この記事は2022年11月24日に「月刊暗号資産」で公開された「日銀、来春にもメガバンクらとデジタル円の実証実験を開始へ」を一部編集し、転載したものです。


日銀
(画像=k_river/stock.adobe.com)

日本銀行(日銀)が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の「デジタル円」発行に向け、3メガバンクや地銀と実証実験を行う調整に入ったことが明らかになった。23日、日本経済新聞が報じた。2023年春から2年間ほど実験を進めていき、2026年にも発行の可否を判断する考えだという。

日銀はこれまで、「CBDCを発行する計画はないものの、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の環境変化に対応できるよう、技術的な実証実験など準備しておく必要がある」とし、2021年4月から今年3月まで「概念実証フェーズ1」を実施した。フェーズ1ではシステムの基盤となる「CBDC台帳」を中心に実験環境を構築し、発行や払出などの基本的な取引を処理することができるかなどを検証した。

その後、今年4月からは「概念実証フェーズ2」を開始した。フェーズ2では、CBDCに様々な周辺機能を付加し、その実現可能性や課題を検証した。

今回明らかになった実証実験は、フェーズ2に続くものとなる。日銀は「概念実証を経て、さらに必要と判断されれば民間事業者や消費者が実地に参加する形での実証実験を行う」としていた。

近年、日本では民間企業による電子マネーが普及し始めているが、支払いを受けた店舗等は実際に日本円が入金されるまでに一定の期間を要する。しかし、CBDCであれば店舗側も即時に日本円を受け取れるようになるため、キャッシュレス決済の導入を促進させることも可能となる。また、CBDCは利用可能範囲が広範であることから、これまで特定のキャッシュレス決済にしか対応できなかった店舗等もキャッシュレス決済を導入しやすくなる点も特徴の1つだろう。

CBDCの世界情勢を見ると、すでにバハマやカンボジアなどでは正式に発行され、運用が始まっている。さらに、中国は先進国の中で一歩先行し、上海や北京など一部地域でデジタル人民元の実証実験を開始している。これに追随すべく、米国やインドなどもCBDCに関する動きを加速させており、競争は激化している状況だ。

今年4月には大手会計事務所のPwC(PricewaterhouseCoopers)が、世界各国の中央銀行の8割以上がCBDCの導入に関心を持っているとのレポートを発表。また、国際決済銀行(BIS)も今年5月に世界の中央銀行の約9割がCBDCの研究に着手しているとのレポートを公表している。

なお、デジタル円の実証実験では参加する銀行と連携し、銀行口座でCBDCのやり取りが可能かを検証する。これに加え、停電時など、インターネットが利用できない環境下でも機能するかどうかを試す。

フィンテック企業やITベンダーの参加も募り、本人確認などセキュリティ機能の開発も進めるとしており、実験にあたっては民間企業から日銀への出向者も受け入れるという。(提供:月刊暗号資産