この記事は9月20日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「T&K TOKA【4636・プライム】高付加価値なUVインキで国内トップシェア 次世代製品開発、海外展開加速で持続的成長へ」を一部編集し、転載したものです。


T&K TOKAは、オフセット印刷、グラビア印刷などの各種印刷インキの製造・販売を手掛ける総合インキメーカーだ。とくに高付加価値なUV(紫外線硬化型)インキに古くから注力し、国内トップシェアを誇る。海外進出にも早くから積極的で、海外売上高比率は35%を占める。

現在は次世代インキの開発を進め、高収益な商品ポートフォリオを確立。2025年3月期に営業利益30億円、配当性向50%以上の目標を掲げている。

▼増田 至克社長

T&K TOKA【4636・プライム】高付加価値なUVインキで国内トップシェア 次世代製品開発、海外展開加速で持続的成長へ
(画像=株主手帳)

世界で流通「UV161」 国外売上比率50%を目指す

同社は1947年に独立系の印刷インキメーカーとして創業。現在、印刷インキを主軸に、機能性樹脂、精密分散品などの製造・販売や印刷機・印刷関連資機材の販売を手掛けている。

2022年3月期の連結売上高は前期比5.3%増の444億56百万円、営業利益は、同14.8%増の2億28百万円。インキの原材料や物流コストの上昇の影響はあったものの、販売価格の改定、高付加価値なUVインキや硬化剤製品の販売が堅調で、増収増益となった。

商品別の売上高構成比は、UVインキ46.7%、平板インキ18.1%、その他インキ15.2%、商品12.1%、その他7.9%。売上の約半分はUVインキだ。

UVインキとは、印刷後にUV(紫外線)を照射することで瞬時に硬化するインキだ。もともと米国で発明されたが、同社は日本で1977年から扱うパイオニア的存在。現在、国内シェアのトップ企業となっている。

「インキメーカーとしては後発なため、他社がやらないことをやろうと始めたようです。スタンダードになったのはバブル前です。銀行さんが帳票類への印字を高温のローラーで定着させる方式に変えたのですが、一般のインキで印刷すると熱でインキが溶けてしまう。そこでUVインキが採用されるようになりました」(増田至克社長)

UVインキは瞬時に硬化するため、一般インキでは半日程度を要するインキの乾燥待ちの時間が不要となり、印刷から印刷物の出荷までの時間を大幅に短縮することが可能だ。

また強い硬化皮膜が形成されることで様々な耐性が高く、浸透して乾くインキではないため、液体・気体以外のほとんどのものに印刷できる。一般インキより高価だが、食品などの包装容器の紙器、粘着シールなどのラベル、プラスチック、金券など、様々な用途で需要が伸びている。

特に1981年から販売している「UV161シリーズ」は世界で流通。アジア地域では、UVインキの代名詞になっているという。

また同社は1969年の香港への支店開設を皮切りに、海外にも早くから進出。現在、韓国、中国、バングラデシュ、サウジアラビア、米国など8カ国に拠点を有し、売上高の海外比率は35%を占めている。

「印刷産業の伸び率はGDPに比例します。中国を始め、アジアは人口が多い地域がたくさんあり、今後も経済成長が見込まれる魅力的な市場です。ゆくゆくは、国内・海外の売上高比率を50対50にしていきたいです」(同氏)

印刷には地域特性があり、国によって求められるものが違う。オランダや香港の拠点を清算する一方、中国の新子会社稼働など、海外事業の拡大戦略の再構築を進め、社会への貢献を実感できる成長を目指しているという。

高収益な商品ポートフォリオ 軟包装印刷へ領域拡大

2022年5月に策定した中期経営計画では、2025年3月期に営業利益30億円、営業利益率6.0%、配当性向50%以上を掲げている。なお前期の営業利益率0.5%はインドネシアの連結子会社の売掛債権に係る貸倒引当金繰入額を計上したことが理由だという。現在、事業の選択と集中を進め、高収益な商品ポートフォリオを進めている。

その1つがUV技術を展開した次世代インキの開発だ。高収益なUVインキだが、光重合開始剤が必要で、それが臭気を発することがある。またUV照射に伴うランプからの放熱により、薄いフィルム素材への印刷に難がある。

それを補完するのが、EB(電子線=エレクトリックビームス)インキだ。EBインキ印刷は、電子線を照射して瞬時にインキを硬化させる印刷システム。インキに光重合開始剤や溶剤が不要なため、低臭化が図れ、放熱量も低く、また環境にも優しい。現在は主に溶剤型のインキで印刷されている食品や薬品などの軟包装材への適用が期待される。

「EBインキは空気を窒素で置換し、その中で電子線をあてて硬化させるもので、今は主に壁紙などの印刷に使われています。まだ装置自体が大掛かりなため、その簡素化、小型化が進めば印刷会社もEB硬化装置をより導入しやすくなります。2030年までに売上100億円規模を目指しています」(同氏)

同社はUVインキとEBインキの両軸で、2031年3月期に営業利益48億円、営業利益率8%超という長期目標も示している。

▼無数にある原材料を組み合わせてインキ設計を行う

T&K TOKA【4636・プライム】高付加価値なUVインキで国内トップシェア 次世代製品開発、海外展開加速で持続的成長へ
(画像=株主手帳)
T&K TOKA【4636・プライム】高付加価値なUVインキで国内トップシェア 次世代製品開発、海外展開加速で持続的成長へ
(画像=株主手帳)

UVインキの特徴

紫外線照射で瞬時に硬化乾燥
すぐ次工程に移ることが可能となり、生産性が大きく向上する

あらゆる物に印刷ができる
液体、気体以外であればほとんどの物に印刷できる

環境問題にも貢献
揮発性溶剤を使用していないため、低公害化、印刷作業環境の改善に貢献する


2022年3月期 連結業績

売上高444億56百万円前期比 5.3%増
営業利益2億28百万円同 14.8%増
経常利益19億92百万円同 83.1%増
当期純利益26億51百万円同 100.4%増

2023年3月期 連結業績予想

売上高464億70百万円前期比 4.5%増
営業利益11億80百万円同 416.7%増
経常利益21億20百万円同 6.4%増
当期純利益13億90百万円同 47.6%減

*株主手帳10月号発売日時点

増田 至克社長
Profile◉増田 至克(ますだ・よしかつ)社長
PROFILE◉ 1968年11月生まれ。1993年3月隆政堂入社。1996年3月T&K TOKA入社。2003年4月品質保証部部長、2004年4月管理本部本部長、2006年6月常務取締役管理本部本部長兼品質保証室室長などを経て、2007年6月代表取締役社長に就任(現任)。