長引く新型コロナ禍で物流や生産活動が停滞した影響により、製造業では原材料高が常態化している。さらに、国内外の金融政策の違いから円安が進行し、原材料の調達コストがかさみ、ダブルパンチとなって各社の利益を圧迫する。
経済の先行きが見通しにくい中、自社で完結できる対策から手を付けたいところだ。そこで今回は、コスト削減の対策としての「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を紹介する。
目次
「コスト削減」=「売上アップ」!?
まずは、会計の基本的な事柄をおさらいしよう。売上高から原材料費などの「売上原価」を引いたものが粗利益(売上総利益)となり、ここから人件費や広告宣伝費などの「販売費および一般管理費(販管費)」を除いたものが、本業の儲けを示す営業利益だ。
原材料費は売上原価に当たり、海外から輸入した原材料を使う企業は、この売上原価が膨らんで経営状況が悪化している。
仮に、従来は100の売上高に対して50の売上原価、20の販管費がかかっていた企業で、原材料費が2割上昇すると、営業利益は30から20に低下することになる。率にして「33%減」と言えば、その大きさが伝わるだろう。
この時、原材料費の高騰が自社ではどうしようもない事象だと割り切ってしまうなら、従来レベルの営業利益を確保するために採用できる方法は2通だ。1つは売上高を増やすことである。上の例で言えば、売上高を10%増の110にできれば、他の条件が変わらなくても営業利益30を確保できる。
もう1つは販管費を下げることだ。販管費を20から10にできれば、営業利益は30を確保できる。つまり、利益というものさしで見る限り、コストを下げることは実質的に売上高を増やすことと同じ効果を持つということだ。
詳しくは後述するが、5Sを徹底すると職場環境がよくなり、間接的に売上高アップにつながる場合が少なくない。
ただ、売上高の増加というのは、やはり自社だけでどうにもならない、つまりコントロールできない面がある。そのため「とりあえず自社でできること」という文脈では、方法2のように、売上原価や販管費といったコストを下げる対策が現実的だ。