「2世代運用」という言葉を聞いたことはありますか。金融商品は「個人で運用するもの」と思われがちですが、介護費用の問題に備えて資産寿命(資産が尽きるまでの期間)をできるだけ長くしたり、資産をスムーズに次世代へ相続したりする方法として、「2世代運用」という考え方が広がってきています。「2世代運用」の目的、メリットや注意点などを解説いたします。

2世代運用とは?

今後のトレンドに?「2世代運用」、資産運用は親子で
(画像=PIXTA)

「2世代運用」とは、親子で協力して資産運用をすることを言います。特に、親子で“親の資産”を運用することを指す場合が多いようです。最終的に親の資産は次世代へ相続されることや、高齢になると次第に自分自身の資産を管理・運用することが困難になってくることが、その背景でしょう。

2世代運用が注目されているのは、親と子の双方にメリットがあるからです。

例えば、老後の資産運用は、資産を減らさないために債券や預貯金などのリスクを抑えた運用が基本とされていますが、親の資産を子どもと共有して積極的な運用を継続していくことで、親としては老後資金が充実するというメリットがあります。一方、子どもにとっては親の資産を活用して資産形成ができるメリットがあります。

また、「令和2年分相続税の申告事績の概要」(国税庁)によると、相続財産の金額ベースの構成費では、土地が34.7%で最も多く、現金・預貯金等が33.9%、有価証券が14.8%。有価証券の構成比は比較的小さいため、運用機会を逃してしまっていることがうかがえます。こうした現状を見ても、今後、2世代運用はますます注目を集めていく余地があると言えるでしょう。

参考:国税庁「令和2年分相続税の申告事績の概要」

2世代運用の方法は?それぞれの方法のメリットや注意点は?

2世代運用は、主に2つの方法が考えられます。それぞれのメリットや注意点を見ていきましょう。

1つ目は、「将来的に相続することを前提に、親が主体的に資産運用する方法」です。必要最低限の生活資金は預貯金などの安定的資産で保有し、残りを親子で協力しながら運用するスタイルとなります。

将来的な相続を前提としているため、長期的な視点で運用できるメリットがあります。長期運用をすることでリスクを抑えやすく、株式などのリスク資産も保有しやすくなります。ただし、あくまで親が資産管理をする必要があるため、親が認知症などにかかって判断能力が低下すると管理が困難になるおそれがあります。法定後見制度や任意後見制度など対策方法があるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

2つ目は、「生前に資金を子どもへ贈与して、子どもが主体的に運用する方法」です。贈与にかかる税金は、その年の1月1日~12月31日までの1年間に受けた金額が110万円以下の場合は非課税となります。親の介護が必要になったときには、子どもが運用資金を取り崩すこともできますし、もし資金を取り崩すことがなければ親の資金で子ども自身の資産形成ができるので、双方にとってメリットが大きいでしょう。相続税が課税される方は、相続税の節税にもなります。

ただし、子どもが複数人いる場合は、特定の子どもに親の資産が偏ってしまうので、兄弟姉妹間で不公平感がでないように配慮しましょう。また、子ども自身のマネ―リテラシーも必要となります。

もちろん、これら2つの方法を併用して2世代運用を行うこともできますし、この2つの方法以外にも、費用はかかるものの「家族信託」を活用する方法もあります。

現在はNISA制度、つみたてNISA制度といった運用益が非課税となる制度もありますし、子ども世代はiDeCo制度も活用できるでしょう。せっかくある税制優遇制度を活かすチャンスなので、余剰資産は運用に回すことを検討してみてもよいかもしれません。

元気なうちに親子で保有資産を共有しておくことが重要

親にとって、資産状況を子どもに伝えるというのは、心理的にもハードルが高いことと思います。しかし、たとえ2世代運用をしないとしても、元気なうちに親子で話し合って、保有している資産や運用方針を共有しておくことは非常に大切です。

実際、介護が必要になった親の資産管理についてのご相談は多くいただきます。そもそも、「どの金融機関に口座があるのかわからない」というケースもあれば、「保有する運用商品を売却したいが親の判断能力が低下したため、資産を動かすことができない」というケースもあり、相続を待つしかない状況も多くあります。

その上で、2世代運用を考えるのなら、子が親の資産状況を把握することに加え、後見制度の活用などについても話したりしておくことが理想的でしょう。子どもは親の資産に関して生活資金や介護資金など最低限の必要資金は引き出しできますが、原則として、新たに投資するために引き出すことはできないからです。

いきなり全ての金融資産を開示する必要はありませんが、まずは保有している運用商品や今後運用に回してもよい資金額を子どもに伝えてみてはいかがでしょうか。

2世代運用の話し合いで親子関係をより良く

親子でお金の話をすることで、介護が必要になった時やお墓の問題、自宅の処分など先々起こり得る問題を明確にできます。お互いの価値観をすり合わせておくことで、「こんなはずではなかった」を防ぐことができ、無駄な費用を抑えられます。2世代運用の話し合いが親子の絆を固くし、資産を2代、3代とつないでいくきっかけになればと思います。

相続税、贈与税など税金に関しては税理士や最寄りの税務署で相談し、運用に関しては金融機関に相談するとよいでしょう。

執筆者:冨士野喜子(ファイナンシャルプランナー)

(提供=auじぶん銀行)

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