中小企業が注目したい3つのコスト

続いては、コスト削減に着手するとき、中小企業が注目したい3つの経費を取り上げて紹介する。

人件費

コストの中でも大きな割合を占める人件費は、経営者を悩ませるコストでもある。人件費は、材料費などと違って、売上の大小にかかわらず固定費として発生する。また、従業員の生活がかかっているため、業績が悪いからといって安易に給料を下げたり人員を減らしたりすることはできない。

しかし、人件費を見直すポイントは実はたくさんある。働きやすい環境を整えて従業員の定着率をあげれば、採用にかかるコストを削減可能だ。評価制度を導入し、成果を給与に反映させることで、一律に賃金を上げるより費用対効果を高められる。

業務を効率化して残業代を減らしたり、テレワークを導入して通勤手当を減らしたりするのも効果的だ。

消耗品費

事務用品や備品などの消耗品費は、一つひとつが少額のため、つい内容を把握しないまま放置しがちなコストである。しかし、塵も積もれば山となるため、注意が必要だ。

消耗品費を削減するポイントは主に2つある。

1つ目は、発注先を変えたり価格交渉をしたりして、コストを削減する方法だ。発注先との関係性に配慮しながら、慎重に進める必要があるものの、大幅なコスト削減を実現できる可能性がある。

2つ目は、事業所や部署ごとにどのくらいの消耗品費がかかっているかを見える化し、コスト削減に取り組むよう促す方法だ。数字が共有されると、コストがかさんでいる事業所や部署は、消耗品の管理方法や使い方を見直すようになる。時間はかかるものの、長い目で見ると効果の持続が期待できる方法だ。

水道光熱費

水道代や電気代、ガス代などの水道光熱費も、意識次第で削減できるコストだ。

たとえば、水道の蛇口に節水コマを取り付ける、LED照明に変える、エアコンの温度設定を変えるといった方法で、大きなコスト削減につながるかもしれない。

消耗品費と同じく、事業所や部署ごとの水道代や電気代を見える化し、改善を促す方法もある。

コスト削減のアイデア事例6選

次に、コスト削減のアイデア事例を紹介する。自分の会社で取り入れられるアイデアがないかチェックしてみてほしい。

1.ペーパーレス化

ペーパーレス化は、軌道に乗れば大きなコスト削減につながるアイデアだ。紙代やインク代などの消耗品費のほか、電気代、郵送代、複合機のリース料、膨大な書類を保管する棚の購入費用なども削減できる。

書類を印刷して配布したり、ファイリングして保管したり、必要な情報を探し出したりするには、膨大な時間がかかっていることも見過ごせない。ペーパーレス化で時間短縮できれば、残業代の削減にもつながり、必要な人員を必要な仕事に従事させることができる。

近年は、環境保護の観点からペーパーレス化が進められている。時流にうまく乗りつつコスト削減を目指すのが賢いやり方だ。

いきなりすべての書類をなくすことは難しくても、まずは社内のさまざまな申請やミーティング資料など社内のペーパーレス化に取り組み、効果を測定してみるといいだろう。

2.テレワークの導入

コロナ禍でテレワークを導入する会社は急増した。テレワークの導入にもコスト削減の効果がある。

在宅でできる業務は自宅で行い、必要なときだけ出社するスタイルにすれば、水道光熱費や通勤手当を削減できる。テレワークが定着したら、現在の事務所の広さは不要だ。より小さな物件へと移転し、家賃を下げるという選択肢もある。

また、テレワークを希望する働き手は増えていることから、人材不足の解消や採用コストの削減につながるのもメリットだ。

3.契約の見直し

契約の見直しと交渉によって、家賃や電気代を削減できる可能性がある。

家賃交渉ではまず、周辺相場を調べることが重要だ。周辺相場をもとに妥当な金額を割り出し、建物の老朽化や経営状態の悪化など、引き下げを願い出る理由に触れつつ交渉する。オーナーとの関係が悪化しないよう、慎重に進めることが大切だ。

電力会社を見直すことで、電気代の節約につながることがある。2016年4月からの電力自由化によって、契約する電力会社を自由に選べるようになった。最近では、法人向けのプランを用意している電力会社もある。相見積もりをとってみるのもいいだろう。

4.ITツールの導入

ITツールを導入して業務を効率化し、人件費の削減につなげる方法もある。

たとえば、質問に自動で回答してくれるチャットボットを導入することで、問い合わせへの電話対応業務を減らすのも1つの手法だ。ビジネスチャットやオンライン会議ツールを導入すれば、電話代や印刷代を削減することもできる。

5.マニュアルの整備

業務マニュアルの整備により、業務の効率化や時間短縮につながる。マニュアルがあれば、新入社員の教育にかかる時間や労力を削減でき、従業員を本来の仕事に専念させることができる。また、マニュアル化により商品やサービスの品質向上につながるのもメリットだ。

6.アウトソーシング

アウトソーシングとは、社内の業務を外部に委託することである。正社員が担わなくてもいい業務をアウトソーシングすることで、残業代を含む人件費の削減を目指せる。正社員を雇うのと違って、繁忙期だけ利用したり、業績が悪化したときは契約を終了したりして、臨機応変に活用できるのがメリットだ。