本記事は、西内孝文氏監修の『金融機関を味方につける!事業計画書の書き方・活かし方』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
Q 「ストーリー性」が重要とは、どんなことですか?
A 事業計画書においての「ストーリー性」は、基本的に自社と自社をめぐる経済環境の現状把握から、今後の事業展開の内容と業績予想までにつじつまが合わないところがなく、〝一連の流れ〟があることをいいます。
●金融機関が考えるストーリー性は返済に無理がないこと
事業計画書のストーリー性を意識するときに気をつけたいのは、事業計画の〝一連の流れ〟のなかに、「無理がないこと」。新規事業を始めるにしても、「なぜ、その事業を始めるのか」「その新規事業を始めるために、自社がこれまでどのようなノウハウを築いてきたのか」などについて社内外から見て納得性が高いことが求められます。
また、事業計画書を提出する相手である金融機関とその融資担当者が直接的に求めるストーリー性もあります。〝一連の流れ〟があることに関連してきますが、この場合は端的に「返済に無理がないこと」がストーリー性です。
たとえば、3年間の業績見込み・返済見込みを記していくなかで、新たな借入れが必要になることが突発的に想定されていたり、資金繰りが成り立たないような資金ショートを起こすことが予見されたり、社員を大幅に増員し設備投資を行うのに赤字になり得ることを見込んでいなかったりすることです。数字上、経営者の〝ご都合主義〟が反映されているような事業計画書になってしまっているケースもあります。
このようなストーリー性に欠ける事業計画書を、金融機関は「計画そのものに無理・不備がある」と一刀両断して突き返すわけではありません。しかし、このように「不備がある、整合性がない」と担当者が感じれば、融資の面談の場などで必ず質問してきます。
「新規事業でいきなり一度に5名採用することになっていますが、これまで採用は順調に進んできましたか?この人手不足のなか、いきなり5名というのも大変ですよ」
「この返済計画だと、返済のためだけに働くような状況が5年ほどは続きます。社員のみなさんは、この状況に耐えられるのでしょうか」
こうした素朴な問いかけから、
「なかなか減っていかない短期貸付金、社長の使い込みじゃないですよね。役員報酬は足りていますか」
「この利益で返済を見込むと、数字上は取りつくろうことができても、ホントに厳しい返済になりますよ」
など細かな勘定科目の確認にも及びます。こうした数字上の飛躍やつじつまが合わないことがある事業計画書が「ストーリー性に乏しい」と判断されてしまうのです。
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