この記事は9月28日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「サンセイランディック【3277・スタンダード】不動産権利調整の専門企業で30年以上の実績 蓄積したノウハウ活かし地域再生事業にも着手」を一部編集し、転載したものです。
サンセイランディックは「底地」(貸宅地)や老朽アパートなどの「居抜き物件」など、複雑な権利関係を持つ不動産物件の権利調整を全国で行い、流動化を推進している。今年2月には2024年12月期までの中期経営計画を発表、連結営業利益18億円、同経常利益16億5,000万円を目標としている。今後は岩手県の観光地再生など、地域再開発事業にも積極的に取り組む。
▼松﨑 隆司社長
「底地」「居抜き」の売買・管理 上場法人唯一のビジネスモデル
同社は、権利関係が複雑な「底地」「居抜き」などの物件を専門に売買・管理する企業だ。2021年12月期には底地344件、居抜き57件を扱い、売上高は168億3,600万円(前期比5.3%減)、営業利益は11億1,700万円(同31.9%増)となった。全国的に「底地」「居抜き」を専門に取り扱っている上場企業は同社だけだ。
「底地」とは、土地の所有者(地主)が土地を貸し、借地人が家を建てている場所のこと。地主には土地所有権、借地人には借地権とそれぞれに権利があり、相続時にトラブルが発生することが多い。近年は特に相続人と借地人に面識がないことも多く、個人間での解決が難しくなっている。
同社は第三者として地主から底地を買い取り、借地人と交渉して権利を調整、底地の売却を進める。同時に権利者からの依頼により底地の管理も手掛ける。2021年12月期の底地売上高は82億800万円(前期比29.8%増)。
一方、老朽化したアパートに住人がいる場合、家主が取り壊したくとも、住人との交渉が難しいことも多い。このような物件を同社では「居抜き」と呼び、家主から買い受けた後に住人を個別に訪問。移転先の紹介など退去に向けた話し合いを進める。住人が全員退去した後は、更地にして売却する。
2021年12月期の居抜き売上は60億8,300万円(前期比13.7%減)となっている。2022年12月期第1四半期は、居抜きの販売が大幅に増加し、計画を大幅に上回った。
「底地は毎年コンスタントに400件程度を取り扱っていて、安定した事業です。居抜きは年によってばらつきがありますが、最近は都内のマンション価格の上昇で築古アパートを売りたい家主が増え、物件が多く出てきています」(松﨑隆司社長)
岩手県の温泉地域復活を支援 SPC通じペンション運営
同社は1991年から不動産の権利調整に取り組み、ノウハウを積み上げてきた。それを活かした新しい事業が、地域の企業と協業する岩手県八幡平温泉郷のペンション再生だ。
八幡平温泉郷は高度成長期時代に開発されたリゾート地だが、現在では観光客の減少やペンションオーナーの高齢化、後継者不足が進む。しかし、インバウンド客からは雪量の多さや雪質の良さで注目されはじめた地域でもある。同社ではオーナーからペンションを借り上げ、リニューアル後客室を賃貸。オーナーはペンションの運営を継続する。
高齢オーナーにとって食事の提供が大きな負担となっているが、リニューアル後は宿泊専用ペンションとし、食事は地元のレストランに送客して負担を軽減する。
「当社の仕事は、価値が低いと思われていたものに価値をつけていくこと。この事業は今まで培ってきた底地や居抜きのノウハウを活かせるとともに、社会的ニーズにも対応しています。今後、同様の他の地域でも権利調整で関わり、事業を拡大していきたいです」(同氏)
新中計で10億円を投資予定 いずれは海外事業も視野に
同社は2022年2月に「Transformation to 2024」と銘打った新中期経営計画を発表。財政基盤を強化するとともに、投資先行で新規取り組みを加速することで、新たな成長への転換点と位置づけている。
既存事業に関しては、底地は全国で約87万件以上、築30年以上の木造借家戸数は160万戸以上あることから、潜在的な市場はまだ十分に存在するとみている。今後はノウハウの電子化などITを活用しながら業務効率化を進め、底地や居抜きの仕入れから販売までの期間の短縮化と平準化を目指す。
「ていねいな権利調整が当社の特徴。難しいことですが、お客さんとしっかり話をしながら、どれだけスピードアップできるかにチャレンジしていきます」(同氏)
新規事業に関しては、八幡平の事例のような地域再開発を含め、2024年までに計10億円の投資を実行する予定。すでに九州地方における武家屋敷・空屋利活用、近畿地方における登録文化財・商家空家利活用などのプロジェクトも進む。自社展開に限定せず、M&Aやアライアンスも積極的に活用。新規事業による粗利は1億円を目標にしている。
一方で2022年3月には、さらなる成長に向けて経営資源を集中するため、注文住宅やリフォームを請け負っていた子会社を売却した。
「権利調整ノウハウが当社の原点。不動産を通じて問題を解決するニーズがあるところに、行政とタイアップしながら参画していきたい。また、このノウハウは海外でも通用すると考えています。海外でも権利調整で我々がお役に立てる地域があれば、いずれはチャレンジしていきたいですね」(同氏)
2021年12月期 連結業績
売上高 | 168億3,600万円 | 前期比 5.3%減 |
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営業利益 | 11億1,700万円 | 同 31.9%増 |
経常利益 | 9億9,900万円 | 同 40.9%増 |
当期純利益 | 6億900万円 | 同 70.5%増 |
2022年12月期 連結業績予想
売上高 | 171億300万円 | 前期比 1.6%増 |
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営業利益 | 14億200万円 | 同 25.5%増 |
経常利益 | 12億2,600万円 | 同 22.7%増 |
当期純利益 | 10億5,800万円 | 同 73.7%増 |
*株主手帳10月号発売日時点