この記事は、2022年8月8日に三菱UFJ国際投信で公開された投資環境ウィークリーを一部編集し、転載したものです。全体をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。加えて、デイリーレポートについては、mattoco lifeをご覧ください。
サービス中心に消費回復が進展
2022年6月実質消費支出(2人以上の世帯)は前年比+3.5%(2022年5月:▲0.5%)と増加しました(図1)。
内訳(名目ベース)は財が同▲2.7%(同▲4.8%)、サービスが同+14.8%(同+5.4%)といずれも持ち直し、旅行関連や自動車、住宅の設備修繕・維持等への支出が全体を押し上げました。
2022年4~6月期の実質消費支出は前期比+1.9%と経済活動再開に伴って堅調に推移し、2022年8月15日に公表される2022年4~6月期実質GDP(1次速報)の市場予想は前期比年率+2.7%(2022年1~3月期:▲0.5%)と2四半期ぶりのプラス成長が見込まれています。
他方、先行きは食料・日用品の値上げや新型コロナ感染拡大など下押しリスクは残存するものの、コロナ禍で積み上がった家計貯蓄や潜在的な国内旅行需要等を背景に消費の回復基調は維持されるとみます。
堅調な夏季賞与に伴い現金給与総額は増加
2022年6月現金給与総額は前年比+2.2%(2022年5月:+1.0%)と増加しました(図2)。
内訳は所定内給与が同+1.3%(同+1.1%)、所定外給与が同+5.8%(同+5.3%)、特別給与が同+3.1%(同▲5.0%)と軒並み改善しました。堅調な企業業績に伴う夏季賞与の増加で特別給与が賃金全体を牽引したほか、決まって支給される所定内・外給与も底堅く推移しました。
他方、物価上昇の影響を除いた実質賃金は同▲0.4%(同▲1.8%)と依然としてマイナス圏にとどまります。先行きの賃金は経済活動の正常化や人出不足等を背景に緩やかな増加基調が続くとみます。
また、厚生労働省の審議会は2022年度の最低賃金を目安として全国平均で時給961円(2021年度:930円)に引き上げると示しました。最低賃金は政府目標の1,000円に接近する中、政府による賃上げ推進の動きも注目されます。
底堅い企業業績等が株価を下支え
先週の日経平均株価は前週比+1.4%と上昇しました。2022年8月2日に米ペロシ下院議長の台湾訪問で米中対立を警戒したリスク回避的な動きが強まり、一時的に円高・株安となりました。
週末にかけては米景気後退への過度な警戒感が和らぐ中で成長株の買い戻しや2022年4~6月期の好決算銘柄への資金流入が優勢となり、日経平均の終値は約2カ月ぶりに28,000円台を回復しました。
他方、TOPIX33業種の週間騰落率では経済活動再開の恩恵を受ける空運業やサービス業等が上昇も、原油下落や原材料高騰で収益下押し懸念が強まったセクターが弱含むなどまちまちです(図3)。
今週は引き続き2022年4~6月期企業決算に加え、2022年8月10日に内閣改造・自民党役員人事が予定され、今後の政策運営や日銀次期総裁の行方を占う上でも注目です。
田村 史弥