LINEは8日、講談社と小学館、電子書籍取次のメディアドゥの3社と資本業務提携し、漫画を海外配信するための合弁会社「LINE Book Distribution」を設立することで基本合意したことを発表した。年内にスマホ向け漫画アプリ『LINE マンガ』のグローバル版を提供し、講談社や小学館など国内出版社の作品を英語と中国語で配信する予定だ。
LINE 海外展開の現状と注力事業
2014年10月9日に行われた「LINE CONFERENCE TOKYO 2014」内での発表によると、LINEが抱えるユーザー数は全世界で5億6000万人、月間アクティブユーザー数(MAU)は1億7000万人にのぼる。国内で5,400万人ものユーザーを抱えるLINEだが、実は全世界における日本ユーザーのシェアはわずか10%弱程度。世界的に利用者数の多い他のSNSのMAUを見てみると、フェイスブック(Facebook)で12億8,000万人(2014年3月時点)、ツイッター(Twitter)で2億4,100万人(公式サイトより)となっており、設立から約3年で、設立8年目になるツイッターの半分のMAUを獲得していることになる。特に東南アジアでの成長が著しく、逆に北米や欧州での利用者獲得に苦戦しているのが現状だ。
2014年10月現在、LINEの海外事業展開内容としては、日本同様メッセージアプリが先行している。他には、メッセージアプリ内のスタンプ販売や、付随するグッズの販売などが主な事業の柱だ。2014年はさらに、「LINE GAME」のゲームの一つ、「LINE:ディズニー ツムツム」が東南アジアを中心に好調なほか、「LINE マンガ」の海外展開を行うことも発表されており、日本での展開と同様に、ファミリー向けのアプリに注力していくことで、海外でも新たなプラットフォームとして成長させることが当面の目的と言えそうだ。
海外の競合サービス
現状、海外におけるLINEのシェアは決して高くない。その原因は海外の各地域に浸透している競合のメッセージアプリの存在にある。海外ではすでにさまざまなメッセージアプリが浸透しており、その隙間に入るのがやっと、というのがLINEの海外展開の現状だ。特にLINEの北米・欧州進出を阻んでいると言われるのが、2014年2月にフェイスブックに買収され話題となったWhatsApp(ワッツアップ)だ。
WhatsAppは2009年5月にメッセージアプリの提供を開始して以降、北米や欧州、インドネシアなどではショートメール(SMS)代わりに使われてきたという、まさに日本におけるLINEのような立ち位置にあるメッセージアプリだ。基本無料で使えるLINEと違い、WhatsAppを利用するには料金がかかる。初年度は無料だが、2年目以降続けて使用する場合は、年間0.99ドルの基本使用料が必要となる。その代わり広告は全く表示されないことや、一通ごとに課金されるSMSよりも割安感があることから、人気に火が付いたといわれている。月間アクティブユーザー数(MAU)は約6億人(2014年10月現在)と言われており、LINEが欧州や北米のユーザーを獲得するための大きな壁となることは間違いない。
他にも中国の『微信(ウィチャット)』や欧州・中東で幅広く利用されている『Viber(バイバー)』など、海外で地域ごとに親しまれているメッセージアプリの数々が、LINEの海外進出を阻む壁となっている。