが生まれています」(同氏)

40年前から専門部署設置
教材配送まで内製化

専門性に富んだ部署展開も同社の強みだ。部署を細分化し、教師は営業活動を行わず教師として授業に専念する。教材作成なども内製化しており、教材研究部という部署を1983年から設置。神奈川県の入試の分析や塾内で使うテキスト、模擬試験などの制作も行う。

また、神奈川県では特色検査という5科目にプラスした科目横断的な試験があるため、特色検査対策チームという部署も設置している。作成したテキストは印刷・配送センターという部署で製本され、配送まで自社で行う。例えば試験方式がマークシートに変更するということになった場合でも早急に差し替えて、迅速な対応ができる。

「教材研究部は女性の教師が結婚や出産を機に異動してくるケースが多い。もともと教師だったということもあり、どういう教材が使いやすいかも熟知している。印刷・配送センターも自社にあるので他社と比べて教材を調達する費用も抑えられるし、内容も充実したものを提供できている」(同氏)

人口推移に合わせた出校戦略
学童部門を3本目の柱に

2022年4月末現在、158校を展開している同社だが、今後の戦略でも神奈川県特化という強みを生かし、校舎数を増やすことを念頭に成長を続ける。2021年5月時点で神奈川県の公立中学校に通う生徒の数は20万930人。その内、約半数の53.5%を占めるのが川崎、横浜エリアだ。今後は人口の多い同エリアでの出校数を増やし、シェア率を上げる。

現状、川崎市のシェアは3%ほどであるが将来的なシェアを15%と掲げ、開校余地のあるスクールが22校と計画を立てる。横浜市も現在の8.4%のシェアから15%を目標とし、32スクールの開校余地があるとしている。一方で神奈川の西のエリアなど、人口が減ることが予想されるエリアは今後出校を抑制し、人口推移に合わせた出校戦略を展開する。

また、現在、受験を見据えた小中学部、高校部が中心だが、「STEPキッズ」という小学1年生から4年生を対象とした英会話やプログラミングを行う校舎にも力を入れる。2022年4月末で3校開校しているが、好条件の場所を見つけ次第、4校目以降も順次開講していく計画だという。そのための人材もすでに確保しており、3本目の柱として学童部門にも注力していく。

「他県に全国展開しないのかという声もよく聞きますが、学習塾を展開するにあたって神奈川は人口も多く、一部エリアを除くと東京ほど家賃は高くない経営環境として非常に恵まれた場所です。まだまだ、川崎や横浜では開校の余地が大きく、現状10%の神奈川県内のシェア率は15%を目標とし、注力していきたいと考えています」(同氏)

▼ステップ「六会スクール」外観

ステップ【9795・プライム】
(画像=株主手帳)

▼キッズ授業(プログラミング)の様子

ステップ【9795・プライム】
(画像=株主手帳)

▼教師研修の様子

ステップ【9795・プライム】
(画像=株主手帳)

2021年9月期 連結業績

売上高130億3,600万円前期比 19.3%増
営業利益35億900万円同 81.9%増
経常利益35億9,300万円同 82.5%増
当期純利益24億7,100万円同 84.0%増


2022年9月期 連結業績予想

売上高136億4,400万円前期比 7.1%増
営業利益36億4,400万円同 13.6%増
経常利益36億9,200万円同 12.2%増
当期純利益25億100万円同 10.5%増

*株主手帳8月号発売日時点
*2022年9月期首より新会計基準を適用するため、上記の業績予想は当該会計基準等を適用した後の数値となっており、対前期増減率については、2021年9月期に当該会計基準等を適用したと仮定して算出

遠藤 陽介社長
Profile◉遠藤 陽介(えんどう・ようすけ)社長
1972年5月生まれ、神奈川県出身。1996年、東海大学教養学部卒業後、ステップ入社。2015年取締役、2018年専務取締役を経て、2019年代表取締役社長執行役員に就任(現任)。2020年横浜川崎本部長(現任)。