天才科学者ニュートンも、お金の前では大きなミスを犯した
ここであの天才科学者、アイザック・ニュートンの話をしましょう。
「万有引力の法則」「運動の三法則」「微分・積分法」を発見した近代科学の祖であり、宇宙の法則すら解き明かしたニュートンといえば、〝理性の象徴〟とも思える人物ですが、こんな実話が残っています※3。
※3:『あの天才がなぜ転落 伝説の12人に学ぶ「失敗の本質」』玉手義朗/日経BP、『Anthro Vision(アンソロ・ビジョン)人類学的思考で視るビジネスと世界』ジリアン・テット(著)、土方奈美(翻訳)/日本経済新聞出版
ときは、1720年のイギリス。当時のイギリスは空前の株式バブルの中にあり、政府が年始に売り出した南海会社の株が人気爆発、夏には額面が10倍にもなっていました。
その株を買っていたニュートンは、ここでいったん株を売ることにします。賢明な判断ですよね。
しかし、ニュートンが株を売ってからも、株価の上昇は止まりませんでした。
ニュートンの感情は大きく揺れ動き、理性を抑えきれず、株の買い直しに踏み切ってしまいます。
ところが、空前の株式バブルに対し、やがて政府の規制が入ります。実体のない会社(泡沫会社)が株だけを売り出すことが相次ぎ、市場が混乱したためです。
当然、瞬く間に株価は暴落。
しかし、一度買い直しに走ったニュートンは諦めきれず、株価急落の中でも買い増しをする「ナンピン買い」に走ってしまいます。
結果として、最高1,000ポンドまで急騰していた株価は、半年後には120ポンドと8分の1にまで暴落し、破産者が続出。ニュートンも大損失を被ります。
その損失はなんと、現在の価値にして360万ドル(約4億1,000万円)でした。
このときにニュートンは、こんな言葉を発しました。
「私は天体の動きは計算できるが、人々の狂った行動は計算できない」
イギリス中の多くの人々と同じく、ニュートンもまたお金を前にして理性的、合理的な判断ができなくなり、狂ったような行動をしてしまったのです。
「感情」は本能的なもので、コントロールが難しいものです。ですから、感情そのものがあふれ出てくるのは仕方ない面があるでしょう。
ただし、お金に影響された感情には理性まで崩壊させるほどの力があり、そうなるとニュートンですら4億円をスッてしまうのです。
お金に目がくらむのは、欲深い人だけではありません。
どんな賢明な人間も、ときにお金の前では合理的でいられなくなるのです。
こうした人間の心理について知ることから、お金と豊かさの学びは始まるのです。
もちろん、冷静に、合理的、理性的に関わることができる人もいます。
例えば、ビル・ゲイツ氏は、あれだけの富を築いていながら、飛行機に乗る際にファーストクラスを選ぶことはなかったそうです※4。
※4:https://note.com/samf/n/n11115a8569a2
古川享氏(日本マイクロソフト初代代表取締役社長)によると、会社のお金でも個人のお金でも、そんなムダなことにお金を使うのは理解できないと怒るほどだったというのですから、驚きますよね。
その理由について、「もし、自分の体がエコノミークラスにフィットしないほど大きければ、もう少し広いシートに座りたいと思うだろうが、それほど自分の体は大きいわけではない。なにより、ファーストクラスのシートに何倍ものお金を払ってみたところで、到着する時間はみな同じなのだから」とインタビューで答えています。
仕事でご一緒したことがある日本のトップファッションデザイナーの方も、同様にエコノミーで移動するとおっしゃっていました。
お金の使い方が合理的で、一本筋が通っていますよね。
でも、このような人は多くはありません。
中には、お金が入るようになったら、それを自慢するようになり、高級な時計やハンドバッグ、服装などにお金をかけて、自分がいかに「お金持ち」なのかをアピールする人もいますね。
そんなふうに背伸びをしていると、いくらお金が入ってきてもそれ以上に出ていってしまって、収入が少ないときの方が手元にお金が残っていた──、なんて話もあります。
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