カギを握るのは地域に合わせた柔軟なサービス

これらの競合をはねのけられるかどうかは、各地域にあわせた柔軟なサービスを提供できるかどうかにかかっている。もちろん通信品質の向上やセキュリティ面の強化については言わずもがな。この点においてLINEでは、地域ごとに安定したプラットフォームを提供するため、『LINE遠征隊』と呼ばれるサービス展開促進組織を組むなど、精力的な取り組みを行っている。しかし最終的に海外事業展開の明暗を分けるのは、いかにして各地域にLINEを浸透させられるかという点にある。その点がよく分かる事例として、スペインやブラジルにおけるLINE浸透のきっかけをご紹介したい。

WhatsApp人気の高い欧州に属しているにもかかわらず、1,000万人以上のLINEユーザーを抱えるスペイン。テレビCMも放映されており、App StoreやGoogle Playの無料総合ランキングでも1位を獲得するほど、LINE人気が強い国として知られている。スペインでここまでLINEが浸透した背景には、2012年に起こったスペイン経済危機が関係している。SMSよりも割安感があるとして利用されてきたWhatsAppだが、2年目以降は基本使用料が発生する。1円でも節約したいと考えるスペイン国民にとって、基本使用料が発生しないLINEを選ぶのは自然な流れだったと言える。

またブラジルでは、LINEの人気を下支えするスタンプが浸透のきっかけになったと言われている。ブラジルに進出した当初、LINEのメインキャラクターとしても知られるムーンの人気がいまいちだったため、絵柄をブラジル向けに作り変えたり、地元のスラング(隠語)を発するスタンプを追加。このように地域に合わせた対応を行ったところ、ユーザーが急増した要因となった。

LINEにかかわらず、メッセージアプリは各地域のインフラとしての役割を持っている傾向がある。海外でLINEを普及させることは、インフラの刷新と言っても過言ではないのかもしれない。インフラを刷新するためには、いかに地元に密着したサービスを提供するかにかかっている。LINEがいかに地域ごとに柔軟なサービスを提供できるか、この点が海外進出のカギを握りそうだ。

今後の狙いは

目先のLINEの海外展開の狙いは、スペインを足がかりに欧州や北米のユーザーを増やすことだろう。そのためには、まずプラットフォームとなるメッセージアプリをダウンロードさせ、浸透させることが必要だ。そんなダウンロードの起爆剤となるのが、前述した『LINEマンガ』海外展開だと考えられる。特に日本のアニメやマンガ文化が浸透する欧州において、高い付加価値となることが考えられている。

強大な競合が立ちはだかるLINEが今後その地位を狙うためには、品質の向上といったプラットフォームの整備以外に、メッセージアプリ以外の付加価値を高めることが求められるだろう。「より多様性のあるラインアップを提供していくことで、グローバルプラットフォームとして更なる飛躍を目指します」と海外進出への決意を改めて表明したLINEにとって、いかに地域ごとに柔軟なサービスを提供できるかが、海外進出のカギを握りそうだ。今後のLINEの成長のカギを握る海外展開。引き続き注目していきたい。

(ZUU online)

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