この記事は2022年12月7日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「日本ドライケミカル〔1909・スタンダード〕エンジニアリング能力が強みの総合防災企業 日本初の火災抑制剤放射器を開発、採用進む」を一部編集し、転載したものです。


日本ドライケミカルは、消火器から消防設備、メンテナンス、消防自動車などの分野を手掛ける総合防災企業だ。

2000年に上場廃止となったが、2005年に代表取締役に就任した遠山榮一氏のリーダーシップの下、2011年に再上場した。

近年は国内及び海外企業との積極的なアライアンスを展開。従来の消防防災の概念を覆す画期的な製品開発を目指した研究開発にも注力している。

▼遠山 榮一社長

日本ドライケミカル〔1909・スタンダード〕エンジニアリング能力が強みの総合防災企業 日本初の火災抑制剤放射器を開発、採用進む
(画像=株主手帳)

主力は防災設備事業
売上比率約6割占める

日本ドライケミカルの2022年3月期の連結業績は、売上高447億9,300万円(前期比4.0%増)、営業利益28億2,700万円(同16.7%減)。

事業の主力は売上比率約6割を占める防災設備事業だ。自動火災報知設備(自火報)やスプリンクラー設備など、消防法で設置を定められる消防設備の設計・施工を行う事業であり、建築防災、プラント防災、船舶防災、トンネル防災などを展開している。

2つめのメンテナンス事業は売上比率18.6%を占める。消防法は年に2回の法定点検を義務付けており、同社は有資格者による保守点検及びそこから派生する修繕、改修工事などを行っている。

3つめの商品事業は売上比率21%。各種消火器類の製造販売をはじめ、あらゆる防災用品の仕入れ販売を行っている。

4つめの車輌事業は各種消防自動車の設計・製造を行う事業であり、売上比率3.1%を占めている(2023年3月期1Qより組織再編に伴い車輌事業は防災設備事業に含む)。

防災のあらゆるニーズに
ワンストップで対応

消防防災業界の市場は裾野が広く、同社は自動火災報知設備、消火設備、消火器、消防車両の領域すべてにメーカー機能を持ち、防災に関わるあらゆるニーズにワンストップで対応している。

また、高度な施工管理やエンジニアリング能力を強みとする。特に首都圏を中心とした再開発による高層オフィスビルや大型複合施設に多くの施工実績があり、ゼネコン・サブコンからの高い信頼を築いて継続受注している。

同社は1955年、粉末消火器の製造、販売を主業として創業。1995年に東証1部に上場したが、2000年に米国の複合企業体であるタイコインターナショナルの株式公開買い付け(TOB)により100%子会社となり、上場廃止となった。

日本の防災市場進出を目指すタイコ社の下で、日本人経営者として抜擢されたのが遠山氏だ。2004年、外資系企業からヘッドハンティングされて同社に入社し、翌2005年に代表取締役に就任。タイコ社が日本市場から撤退した後も社長として同社を率い、2011年に東証2部再上場、2013年東証1部上場を果たした。

「他業界から来た私から見ると、この業界は消防法という制度に基づいた消防機器やシステムが標準となっているが、消防法の枠組みの外に視野を広げることで、新しい市場を開拓でき、さらに成長する可能性を秘めています。ユーザーにより質の高い効果的な製品・システムを提供する上で、何をするべきかを常に考えて取り組んでいます」(遠山榮一社長)

超高感度煙検知システム
「VESDA」販売

遠山社長によると、日本の消防防災は消防法の規定により一定の質が保たれているが、世界標準とは異なる面があるという。

「例えば火災報知機が火災を知らせた時には相当な煙や火が回っている可能性があります。人命を火災から守るためには、微量の煙をより早く検知するといった機器が必要です。火災を未然に防ぐ『予防防災』という考え方が標準となれば、日本の社会はより安心・安全な社会に変わると考えています」(同氏)

同社はオーストラリアの防災メーカー、xtralis社と日本での総代理店契約を結び、超高感度煙検知システム「VESDA」を販売している。同製品は火災が発生する前の微量な煙を早期に検知。初期対応により被害を最小限に抑えることができる。

世界的な大手企業が同製品の導入を進めており、新設するデータセンターや半導体工場での採用が決まっている。

独自製品の開発にも注力。「クイックスプラッシャー」は日本初の火災抑制剤放射器だ。流出・漏洩したガソリンに火災抑制剤を放射すると、薬剤が油面を覆うことで蒸発を抑制し、引火による火災を防ぐことができる。

「京都のアニメーション制作会社での痛ましい事件を受け、消防防災メーカーとして何かできないかという強い思いから開発しました。不特定多数の多くの人が集う場所ではガソリンを用いたテロの危険性もあります。国内では官公庁や医療機関、金融機関などに、また海外では空港などに採用されています」(同氏)

今後も新しい技術や優れた海外製品を積極的に取り入れ、より消防防災の実態に即したものに進化させたいと遠山社長は話す。

「当社は優れたハードとエンジニアリング能力を持っています。従来型の消防防災に留まることなく、顧客のニーズに応えるソリューションを提供していきたいと考えています」(同氏)

▼火災抑制剤放射器「クイックスプラッシャー」(右3つ)と高性能型消火器(左)

日本ドライケミカル〔1909・スタンダード〕エンジニアリング能力が強みの総合防災企業 日本初の火災抑制剤放射器を開発、採用進む
(画像=株主手帳)

▼超高感度煙検知システム VESDA

日本ドライケミカル〔1909・スタンダード〕エンジニアリング能力が強みの総合防災企業 日本初の火災抑制剤放射器を開発、採用進む
(画像=株主手帳)

2022年3月期 連結業績

売上高447億9,300万円前期比 4.0%増
営業利益28億2,700万円同 16.7%減
経常利益27億7,700万円同 12.6%減
当期純利益18億9,000万円同 18.2%減

2023年3月期 連結業績予想

売上高455億円前期比 1.6%増
営業利益29億円同 2.5%増
経常利益29億円同 4.4%増
当期純利益19億円同 0.5%増

*株主手帳12月号発売日時点

遠山 榮一社長
Profile◉遠山 榮一(とおやま・えいいち)社長
1950年1月25日生まれ、埼玉県出身。1972年、慶応義塾大学経済学部卒業後三菱商事に入社。2000年日本AT&Tに入社。2004年日本ドライケミカルに入社、経理・財務本部長に就任。2005年同社代表取締役に就任。2008年同社代表取締役社長に就任(現任)。