国民健康保険未加入のわな

自営業やフリーターなどで国民健康保険に入る義務があったのに加入していなかった人には、実はとんでもない罠が潜んでいます。

というのも、「そろそろ加入しないとやばい」と思って加入の手続きを取ろうとしたら、とんでもない額の保険料を請求されることになるからです。

国民健康保険というのは、加入手続きをした日から保険料が発生するわけではありません。国民健康保険に加入する資格(義務)が生じた日から保険料が発生するのです。

たとえば18歳になって上京し、ある程度の収入も生じて親の健康保険からはずれた人は、はずれた時点で国民健康保険料の支払い義務が発生する決まりです。

もし、親の健康保険からはずれて1年後に国民健康保険に加入しようとした場合、1年のブランクの分の保険料もさかのぼって払わなければなりません。しかも、そのブランクの期間に支払った医療費は全額が自己負担です。戻ってはきません。

ブランクの期間が長ければ長いほど、さかのぼって払う保険料は多くなります。自治体によっては、さかのぼって支払う保険料の限度額が定められていますが、それでも2年〜3年分は支払わなければなりません。

だから国民健康保険は、ブランクの期間(未加入の期間)をつくれば大損することになるのです。筆者の知人のライターにも、国民健康保険に未加入のまま時間がたってしまい、新たに加入しようとすると多額の保険料を払わなくてはならないので、加入できないという人がいます。もちろん大病や大けがをしたら、大変なことになってしまいます。

国民健康保険の対象の人はぜひこのことを忘れないでおいてください。

国民健康保険料のさかのぼり支払いを逃れる方法

国民健康保険料は未加入の時期があれば、その分もさかのぼって払わなければならないということを説明しましたが、この「さかのぼり支払い」を免れる方法もあります。

まず市区町村によっては、「正当な理由があれば支払いを免除する」ということがあります。だから市区町村にかけあってみてください。

そして、もし市区町村が絶対に保険料の支払いを要求するようであれば、あえて加入をせずに別の市区町村に転居するという方法もあります。もちろんその間は無保険で医療費は全額自己負担になります。

国民健康保険は住んでいる市区町村で加入することになっており、市区町村ごとに違うシステムになっています。だから転居をして別の市区町村に転入した場合、転居先の市区町村では、転居した時点で国民健康保険料の支払い開始ということになります。転居先の市区町村が転居する前の国民健康保険料の徴収をすることはないのです。

だから、さかのぼりの国民健康保険料が多額になってどうしても国民健康保険に加入できないというような場合は、転居するという手もあります。転居するといっても、同じ市区町村内では意味がありません。市区町村をまたがないと、さかのぼりの国民健康保険料はチャラにはなりません。

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大村大次郎
大阪府出身。元国税調査官。国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務し、退職後に経理事務所などを経て、経営コンサルタント、フリーランスのライター・作家となる。執筆、ラジオ出演、連続ドラマの監修など幅広く活躍している。ベストセラーとなった『あらゆる領収書は経費で落とせる』『税務署員だけのヒミツの節税術』(共に中公新書ラクレ)のほかに『やってはいけない相続対策』『やってはいけない老後対策』(共に小学館新書)など多数のヒット作を上梓している。

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