事業のステージによって必要な運転資金の目安は異なる

資金回収までの期間の長短によって必要となる運転資金の金額は異なる。一般的に回収期間が短ければ手もと資金は、少なめでも良いだろう。一方、投下資金の回収までの期間が長ければ多くの手もと資金の確保が必要だ。これは、業種や取引相手との契約状況に依存する面もあるが、事業のステージによって必要な金額の目安は変動する。

先に紹介した運転資金の計算式は、一般的に「経常運転資金」の必要額を示す。ひとくちに運転資金といってもいくつかの種類に分けられるため、運転資金の種類や必要資金の目安を理解しておくことが大切だ。

4種の運転資金

運転資金は、大別すると「経常運転資金」「増加運転資金」「減少運転資金」「季節性運転資金」の4種がある。

・経常運転資金
単に「運転資金」というときは、経常運転資金を指すことが多い。冒頭で運転資金がどのようなものであるか説明した通り、事業を運営していくうえで常時必要となる資金が経常運転資金にあたる。

・増加運転資金
事業拡大期に追加でかかる運転資金を増加運転資金という。売上増加に伴い企業に入ってくるお金が多くなるが、売上増加が見込めるほど仕入れや生産量を増やし、資金回収までの不足をつなぐ必要資金も増える。加えて事業拡大を目指す際は、新たに市場を開拓したり広告宣伝費を増やしたりすることも増加するだろう。

また生産(仕入れ)および販売量の増大の裏には、人員や設備増加に伴うコスト増加も考えられる。そうなると先の計算式で算出した運転資金では、賄いきれなくなる可能性がある。十分な増加運転資金が用意できていなければ黒字倒産に陥る可能性があるため、入念なキャッシュフローのシミュレーションをするとともに手もと資金で支出の拡大に耐えられるかどうかの慎重な判断が必要だ。

・減少運転資金
増加運転資金とは逆に、事業縮小や事業不振のステージで必要になるのが減少運転資金だ。事業不振で売上が減少しているということは、好調期に行った仕入れや採用・雇用などのコストが余分にかかっていることになるため、つなぎ資金としての運転資金が余計に必要になるだろう。加えて店舗の閉鎖やリストラなどが必要になれば、それに対する費用も必要だ。

追加支出を伴う必要のない経費削減策や資金回収、売上増加などで経営の立て直しが求められるのは当然だが、その効果が得られるのはあとになる。事業不振の兆候を感じた際にすばやく資金確保に向けた対策をするべきだろう。

・季節性運転資金
季節性運転資金は、特定の時期や季節に支出が増加し、それに対応させるための運転資金だ。例えば晩冬~初春にかけてはランドセルや学習机、夏場にはエアコンや扇風機、防虫剤、冬場は暖房機器などの需要が高まるが、事業者側は高まる需要を見込んで先に製造や仕入れをすることになる。運転資金は、そもそも入出金のタイムラグを補うために必要なものだ。

しかし特定の時期や季節に支出が集中すれば、運転資金の必要額も普段とは異なってくる。何年も事業を繰り返すうちに事業サイクルごとの必要運転資金の目安をつかめるようになるものだが、創業間もない場合や市況が大きく変化する際などには資金対策を入念に行うべきだろう。