この記事は2023年1月7日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「デジタル・インフォメーション・テクノロジー【3916・プライム】12期連続増収増益、上場来連続増配中 直接受注率80%が高収益支える」を一部編集し、転載したものです。


デジタル・インフォメーション・テクノロジー(DIT)は、12期連続の増収増益を更新。年間配当は2015年上場以来増配を続けている。

2022年6月期は売上高161億5,600万円(前期比11.9%増)、営業利益20億400万円(同16.4%増)と2桁増収増益を達成。今期も2桁増収増益・増配を見通す。

DX化の潮流が続き安定成長が見込まれる中、主力のシステム開発とセキュリティ・業務自動化(RPA)関連の自社商品群強化でさらなる利益拡大を狙う。

▼市川 聡社長

デジタル・インフォメーション・テクノロジー【3916・プライム】12期連続増収増益、上場来連続増配中 直接受注率80%が高収益支える
(画像=株主手帳)

主力売上8割が大手15社から
直請け比率の高さに強み

デジタル・インフォメーション・テクノロジーは、独立系のシステムインテグレーター(SIer)だ。企業向けシステム開発・運用・保守メンテナンスを行っている。事業セグメントの売上構成比は、ソフトウエア開発事業が90%。自社商品販売事業が5%、カシオの中小企業向け販売支援システム“楽一”の販売を主とするシステム販売事業が5%となっている。

主力のソフトウエア開発事業は、売上高の6割を占めるビジネスソリューション事業と、3割を占めるエンベデッドソリューション事業に分けられる。前者は一般企業の業務システム開発・運用を行う。後者は主に車載用の組込ソフトウエアの開発・検証を担う。

同社の顧客は約2,800社。中でもメガバンク、有名自動車メーカー、航空会社など、IT予算が潤沢な企業グループを長年のクライアントに持つ。ソフトウエア開発売上高の実に約7割が、この企業グループで占められている。

加えて、同社はプライム案件と呼ばれる直接受注が約8割。一般的にシステム開発会社は2次請け、3次請けの案件も多く、優良企業でも営業利益率は平均7%と言われる。

同社の営業利益率は前々期から10%を超え、2022年6月期は12.4%だ。ビッグクライアントをはじめとするエンドユーザーからの直接受注が、高い営業利益率を実現している。

開発から保守まで一貫で実施
横展開サイクルが基盤の要

同社が大手企業との直接取引を続けられるのはなぜか。市川聡社長によると、顧客となる大手企業のシステム関連のOBを採用して繋がり、業務を理解した上で最適なシステム提案・保守を続けてきたことにあるという。ビジネスソリューションの売上は6割が開発、4割が運用サポートで構成されている。

「お客様を深く理解した上で開発・運用・メンテナンスまで一貫で行うことが当社の強みです。システム運用の中で必ず出てくる問題も、当社が再開発してシステムを導入しサポートし続けます。また大企業は他部署でもシステムが必要なので、信頼を得れば1社の中で複数案件が獲得できます」(市川聡社長)

まさに1つの顧客の中で、システム開発→運用→改善→再開発・他部署への拡大といったサイクルができているのだ。1社の中で売上を広げ、かつ大手企業での実績が他社からの引き合いを生む。これが同社の安定基盤の要となっている。

そしてこの体制を支えているのは、スキルの高いプロジェクトマネージャーをはじめとする人材だ。長年、顧客の業務に従事し、業務内容を熟知したプロジェクトマネージャーが1社2~3案件をマネジメントし、若手エンジニアを育てる。

「当社の人材はほとんどが新卒採用で、近年採用数は年間50名から80名に増やしております。経験豊富なエンジニアと組んで若手社員にトップレベルの体験を積ませ、技術や知識を継承します」(同氏)

安定基盤に上乗せの成長事業
自社商品群マーケティング強化

同社は2022年、長期ビジョンとして2030年6月期に既存事業(オーガニックグロース)の成長を売上高300億円以上、営業利益40億円以上と発表。

そして、新規事業とM&Aなどで売上高500億円以上、営業利益50億円とする目標を掲げた。DX化の潮流で、情報システムの需要は続き、既存事業の伸びは期待できる。では、その成長にプラスオンする新規事業、つまりは自社商品の伸びはどうだろうか。

同社の自社商品は年間ライセンス制をとり、ストック収益を生む。主力はセグメント売上高の5割を占める“xoBlos”(ゾブロス)、3割弱を占める“WebARGUS”(ウェブアルゴス)だ。

ゾブロスは社内エクセル統合ソフトである。RPAに近い半自動化ソフトで、予算などの自動管理ができる。年間ライセンスは60万円から。導入実績は550社で、初心者でも操作できるのが強みだ。

ウェブアルゴスはWebサイトが攻撃され改ざんされた場合、わずか0.1秒未満で復旧し実質的な実害をゼロにするセキュリティソフト。現在契約数は1,000サーバーで、年間ライセンス1サーバー48万円からとなる。

今後も研究開発費用として売上高の1%程度の投資をしながら、ゾブロスとウェブアルゴスを中心に拡販していくという。

「社運を賭けたマーケティングを展開していきたい所存です。テレビCMなども含め、この3年間は露出機会の増加を狙い、次の3年でもっと大きな投資も視野に入れています」(同氏)

株主還元に関しては、今期年間配当36円を予定。前期の記念配8円は剥落するものの、普通配ベースでは上場以来続く連続増配の更新を見込む。足元の2022年6月期を初年度とする中計から、配当性向は30%から35%までレンジを引き上げ、配当を増やしていく方向性を示している。


2022年6月期 連結業績

売上高161億5,600万円前期比 11.9%増
営業利益20億400万円同 16.4%増
経常利益20億400万円同 15.8%増
当期純利益14億3,900万円同 20.3%増

2023年6月期 連結業績予想

売上高180億円前期比 11.4%増
営業利益22億5,000万円同 12.2%増
経常利益22億5,000万円同 12.3%増
当期純利益15億6,100万円同 8.5%増

*株主手帳1月号発売日時点

市川 聡社長
Profile◉市川 聡(いちかわ・さとし)社長
1972年4月生まれ。2004年、東洋アイティーホールディングス(現デジタル・インフォメーション・テクノロジー)入社。2007年、同社執行役員経営企画本部経営企画部長就任。2014年、常務取締役執行役員事業本部長兼事業本部エンベデッドソリューションカンパニー社長就任などを経て、2018年、同社代表取締役社長就任(現任)。