本記事は、大村大次郎氏の著書『サラリーマンのための起業の教科書:損しないフリーランスの極意』(小学館)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=Uuganbayar/stock.adobe.com)

食事代を福利厚生費で落とす

福利厚生費の中で次に大きいのが食事代です。福利厚生費では、一定の条件を満たせば、役員や従業員の食事代を支出することができるのです。

そして役員や従業員にとっても、給料としての扱いにはなりません。だから、会社にも役員、従業員にも税金はかからないのです。これをうまく使えば、事実上、役員、従業員の生活費を無税で支給することになります。

しかもこの福利厚生費からの食事代は、会社の人数に制限があるものではありません。少人数の会社は不可というような規定はないのです。だから経営者1人でやっている会社、夫婦や家族でやっている会社でも適用できます。

たとえば、家族でやっている会社があったとします。

家族はみな、毎日、夜遅くまで働いています。経営者の妻が、近所のスーパーで材料を買ってきて、夜食をつくり、社員に支給します。この夜食代は、会社から経費で出すことができるのです。

福利厚生費から食事を支給するときの条件は、食事の状況によって変わってきます。

★昼食の場合

昼食は一定の条件を満たせば、1人月3,500円まで会社が福利厚生費として支出できます。

一定の条件とは、次の3つです。

  • 従業員が1食あたり半分以上払うこと
  • 月3,500円以内であること
  • 会社が用意するか、会社を通じて仕出しや出前を取ること

★夜食の場合

夜食の場合は、昼食よりもはるかに支出できる額は大きいです。夜食代を会社が負担した場合、全額を福利厚生費として支出できるのです。

ただし、この夜食もあくまで会社が支給したという形を取らなくてはなりません。夜食は、会社が自前でつくるか、会社が仕出しや出前を取ったものを社員に提供しなければならないのです。

また夜間勤務の場合、出前などは取らなくても、1回300円までの食事代の現金での支給は福利厚生費で支出できます。

この夜食について、何時からが夜食というような規定はありません。だから、常識の範囲内での「夜食」であれば大丈夫ということです。

いつも残業しているような会社では、「夕食代は福利厚生費で出す」ということができるのです。

レジャー費用も会社の経費で落ちる

食事だけでなく、レジャーの費用も福利厚生費として計上することができます。

福利厚生費というのは、従業員の福利厚生のための費用です。レジャー、レクリエーションなどの費用も当然、含まれるわけです。

しかも、レジャーというとかなり範囲が広くなります。

遊び全般は、レジャーといえます。遊び全般の費用が、福利厚生費で出せれば、こんなにいいことはありません。

そして、法的にレジャー費は、どこからどこまでならば福利厚生費として認められるのか、というと、実は明確な基準はないのです。

世間一般で福利厚生として認められる範囲ということになっています。福利厚生というのは、時代とともに変わるものです。たとえば、昔は会社の慰安旅行で海外旅行は認められていませんでした。しかし、現在は海外慰安旅行も福利厚生費として認められています。

時代の趨勢すうせいで、福利厚生費の範囲は広がっていくといえます。ただし、どこまで広がっているのか明確な基準がないだけに、会社としては使いづらい面もあります。

ですが、大企業、官庁で取り入れられているような福利厚生ならば、まず大丈夫です。スポーツ観戦チケット、コンサートチケットなどは、大企業や官庁などで、普通に福利厚生として支給されています。

なので、十分に福利厚生費の範疇と考えていいでしょう。

つまり、スポーツ観戦やコンサートのチケットの代金を会社のお金で出すことができるわけです。スポーツファンや音楽ファンの経営者にはたまらないでしょう。

ただ、あまりに何回も行くとまずいといえます。

福利厚生費は、世間一般の常識の範囲内ということなので、毎週コンサートに行ったりするのは、ちょっと常識からはずれます。年に数回というところが妥当でしょう。

また福利厚生費で気をつけなくてはならない点は、一部の社員のみが対象になっていてはダメ、ということです。逆にいえば社長1人しかいない会社では、社長1人で行ってもいいわけです。

ただしほかに社員がいる場合は、みなに同等の福利厚生をしなければなりません。

またこのチケット代は、会社が購入し、それを社員(役員)に配布するという形を取らなくてはなりません。社員(役員)が自分で購入し、会社はその代金を後から支給するという形であれば、社員(役員)に対する給料(報酬)という扱いになります。

だから、「会社が購入→社員に配布」という形だけは、崩してはならないのです。

社長1人の会社などでは、結局、自分で買って自分でもらう、ということになるでしょうが、形式は守らなくてはなりません。領収書なども、個人あてではなく、会社あてでもらっておいた方がいいでしょう。

スポーツジムも会社のお金で行く

前項では、スポーツ観戦、観劇などの費用を福利厚生費で落とせることを紹介しましたが、スポーツジムなどの会費も落とすことができます。

昨今では健康志向もあり、仕事が終わってからスポーツジムに行くというビジネスパーソンも多いようです。スポーツジムの会費は、最低でも月1万円くらいします。これを会社のお金で負担できるわけです。

スポーツジムの会費を福利厚生費で出している企業はいくらでもありますし、官庁でもスポーツジムの法人会員になっているケースもありますので、もうこれは堂々と使えるものです。

ただ月々の会費は、福利厚生費として損金処理することができますが、入会金は資産として計上しなければなりません(後で返却されないものは、加入期間で償却する)。

これは、経営者1人の会社でも当然適用できるものです。

ただし、役員など特定の人しか利用できない場合は、その特定の人の給料になり、所得税がかかります。経営者1人の会社では、必然的に経営者1人しか利用していないことになりますが、もし社員が入ってくれば、その社員も利用できることになっていれば、大丈夫です。

これまで福利厚生のことを説明してきましたが、「福利厚生として認められるものの基準がわからない」という人も多いでしょう。

なので、この項の最後に、福利厚生の基準についておさらいをしておきましょう。

福利厚生には、大まかにいって次の3つの基準があると思ってください。

★1つ目は、「社会通念上、福利厚生として認められるもの」です。

福利厚生費の範囲というのは、それほど厳密な線引きはされておらず、世間の価値観に委ねられています。だから、大企業などを参考にして、それとかけ離れていないものならば大丈夫ということです。

★2つ目は、社員の誰もが同様に享受できるものであることです。役員など、ごく一部の人しか使えないものではダメということです。

これは必ずしも、誰もが同じだけ使わなくてはならないということではありません。たとえば、スポーツジムなどの場合、誰もがスポーツジムに行ける状況さえ整っていればいい、ということです。

社員のある人は毎日行くけれど、ある人はまったく行っていなくても、誰もが行こうと思えば行けることになっていれば、大丈夫ということです。

★3つ目は、福利厚生はあくまで会社が社員に支給するという形を取らなくてはならない、ということです。

社員が自分で何かを購入したりサービスを受けたりして、会社はお金を出すだけ、という形ではダメなのです。

あくまで会社が購入したものや、契約したサービスを社員に支給するという形を取らなければならない、ということです。

この3つを守っていれば、福利厚生費として認められます。

=サラリーマンのための起業の教科書
大村大次郎
大阪府出身。元国税調査官。国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務し、退職後に経理事務所などを経て、経営コンサルタント、フリーランスのライター・作家となる。執筆、ラジオ出演、連続ドラマの監修など幅広く活躍している。ベストセラーとなった『あらゆる領収書は経費で落とせる』『税務署員だけのヒミツの節税術』(共に中公新書ラクレ)のほかに『やってはいけない相続対策』『やってはいけない老後対策』(共に小学館新書)など多数のヒット作を上梓している。

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